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小泉氏の踏ん張りどころは…
投稿者   日時 2002 年 11 月 19 日 13:34:15:

(回答先: Re: 小泉人気の理由は 投稿者   日時 2002 年 11 月 19 日 13:22:25)

 小泉純一郎氏、説き来たり説き去るといった感じで、小泉内閣の公約が次々とほごになりかけている。「30兆円の国債発行枠」もいよいよ風前のともしびらしい。

 不良債権処理の加速に取り組む、そうなれば一層デフレになる、デフレになれば倒産失業自殺が増える、そうならないようにするには補正予算で景気を支えなけりゃならない、無いソデは振れぬ、国債発行で財源をつくらなければならない、かくして30兆円枠突破という筋道である。

 過去の政治ならば、ここで公約違反の声が出て小泉内閣もおかしいじゃないかとなるはずなのだが、自民党の抵抗勢力も連立与党も「ようやく小泉さんも補正予算を求めるわれわれの声を聞いたか」といった具合でひとまずホッとした空気である。

 「官から民へ」というのも何度も聞いた小泉氏の内閣の基本哲学である。不良債権処理の「竹中プラン」の行き着く先には、銀行への国の資本注入を普通株の形にして銀行の事実上の国有化も予想される。郵便局は民営化をめざして銀行は国有化かね、と「官から民へ」の公約への違背をそこに見る人もいる。

 銀行の国有化となれば、銀行の現経営陣はクビになる。それじゃたまらんと銀行が中小企業の貸しはがしに走ってつじつまを合わせることのないよう、「竹中プラン」も自民党とのやりとりの中で経営陣の責任追及については少し緩めた表現にした。

 「だけど衣の下のよろいが見えちゃったからね。いまさら緩めたって銀行は猛然と貸しはがしをしますよ」と亀井静香氏は予測する。

 「官から民へ」のスローガンなのに「産業再生機構」をつくろうというのはどういうことであろう。銀行の不良債権処理を進めて企業をつぶすだけでなく、再生の見込みのある企業は「機構」が債権を買い取って支援をするというもので、企業にとっては生きるか死ぬかの手術をせまられることになる。

 産業再生の担当相になった谷垣禎一氏は「産業再生機構のトップには、この人の言うことならば聞かなければという立派な人を選びたい」と言っている。かつて中曽根内閣で行政改革を推進した「めざしを食べる土光敏夫さん」のような経営手腕と人格を備えた人がいるかどうか、これは難しい。こんな批判の声をあちこちで聞く。

 「お前の会社は死ね、お前の会社は生かしてやるということを、えんま様じゃあるまいし国が決めるということかね。それじゃあ社会主義じゃないか。官から民へという小泉さんの公約と矛盾しているじゃないか」。亀井氏もそういう意見である。

 小泉首相のもっとも基本の公約は「改革なくして成長なし」である。その点はどうなのか。小泉政権を中枢で支えた官側の人物がこう語っていたことがある。

 「こんな垂れ流しの財政をいつまでも続けていてはいけない。旧態依然のケインジアンでは絶対にだめだ。経済界は構造改革への意識がなさすぎる。減税でもばらまきでも効果のなかった同じ政策手段を繰り返してどうするんだ。株の下落だって魔がさしたようなものだ。国民生活がよほど窮すれば別だが、ここが踏ん張りどころというところがあるはずだ」

 小泉首相はこの踏ん張りどころで踏ん張っているのか。だが、どうも踏ん張れば踏ん張るほど、そこから生まれる負の部分に手当てをしなければならなくなってつじつまがあわなくなり、自分の原則を掘り崩すといった自家中毒の政策サイクルに陥っているようにもみえる。

 それが政治に反映する。亀井氏は「来年9月の自民党総裁選で小泉さんを支持するのは一人もいない」などと党内に倒閣同盟が結成されたかのごとくである。小泉氏が「私は政策の人というより政局の人」と言ったとかいうのは、「そんなことでおめおめと引き下がれるか。うむをいわさず衆院解散をして勝負に出るぞ」という意味であろう。そこが政治的踏ん張りどころというわけである。

 国民は我慢している。争うにしても国民生活を第一義に考えてほしい。


朝日新聞

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