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来年3月に任期切れを控える日銀の速水優総裁の後任選びで、日銀が拒否している「インフレ目標策の採用」が条件になる可能性が浮上している。小泉純一郎首相は16日、後任総裁について「デフレ退治に積極的な人」と改めて強調。来年1月に内閣府が策定する「構造改革と経済改革の中期展望(改革と展望)」の原案にも、日銀の行動を迫る文言が盛り込まれた。財政政策が手詰まりの中、政府・与党内に金融政策をデフレ克服の軸とする考え方が強まっており、総裁人事への影響に注目が集まっている。
13日の経済財政諮問会議では、内閣府の浜田宏一経済財政研究所長がインフレ目標策導入を主張した。具体的には(1)例えば2年後に年率2〜3%の物価上昇率を目指すなどインフレ目標の設定(2)日銀による上場投資信託(ETF)や不動産投信(日本版REIT)の購入――などを提案した。
竹中平蔵金融・経済財政担当相がこの日の諮問会議に提出した「改革と展望」の原案には、「政府・日銀が一体となって、できる限りプラスの物価上昇率の実現を目指す」との表現が盛り込まれた。竹中氏は否定するものの、日銀にインフレ目標策の採用を迫ったものと受け止める向きが多く、実際、速水総裁はその場で、「デフレ克服という表現でいいのでは」と異論を唱えた。
この時期に日銀への要求が一気に高まったのは、「後任総裁は金融政策を転換できる人が必要」(経済官庁幹部)との認識が政府に広がっていることが背景にある。日銀の対応に不満を抱く自民党も、こうした動きに同調するとの政治的な計算もある。
「改革と展望」の原案を事前に知った日銀は、「金融政策の死守線を突破される」と危機感を募らせ、幹部が諮問会議事務局の内閣府に駆け込んで表現を再考するよう求める場面もあった。
次期日銀総裁の候補として、岸暁・東京三菱銀行相談役、今井敬・新日鉄会長、福井俊彦・富士通総研理事長(元日銀副総裁)、山口泰・日銀副総裁らの名前が挙がっている。しかし、小泉首相が「デフレ克服」をキーワードに掲げたことで、市場に一部では「インフレ目標論者の中原伸之・前日銀審議委員が急浮上した」との見方も出ている。ただ一方では、「小泉首相は同時に、日銀の努力も認めており、インフレ目標など極端な政策を採用させる気はないのでは」との声もある。
【白戸秀和】
[毎日新聞12月16日] ( 2002-12-16-20:55 )