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第29回「IT革命で日本経済が活性化しない理由」
(竹内経済工房主宰・経済評論家 竹内 宏氏)
最終更新日時: 2002/11/22
IT革命は日本経済の活性化に役立ったわけではない。その理由はまず第1にIT技術の発達によって高級な作業は自動機械に置き換えられ、中国等東アジア諸国で多くの工業製品が生産できるようになった。自動機械を使う場合でも、前後の工程は人手で行われる。中国では安い賃金と自動機械をうまく組み合わせて、高品質の工業製品を低コストで生産している。日本の企業はこのメリットに惹かれて、続々と中国等に工場を移し、IT関連の産業も中国等に移動した。
第2にIT技術は経営にも利用された結果、トヨタのカンバン方式が世界の企業に広がり、日本企業の優位性が消えた。世界の企業はサプライ・チェーン・マネージメントを導入し、IT化によって原材料、部品、販売などの部門は、お互いに受発注、在庫、販売等の情報を共有し、最終製品の売り上げ推移を見ながら、生産、在庫、資金繰りなどを最適な状態に置くことができ、競争力が強まった。
第3に家庭のIT化が期待され、確かに携帯電話は爆発的に伸びたが、老齢化人口の増大と、ユーザー・支援サービス業の未発達のために、パソコンは1部の家庭にしか浸透しなかった。中年以上の人は、仕事で、パソコンに触れる仕事が機会が少なかった。彼等はパソコンを操作できても、何かの拍子でフリーズが起きたりすると、全くお手上げだ。ソフト会社からサービスマンが来て、夜中まで格闘しても直せないことがしばしば起こる。優れたマンパワーが不足しているのであり、ソフト会社は有料サービスに消極的だ。
中高年齢者の家庭にパソコンが普及すれば、シニアネットで仲間を増やし、ネットで買い物をし、近い将来、遠隔治療やホームコンピューター・システムを利用しようと思うはずだ。ロボットによる介護にも関心を持つだろう。最大の人口層である中高年齢者がパソコンに親しめば、確実にIT革命が発生する。
しかし、パソコンの量販店は、専らパソコンを使い慣れた層を狙って少数の店員で販売している。どの地域でも、パソコンメーカーに勤め、あるいはパソコンを使う仕事で働き、定年退職した人がいるはずだ。その多くは自分のパソコン技能を生かしたいだろう。そういう人達をうまく組織化して、ソフトを教え、またフリーズを直すサービスを有料で提供するNPOを立ち上げれば、将来、IT関連機器の内需を刺激するだけではなく、家庭生活の効率化に役立つに違いない
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