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NTTは18日に発表した02年9月のグループ連結中間決算で、電電公社時代までさかのぼっても初めてという、減収決算を明らかにした。長期的な固定電話の収入減が加速しつつあるうえ、高収益を維持してきたNTTドコモも伸び悩み始めている。その一方、固定電話に代わる主力事業として期待されるブロードバンド事業もまだ収益の柱に育っていない。減収は一時的か構造的か、探ってみた。(仲村 隆)
■■グループ全体の売上高1.7%減
NTTグループの売上高は前年同期比1.7%減の5兆3675億円。この結果について、NTTの和田紀夫社長は「一過性のものであれば、そうショックを受けないが、これは傾向的なものと受け止めている」と厳しい表情で語った。
今回の中間決算で、決算公開したグループ主要会社の中で増収となったのはドコモとNTTデータの2社のみ。各社とも経常黒字は確保したものの、NTT東日本と西日本はそれぞれ約1000億円、NTTコミュニケーションズは約600億円、それぞれ売り上げを減らした。増収とはいえ、ドコモの売上高も1.9%増と伸び悩み、グループ全体の減収をカバーするには至らなかった。
NTT東西とNTTコムの減収原因は,収益の柱である音声収入と専用収入が大幅に減ったこと。音声収入はNTT東が905億円,NTT西が857億円,NTTコムが531億円ずつ減少した。中でも、9月末の固定電話の契約数が6134万件と1年前に比べて約121万件減少した。これまで、固定電話の加入減を補ってきたISDNも、同62万件減の1073万件と失速が明確になった。
■■ブロードバンド本命のFTTHは目標引き下げ
これに対して、各社ともにIP系サービスのデータ伝送収入が増加したが、増収額はわずか。NTT東が117億円,NTT西が83億円,NTTコムが44億円と、いずれも伸びは低く、音声収入の落ち込みをカバーできていない。ブロードバンド用として急激な伸びを示すADSL市場の苦戦も加わって、IP系データ伝送収入の拡大にも陰が差している。
マルチメディア総合研究所によると、9月末のADSL回線の総加入件数は422万3200件。この中で、トップシェアは価格競争をしかけたBBテクノロジーの23.9%。NTT東22.2%、 NTT西18.7%と後塵を拝している。
さらに、ブロードバンドの本命と言われるFTTH事業が、より安価なADSLに需要を食われ、伸び悩んでいる。中間決算発表時に、NTT東西とも今年度の加入者目標を下方修正せざるを得なくり、NTT東は35万件から20万件に、NTT西も25万件から17万件に目標変更した。
■■ドコモはARPU減少とFOMA不振が不安材料
一方、ドコモは出遅れていたカメラ付き携帯電話でばん回。「iショット」対応端末は250万台を突破するなど好調で、全体の売り上げに貢献している。しかし、そのドコモも、いくつか問題を抱えている。
その1つが、携帯電話のARPU(利用者1人当たりの月間利用料)の減少。電子メールなどiモードのARPUでは同12.2%増の1670円だったが、音声通話のARPUは同9.7%減の6490円。音声とiモードを合計した総合ARPUでは同6%減の8160円となり、音声ARPUの減少が響いている。
さらに、第3世代携帯「FOMA」の不振も追い打ちをかける。昨年10月に鳴り物入りでスタートしたFOMAだが、待ち受け時間が短いことや、使える地域が狭いことから、最初の1年で契約は13万5700件にとどまっている。第3世代携帯では、auの「CDMA2000 1X」が10月に300万件に達するなど明暗が分かれている。
このため、ドコモは今年度末の予想契約数を、当初計画より106万件低い32万件に下方修正すると発表。12月には待ち受け時間をより長くした端末を投入する予定。立川敬二社長は「来年度には本格的な体制を敷く」と話すが、具体的件数などの目標を示すことはできないままだ。
■■NTT東西はIP網広域化でテコ入れ
さらに深刻なのはNTT東西。両社とも経常ベースで黒字を保てたのは、5月に実施した「構造改革」により、両社合計で68%もの人員を削減し、主に人件費を圧縮したためだ。合理化によって組織自体はスリムになったが、固定電話事業を収益の柱とした従来の事業体制からの脱却が求められている。
その回答の1つとして、両社は各県域ごとに分かれているIP網を、広域に切り替えるよう、近く総務省に申請する。NTT東西のIP網は現在、各県域ごとに分かれていが、認可後はネットを使った長距離データ通信事業を手がけることが可能になり、IP事業のテコ入れにしたい考えだ。
ただ、こうしたグループ各社の事業の役割分担を整理する必要も出てくる。NTT東西の広域IP網化はNTTコムの領域に踏み込むことになる。このほか、各社が持っているISP事業の整理統合も大きな課題だ。
■■年内にもグループの将来像提示へ
NTTグループは、通信市場全体が音声通話からIP通信へと変化する中で、ブロードバンドを次の稼ぎ頭に位置づけている。しかし、本命のFTTHやFOMAの不振、ADSLの競争激化により、経営を取り巻く環境は厳しくなりつつある一方だ。
ブロードバンド事業について、和田社長は「新たなビジネスモデルづくりが必要」と話し、コンテンツサービスなども含めた事業の見直しを表明。年内にもブロードバンドビジョンを策定してグループの将来像を示す予定だが、どこまで踏み込んだ内容になるか、内外の注目を集めている。