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11月21日夕、政府は2002年度補正予算案の大枠を決定した。小泉首相は、小泉改革最大の柱である「国債発行枠30兆円」の公約を放棄し、5兆円の追加を決めた。
政治にとって最も大切なことは責任を果たすことである。責任が果たせなくなったときは、自ら責任を取らなければならない。国債の30兆円枠突破は小泉内閣総辞職に値するほどの重大な公約違反である。百歩譲っても、塩川財務相の責任は免れないと思う。
ところが小泉首相らの政府首脳は自己の責任を逃れるために驚くべき詭弁を弄し始めた。小泉首相は21日夕、「どうして政策転換と言うのかわからない。改革路線まっしぐらです。どこを見て政策転換と言うのか、あきれている」と語り、塩川財務相は「30兆円枠の精神は堅持する」と述べた。「烏を鷺と言う」に等しい詭弁を繰り返す小泉首相と塩川財務相に、良識ある国民はあきれている。
野党は補正予算の中身や規模を議論する前に、公約に違反にした小泉首相の政治責任を追及するため決起しなければならない。
今年度補正をめぐる対立は、政府と与党幹部のレベルでは一応の決着を見た。小泉首相は難関を乗り切ったかのように見える。だが、これはほんの一時の妥協にすぎない。与党側に大きな不満が残った。連立与党の保守党はこの決着に不満を隠そうとしない。自民党内からも今回の決着に対するきびしい批判が続出している。小泉首相への反撃は補正決着の瞬間から始まっている。
与党幹部の一人は「今までは解散になるのを恐れ、小泉首相を追い詰めないように配慮せざるを得なかったし、解散の前に補正予算をぜひとも実現したかった。しかしもう遠慮しない。解散を恐れず戦う。次は平成15年度予算だ」と語っている。小泉首相にとって今から本当の「茨の道」が始まる。
経済界もきびしい。「虻蜂取らず」――これが補正予算に対するほぼ一致した評価だ。財政規律を貫くことはできず、そうかといって景気対策としてほとんど無意味――という捉え方である。ある企業家は「二階から目薬程度の景気対策」と語っている。
地方の不満ははるかに激しい。「小泉構造改革は地方つぶしだ」との声は全国に広がっている。今回の補正決定に対しては「不満どころか怒っている」との声が高い。
補正への不満は12月の平成15年度予算編成にぶつけられる。明確な哲学を持たない小泉首相は「風にそよぐ葦」のように、ブッシュ政権の顔色を窺いつつ、世論と財務省の意向の間で揺れ動き、名のみを求めつづける。しかし、その道は狭まるばかりである。
今臨時国会の会期は12月13日まで3週間を残しているが、事実上閉幕した。対決回避を狙う自民党執行部が重要法案をすべて次の通常国会に先送りしたためである。内紛に苦しむ野党第一党の民主党には戦闘意欲がない。政局の舞台は次年度予算編成に移った。
年末に向けて、小泉政権への与党内からの批判は止まらない。それどころか激化する方向にある。平成15年度予算編成において地方を巻き込んだ戦いが始まる。小泉構造改革に危機が迫っている。
小泉首相にとってとくに深刻なのは、小泉改革に対する根本的な疑念が国民の間に広がりつつあることだ。「小泉改革はブッシュ政権を通じて日本経済を支配下に置こうとする米金融資本の狙いに沿ったもの」との疑いである。この10月、放言のために苦境に立たされた竹中金融担当相を米政府高官が援護したことをきっかけにして、この疑惑が広がり始めた。「小泉首相、竹中金融担当相は日本の国益より米国の国益に忠実」との見方である。
小泉首相が米国一辺倒主義を改め、日本の国益第一主義に立つことを示さなければ、国民の小泉離れは進む。2003年前半、小泉政権は解散か内閣総辞職かの選択を迫られることになろう。
【以上は11月23日付け『四国新聞』に「森田実の永田町観測」として掲載された小論です】