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(回答先: UFJ銀頭取、自力での資本調達強調 投稿者 日時 2002 年 11 月 19 日 17:01:54)
斎藤教授のホンネの景気論
第13回「日本経済は静かに深く『真性デフレの海』に」
(立教大学 教授 斎藤 精一郎氏)
最終更新日時: 2002/11/19
11月13日発表の国民所得統計速報によると、7−9月期のGDPは前期比0.7%増、年率ベースで3.0%増となった。数字でみる限り、これで3期連続のプラス成長で、政府が5月に打ち上げた「景気底入れ宣言」がまちがっていないことが確認された。
しかし、ちょっと待てだ。景気はこの7−9月期を境に再び水面すれすれか水面下に沈む気配が強い。最大の問題は2003年度に戦後最悪のマイナス成長に陥りそうなことだ。平成不況は1991年春から始まったがこの11〜12年間でマイナス成長(実質)は98年度のマイナス0.8%ならびに2001年度のマイナス1.9%と2回あった。2003年度はおそらくマイナス3%前後か最悪の場合マイナス5%まで落ち込む可能性がある。
たしかに、年明け後に実効あるデフレ対策として最低でも5兆円の補正予算が組まれよう。おそらく5兆〜10兆円規模になるとみておいていいのではないか。
この限り2003年前半は何とかデフレ圧力は緩和されよう。だが、いってみればそれは「焼け石に水」で、2003年後半というか2003年夏頃からじわりじわりとデフレ圧力が日本経済にのしかかり、大型補正効果を消滅させ、日本経済を深い「デフレの海」に沈めるよう作用してくる。
2003年度の、マイナス3〜5%のデフレ深化の基本要因は3つだ。(1)長期の「10年デフレ」の結果としての大規模な需給ギャップ(デフレギャップ)の存在、(2)竹中式の不良債権処理の加速策による強力なデフレ圧力の発生、そして(3)米国経済の本格的なデフレ化である。
(1)の「デフレギャップ」とは30〜50兆円と推定される巨額な規模だ。80年代後半の、いわゆるバブル景気で過剰供給力が創り出されたうえに、90年代の財政大出動で建設業など中心に過剰企業が生まれ、それらが供給面に加わったこと、さらに特別保証制度や金融緩和策で本来退場すべき中小企業などが生き残っていることなどでの複合的結果だ。これが、ボデーブローのように日本経済に重圧を課し続けている。(2)竹中式不良債権処理は大手銀行の貸出圧縮を引き起こすとともに、企業淘汰を加速化させ、これが年後半に新たな下方圧力として日本経済に加わってくる。そして(3)米国経済は公定歩合0.75%に象徴されるように、1995年秋の日本経済(公定歩合1→0.5%)の状況に近くなってきたことだ。日本経済は97年度の「橋本失政」で一段深い停滞に陥ったが、米国経済は対イラク戦争という「ブッシュ失政」でデフレ経済に落ちこむリスクが高まる。
以上のようにみれば、5〜10兆円の大型補正はまさに「気休め」か「一時しのぎ」にしかならず、2003年度の日本経済は70年以来の「真性デフレ」を垣間見ることになりそうだ。
■第12回「『竹中デフレ』か『長期衰退症候群』か」
■第11回「小手先デフレ策を繰り返す『懲りない面々』」
■第10回「グリーンスパン神話が消えるとき」
■第9回「薄氷の日本経済を襲うか『米国の傲慢』のツケ」
■第8回「不良債権はデフレの『原因』であって『結果』ではない」
■第7回「日本の景気回復は“小春日和”で終わる?」
■第6回「信じていいのか『米国経済の回復』と『日本経済の危機回避』」
■第5回「オーバーカンパニー状態の解消なくして真のデフレ対策はない」
■第4回「大失業時代の到来か? 『失業率5.6%』は序章に過ぎない!」
■第3回「2002年どうなる日本経済?! 円安戦略の危うさ」
■第2回「”小泉補正”を斬る! 危機脱出へ『小泉国債』発行を」
■第1回「米景気”来年秋回復”に待った!」
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