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企業再編の推進などを目的に今年度から導入された法人税の「連結納税制度」について、3分の1の企業が「現在の『連結付加税』がなくなっても採用しない」とするなど、制度を使うことになお消極的なことが、読売新聞が主要100社を対象に行ったアンケートでわかった。
採用企業に対し法人税率を上乗せする連結付加税のほかにも、子会社が優遇税制を使えなくなる点や、親会社の納税の手間が増えることが敬遠されているためで、今後、産業界から一層の見直しを求める声が高まりそうだ。
連結納税は、親会社と子会社の利益、損失を合算して課税する制度だ。アンケート結果によると、今年度から採用した企業は12社にとどまっている。読売新聞が今年3月に主要50社に行った調査では、連結付加税の存在が、企業が連結納税採用を見送る最大の理由だったが、今回の調査でも「付加税があるため連結納税でかえって税額が増える」(東京電力)などの意見が根強かった。
ただ、「付加税がなくなれば来年度以降、連結納税を採用する」とする企業はJTBなど4社にとどまり、反対に「付加税がなくなっても連結納税を採用しない」企業が33社もあった。「その他の条件も総合的に検討して判断する」とする42社とあわせると、4社に3社が、付加税の有無にかかわらず連結納税に慎重ということになる。
採用に消極的な理由としては「採用すると、子会社の繰越欠損金が認められなくなる」(日産自動車など)「子会社に中小企業向けの軽減税率が適用されなくなる」(ヤマハ発動機)など、税負担の軽減につながらないことへの不満が多い。また「事務手続きが煩雑になる」(シャープ)など、企業会計上の手間や、コンピューターシステムの改良にかかる経費増を懸念する声も多かった。
一方、今年度から制度を導入した12社は、電機、建設など、親会社や子会社に赤字会社を多く抱える業種に集中している。「初期損失の発生が見込まれる新規事業が子会社で展開しやすくなる」(伊藤忠商事)といった企業の再編・活性化に直結した採用理由をあげる企業は少数派で、連結納税が本来の狙いを果たしているとは言えないのが実情だ。
連結納税をめぐっては、政府・与党内で、「2年間」となっている連結付加税の適用期間を短縮、今年度限りで付加税を廃止することが検討されているが、自民党などには異論もある。制度導入の実を上げるには、付加税だけでなく、制度の使い勝手を高めるための見直しを求められそうだ。
【連結納税制度】親会社と100%子会社を一つの企業グループとして、黒字会社の利益と赤字会社の損失を合算・相殺した後の利益に法人税を課税する制度。多くの赤字企業を抱える企業グループでは、個別に黒字会社が納税するより全体の税負担が軽くなるため、産業界の強い要望で今年度から導入された。しかし、税収不足を補うため、連結納税を使う企業には来年度までの2年間、法人税率を2%上乗せする連結付加税が課せられることになった。
【繰越欠損金】企業が年度をまたいで持ち越す損失のこと。赤字の企業はその年度の法人税額がゼロになるだけでなく、赤字を翌年度以降、原則5年間まで持ち越し、新たな年度の利益と相殺して課税対象額を小さくできる。しかし、連結納税対象の子会社には繰越欠損金が認められず、子会社が繰越欠損金を抱えた企業グループは連結納税を導入しにくい。一方、親会社は連結納税でも繰越欠損金が認められ、昨年度に巨額の赤字決算となった電機業界などで連結納税の導入が進む一因となった。
(11月24日22:10)