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道路4公団10兆円債務超過、今井委員長辞任の陰で大問題放置
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/biz/221891
日本道路公団などの民営化議論は、最終報告をまとめる当日に道路関係四公団民営化推進委員会の今井敬氏が委員長辞任を表明、途中退席という異例の事態で第一幕が下りた。この騒動に隠れて、重大な問題が十分議論されないまま放置されてしまった。道路4公団を統合する新組織が、10兆円近い債務超過に陥る可能性が高いという問題だ。
辞任騒動が起きた委員会当日、会議の冒頭で委員の1人、マッキンゼー・アンド・カンパニーの川本裕子氏が「追加して提出したい資料がある」と発言した。この資料が報道関係者に配布される前に、今井委員長の辞任表明で会議が混乱したため日の目を見なかった。
民間企業なら破綻寸前の状況
本誌が入手した資料は、4公団が民営化推進委員会に提出した貸借対照表のデータを整理したもの。データは公団などの特殊法人に適用される会計処理の行政コスト計算方式の数値と、民間企業基準に近い形で試算した数値の2種類が記載されている。
4公団の総資産は、行政コスト計算方式の48.4兆円に対し、民間企業方式は32.1兆円(上図)。両方式とも負債総額は41兆円になるため、総資産から総負債を差し引いた純資産は行政コスト計算方式では7.4兆円だが、民間企業方式だとマイナス8.9兆円、すなわち債務超過となる。民間企業なら破綻寸前の状況だ。
委員会では、収支状況が4公団の中でも極端に悪い本州四国連絡橋公団に対して税金投入による財務基盤の強化を議論した。しかし、本四公団へ税金を投入しても、4公団の財務が改善するとは限らない。民間企業方式の試算でも、本来費用化すべきものを資産計上したものもあり、厳密に会計原則を適用すれば4公団の債務超過額が増える公算も大きい。
4公団の実質的な財産状況を考えると、今回の最終報告は重大問題の解決策を十分議論しないまま見切り発車的にまとめたと言わざるを得ない。債務超過問題を放置すれば、2015年以降に予想される民営化の総仕上げである株式上場もままならず、現在の公団組織から抜本的に脱却できない恐れもある。
最終報告では、4公団の民営化は2段階に分けて実施することになっている。第1段階は、2005年4月1日までに、4公団を独立行政法人の保有・債務返済機構(仮称、以下「機構」)と、機構が出資する特殊会社の2つの組織に再編する。機構は4公団の資産と債務を継承し、特殊会社は機構の保有する道路資産を利用して料金徴収やパーキングエリアの維持運営などに当たる。特殊会社は全国を5つの地域に分け、各地域に設立する。
第2段階は、5つの特殊会社が設立から10年後の2015年をメドに、機構から管轄地域の資産と負債を引き継ぎ、機構は解散する。
機構は独立行政法人のため債務超過でも民間企業のように問題にはなりにくく、機構であるうちに債務超過を解消するのは可能と押し切られる事態も想定される。
2次損失問題化は必至
しかし、公団事情に詳しい関係者は、「今の収支を考えると、機構が特殊会社から受け取るリース料収入だけで債務弁済しながら債務超過を解消するのは不可能」と断言する。今は難題から目をそらすことができても、機構から民間会社に資産と債務を移す2015年には、確実に問題になるという。かつての住宅金融専門会社同様、道路も2次損失の議論が避けられそうにない。
最終報告をまとめるうえで、新組織が現在の国の計画通り約2300km分の新規建設を実施するのか、不採算が予想される道路建設は凍結するのかという建設の量が問題になった。
委員会の議論の場では、現在の債務総額を増やさずに済むから建設は可能という意見も出たが、これは債務超過という現実を無視している。現時点で債務超過ならば、新規建設の是非どころか、開通済みの不採算路線を廃止するぐらいのことを検討するのが先決ではないか。(真弓 重孝)