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<東短リサーチ>橘田リポート米FRB議長は議会証言で、米国経済に…
内外政治経済・短期金融市場の動向 橘田週間リポート11月18日号
●米FRB議長は議会証言で、米国経済について対イラク攻撃を念頭に置いた地政学リスク」が重しになっていると発言し、先行きの経済不安への本音とも受け取れる認識を示した●
このところの米国株式市場では、11月12日にはウサマ・ビンラディン氏とされる音声公表で相場が急落する局面があったり、続く13日にはイラクの国連安保理決議受諾のニ ュースが伝わったとたんに、それまで下落していた相場全体が急速に持ち直すなど、FRB議長が景気への懸念として指摘していた地政学的なリスクに敏感な地合いが続いて いる。
先週から株式市場では、流通業界の企業の決算発表が本格化した。流通の最大手ウォルマート・ストアーズの決算内容が事前の市場予想を上回るなど、消費の底堅さを示すものとなったのを受け、株式市場は平静さを取り戻した感が強くなった。
しかし,相場の回復感はそれほど盛り上がらなかった。株式相場全体の回復に重しとなったのは 、13日米上下両院の合同経済委員会でのFRB議長による議会証言である。この証言は 、中立型への運営方針変更も含めて消化難の面もあった利下げの真意を探る意味で注意 を集めた。
グリーンスパンFRB議長の議会証言の要旨は「現状米国経済は設備投資の調整、企業の不正行為、株価の一段の下落、緊張が高まっている地政学的リスクなど、 いくつかの重しを抱えている。
しかし、個人消費は予想されたほど落ち込まなかった。 ただ、好調だった自動車販売が鈍化しているのは需要の先食いの反動なのか、それとも本格的な需要の弱さに伴うものかを見極める必要がある。
企業活動は力強さを取り戻す兆候は見られない。世界的な市場競争の強まりで、価格引上げが困難であると経営者は 感じている。
最近のデータによれば消費、生産、雇用を抑制する不確実性がより高まっている。しかし、先般決定した大幅な金融緩和が経済活動を下支えするであろう。
米経済はデフレに陥ったのではないかとの意見もあるが、デフレ的な状況からはかなり遠い 。米経済がデフレのふちにあるとは思わないが、仮にそうなってもFRBは可能な資産購入などで市場に流動性を供給できる」である。
また、FRB議長は、ブッシュ政権が 目指している減税措置については、恒久化そのものには経済刺激効果はないとしながらも、「減税措置を元に戻せば市場は後ろ向きに反応するであろう」と警告して、減税廃 止を支持しない考えをはっきりと示した。
米国では、昨年から10年間で総額1兆3,500億ドルに上る減税が段階的に実施されている。
大型減税に反対する民主党と賛成する共和党の妥協により、2011年に減税措置がいったん元に戻るサンセット条項が盛り込まれている。
ブッシュ大統領は、今年の中間選挙での上下両院における共和党勝利を受けて、景気回復のため減税を恒久化すると訴えている。
今回FRB議長は、11年に本当に減税措置を廃止してしまえば実質的に増税となるので景気に悪影響が出るとの認識を示した。
こうした発言を受けて、米国議会内では共和党中心に議長のお墨付きを得たとして、減税措置恒久化の声が勢いづいてきている。
ブッシュ大統領は議長の証言について、「議長の言うように米経済は本来の力で成長していない」と述べて減税の恒久化に前向きな発言をし、今後の経済対策に全力を挙げる考えを示した。
上下両院の議席の過半数を制したブッシュ政権は、今までの経済 政策の遅れを取り戻すために年末から来年初にかけて次々と経済対策を打ち出していく ものと考えられる。
今回の議長による議会証言の内容について、市場関係者の評価は非常に厳しいものとなっている。「過去の解説が中心で消費とか投資についての新しい材料は提供していない」と、市場関係者の先行きの経済に対する不安感が強まっている。
小売り大手のウォ ルマート・ストアーズは、足元の決算では市場の予想を上回る決算とはなったものの、次の四半期の見通しでは市場予想幅の下限を下回るであろうと発言するなど、議会証言で議長が指摘した「不確実性」を示す内容となっている。
また、半導体製造装置最大手アプライド・マテリアルズも、11月から来年1月期の減収予想を明らかにするなど、こうした動きは雇用、生産を抑制する不確実性が高まってきていることを示している。
議長は、先般のFOMCで利下げ幅を市場予測より大きい0.50%としたことで、経済が弱さから抜け出すことに役立つはずと強調している。
また、昨年の同時テロ以降の米国経については非常に底堅かったと発言し、米経済は生産性向上の動きも続いているとしながらも、対イラク攻撃を念頭に置いた「地政学的リスク」が重しとなっていると発言し、米国経済不安の本音とも受け取れる認識を示した。
市場関係者がFRB議長の今回の議会証言で物足りなさを感じたのは、イラク攻撃による地政学的なリスクの高まりで 、消費とか、生産、雇用を抑制する不確実性がどのくらい大きいものになるのか読めず、はっきりした発言がされなかった点に原因があったのではなかろうか。
FRBの金融 政策にせよ、個人消費、企業の雇用・生産にせよ、イラク攻撃によってどの程度の不確 実性が生まれ、地政学的なリスクが高まるのか、政策担当者も民間も読めないというのが現実の姿である。
すなわち、その結果は神のみぞ知るということである。米国の経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルが発表した景況感調査によれば、企業の最高経営 責任者(CEO)の65%は2003年の米実質GDPが1.5 〜2.0 %増加に止まると予測、さらにCEOの60%が来年は自社の雇用が減ると見通し、57%は設備投資額は横ばいとみている。
景気回復は強くないし、持続的でもないとみているCEOがほとんどであ た。
米議会予算局(CBO)の発表によれば、10月の財政収支が530億ドルの赤字になるとの予想である。前年同月は約80億ドルの赤字であった。
また、10月の歳出は国防費や社会保障費、失業手当の支給額増加などで大幅に増加し、前年同月を130億ドル上回ったと予想されている。
2002年度(2001年10月〜2002年9月)の財政収支は約1,590億ドルの赤字となり、5年ぶりに赤字を計上した。
対イラク戦の進展次第では赤字が一段と増加する恐れもあろう。
● 最近、海外では久しく跡絶えていた景気の強気派と弱気派の論争が復活してきた。これは後退感一色に包まれていた世界景気に回復の兆しが生まれてきたということだ。対イラク攻撃なかりせば●
最近、海外のエコノミストの間では欧米の景気について、デフレ懸念が終息に向かっているという見方と、米国は消費の陰りを要因に景気が2番底をつける懸念もあるとの景気強弱論争が強まりをみせている。
景気に強気な見方の概要は「米国や欧州でも、一 時期卸売物価や商品市況の下落、金融不安がデフレ懸念を助長した時期があった。
経済の状況が、実際にデフレに直面している日本と似てきたため、危機感が高まったケースもあった。
今年半ばには、主要7カ国の卸売物価が前年比約0.5 %下落し、石油を除いた多くの商品市況の下落率は2ケタに達した。しかし、今や状況は大きく変わった。
主要7カ国の卸売物価は数カ月に渡って安定している。米国では10月の卸売物価は前月比1 .1 %上昇した。上昇率は昨年1月以来で、市場の予測数値0.2 %程度上昇を大きく上回った。
前月を上回ったのは2ヵ月連続である。それにつれ10月までに主要7カ国の主要商品指数は10〜20%上昇している。
最近では、在庫削減が完全に終了したことが明らかになった。鉱工業生産は、緩やかなペースであれ、来年の前半には加速しそうだ。欧米の政府は、金融政策で危機に対処するのと同時に、問題を抱える金融機関に直接支援を行うこともできる。
米国や大半の欧州主要国は国債発行残高のGDP比率が低いため、 財政の安定を損なうことなく直接支援を実施できる余地は十分にある。欧米のデフレ不安は切迫していたわけでなく、リスク自体がもともと極めて小さく、それもここ数カ月で大幅に減少している。
今年年初の国債利回り急低下の背景には、株式と社債のリスクを嫌った資金の流入や、デフレ不安といった要因が潜んでいた。しかし、すでに国債利回りは底を打った兆候が出ている。
欧米ではデフレ不安が終息しつつあるようだ。
世界的に財政赤字の拡大が続いていることを考え合わせると、長期にわたる国債の強気相場が勢いを失いつつあるような状況となってきた。
国債利回りは、デフレ不安が消失したことで利回りが上向く可能性がさらに高くなってきたようである。
欧米の景気は来年初夏には明るい動きがでてくるであろう」である。
一方、景気に弱気な見方の概要は「景気が二番底をつける可能性は大きい。第二次世 界大戦以降に米国経済は9回の景気後退を経験しているが、このうち6回は景気後退期 にあっても少なくとも1・四半期だけは実質GDPが上昇している。
今年の第4・四半 期には再び景気は弱含み、1・四半期までは停滞が続くようである。
株価下落で個人資産の実質価値は下がり続けている。消費者マインドは相次ぐ企業の不正発覚、イラクとの戦争の懸念、さらなる企業のレイオフの不安、記録的な個人負債の増加により冷え込みつつある。
原油価格の上昇による消費者の購買力にゆとりはなくなっている。9月の小売売上高は下落し、消費はすでに明らかな縮小の兆候を見せ始めている。裁量的な支出の正確なバロメーターとなるクリスマス商戦も今年は見通しが暗い。
新たなエンジンとなるものは見当たらない。楽観論者は消費が堅調さを取り戻して景気は回復するとしているが、そのようにならないであろう。
確かに今回の景気後退局面でも住宅市場と個人消費は縮小せず、持ちこたえていた。
しかし、低金利、減税、エネルギー価 格の下落など一時的要因に負うところが大きく、これはすでに昔の話である。低所得層 向けの融資が積み上がってしまったため、住宅ブーム崩壊懸念が高まっている。
減税は すでに実施済みであり、中東情勢の緊迫化などを受けエネルギー価格は上昇している。
企業によるレイオフの発表が相次ぎ、失業率が依然として高水準で推移する現状では、経済の力強さには疑問を抱かざるを得ない。
ハイテク、従来型産業とも大幅な過剰設備を抱える業種が大半を占め、新たな設備投資ブームが起こることは考えられない。海外でも景気は低迷し、輸出のもたらす経済刺激効果も期待薄である。
米国が景気後退へ逆戻りする可能性が高く、せいぜい微かな回復しか見込めないとなれば、輸出依存型の経 済を今なお脱却できない日本経済の見通しにも明るさは見えない。
米経済の低迷が続き、景気の二番底がますます現実味を帯びる中で、消費支出を取り巻く環境は厳しさを増 している。
日本などアジア諸国からのモノとサービスの輸出は、米国の消費支出の大き な割合を占めるだけに、悪影響を受けることになるであろう」である。
欧米を中心とする世界経済の動きについては、このところ景気回復の強弱を議論する場面が全然なかった。
今回の強気派と弱気派による景気論争は実に久しぶりのことである。当レポートでは、ここ数年間米国景気の悪化のみをこれでもか、これでもかと掲載 してきた。しかし、雪の降り積もった土壌の中にも新しい芽が吹き出していることは事実である。
イラク攻撃という地政学的リスクが無ければ、米国景気の回復は相当進んで いたものと考えられる。
もしイラク攻撃が起こらないとなると、米国景気は相当のピッチで回復し、株式相場は一万ドル台に上昇していこう。
今後の世界経済はイラク攻撃の有無で大きく変わるであろう。
イラクが一応国連安保理の決議を受け入れたことで、今週から大量破壊兵器問題に絡む国連査察も動き出す
今後の焦点は、イラクが査察団を 円滑に受け入れるかどうか、大量破壊兵器の開発情報を完全開示するかどうかなどに移ってくる。
米国は強硬姿勢を崩しておらず、今後色々のさや当てが起こる可能性はあり、緊張が高まることも考えられる。
イラクも強硬姿勢をとっていることから、開戦の可 能性も高い。
もし開戦となれば、米国景気の先行き懸念も強いだけに、株式とか、外為市場への影響は大きくなろう。
そうした悪材料は開戦時にほとんど織り込まれてしまう ので、その後は戦争が短期か長期決戦になるかで大きく変わってこよう。
長引けば米国 経済にはベトナム戦と同様の不況感が強まってこよう。
しかし、米国も近代兵器を総動員して攻撃をするので半年程度の短期戦という予想が強く、来年夏以降には米国景気は 回復しよう。
いずれにせよ来年1月までにイラク攻撃が有るか無いかが世界経済の大き なポイントになっていこう。
●世界的に国債利回りは底を打った。日本国債も利喰いの時期だ。円相場は地政学的リ スクで大きく動けない。来年1月が変化の時期となろう。先延ばしされた不良債権処理 の加速は来年後半がヤマ場となろう●
このところ欧米の市場では、デフレ不安が終息し始めたのではないかとの強気な景気 見通しをするエコノミストが多くなってきたことは既に述べた。
年初来、欧米諸国では デフレ懸念を要因に資金の質への逃避が起こり債券利回りが急低下したが、すでに国債利回りは底を打った兆候が出ている。
これはデフレ不安が消失したことで、利回りが上 向く可能性が高くなるとの懸念が高まったことによるものである。
イラク攻撃というリスクはあるものの、欧米の金融市場では着実に回復の彩りが生まれてきているようである。
しかし、日本の新発10年物国債利回りは11月13日には0.94%まで低下し、98年11月 以来約4年ぶりの水準となった。
また、13日には新発20年物国債利回りが一時1. 53%まで低下し、日銀が量的緩和に踏み切った2001年3月の水準に並んだ。
今回の10年物と20 年物の利回り低下は、98年の低下局面と異なって全員参加型の相場上昇ではなく、一部にはもうぼつぼつ限界的な水準になったとして買いを敬遠する動きもみられた。
債券以外に1%以上の金利がつく投資対象が見当たらず、運用資金が結局債券に集中する構図 はまだしばらく続きそうである。
日本では98年10月2日に10年物国債利回りが0. 775 % をつけたのが史上最低である。景気の先行き不透明感からデフレ圧力が強まるため、長 期金利はさらに低下していこう。
新発10年物国債利回りは年末にかけて0.7 〜0.8 %台 程度まで低下するであろうと当レポートで指摘したが、0.8 %台程度まで低下することは考えられよう。
米国の景気回復ピッチは鈍ってきており、さらに世界的に金利低下局面にある。
日本では機械受注統計が悪化するなど景況感の改善は見られない上に、円高の進行も国債の買い安心感を強めている。すでに相場は煮詰まっており、限界的水準にきているが、相場の勢いで0.7 〜0.8 %の水準も考えられる。
しかし、景気指票が悪化し、日経平均株価が8,000円を割り込めば、小泉政権が財政拡大路線に転換する可能性はある。
国債の大規模な増発などのリスクが高まれば長期金利は上昇に転じよう。
不良債権処理が本格化すれば一時的にはデフレ圧力が強まるが、1〜2年後の期待成長率は上昇しよう。補正予算の編成要望額は5〜15兆円と幅広い数値となっているが、現状で は5兆円程度が一般的な水準となっている。補正額が多くなれば国債の増発につながる 。
国債の増発と不良債権処理の本格化によって景気回復期待が強まれば来年の春以降には10年物国債利回りは1.4〜1.5%程度まで上昇していこう。
週号の当レポートでも「国債売却の時期を誤るな」との警告を発したが、国債はもう利喰いの時期に来ていると言えよう
円相場の動向であるが、当面118円から123円のレンジ内での動きとなろう。
米国の10月の小売売上高が市場の予測を上回ったことで、米景気への過度の悲観論は修正されつ つある他、利下げによる景気下支えの効果を見極めようとする動きが広がっていること で一方的なドル売りは一服した。
一方、日本では銀行株下落や補正予算による財
政悪化懸念を材料に円売りが進む可能性が高い。
ただ米国景気はイラク攻撃などによる影響で 先行き景気悪化懸念が根強いので積極的なドル買いも難しく、外為相場は次の政策待ちの展開が予想される。
日本の個人と機関投資家による外貨買いは、米国金利が低下したことで一服している。
現在は対イラク攻撃を念頭に置いた地政学的リスクが重しとなって日米の投資家が右にも左にも動けない状態が続いている状況ではなかろうか。
イラク問題にある程度の結着がつくまで、外為相場は動きがとれない状況が続くのではないかと考えられる。
相場が動くのは、対イラク攻撃の可能性がはっきりしてくる来年1月頃 になるのではないか。日本の不良債権処理の加速は政治家と大手銀行の反対で一応先延ばしされた。
しかし、ここ1年内に処理の加速を決断する日は来る。来年夏以降、本格的な不良債権処理を目指す時が訪れて、官民共にバブル崩壊の痛みを感ずることになる。来年が不良債権処理の大きなヤマ場となろう。(終)
(東短リサーチ 特別顧問 橘田昭次
記 )
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なんか、今週号は、米国のデフレが終焉するとの意見だが、ちょっとまってくれ。・・・・・