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BSE(牛海綿状脳症)対策の柱として打ち出された国産牛肉の買い上げ焼却事業について、会計検査院は21日までに、今月末に小泉首相に提出する決算検査報告への掲載見送りを決めた。
民営化論議が佳境を迎えている日本道路公団問題も、掲載しない方針だ。外務省関連の国際機関のあり方を巡る問題とともに、「重要案件」と位置づけて進めてきた検査の結果を報告から外す幹部の判断に、「理解できない」と一部で疑問の声が出ている。
「2001年度の決算が検査の対象だからと言って、今年度になって助成金の交付が決まった事業を今年の検査報告に全く載せられないというのは、おかしい」。検査院関係者は、盛んに首をひねる。
昨年9月にBSE感染牛が見つかった後、国は様々な対策を取ってきた。その柱は、未検査の国産牛肉を買い上げ、いったん市場から隔離する「牛肉在庫緊急保管対策事業」と、買い上げた肉を焼却する「市場隔離牛肉緊急処分事業」で、293億円の予算がついた。
両事業とも、業者から牛肉を買い上げる業界団体に農水省が所管の特殊法人「農畜産業振興事業団」を通じて助成する。保管事業では、冷蔵肉を冷凍保管することで値段が下がる分を補てんする費用と保管経費を合わせ、1キロ当たり707円以内、処分事業では、市場へ戻すのを前提に保管していた肉の買い上げ費用として、同1554円以内を国が負担する仕組みだ。
検査院では通常、助成金や補助金の交付後に問題がないかをチェックする。しかし、両事業については雪印食品の牛肉偽装事件に象徴されるように、不適切な助成金交付を許す素地があると、検査院は判断。「全額が交付された後だと、問題が見つかっても国庫に返納させるのは簡単ではない。不適切な助成を事前に予防するため」(幹部)に、保管事業では助成金の一部しか出ていない今年7月、農水省に是正を求めた。
処分事業は、交付決定そのものが今年度に入ってからだったが、保管事業と合わせてBSE対策の全体像を検査報告で示し、個別の問題点も取り上げる予定で意欲的に検査を進めていた。
だが、先月上旬になって、方針が転換した。検査にあたる事務総局の最高責任者で、他省庁の事務次官にあたる深田烝治事務総長の判断だった。深田総長は、「現在行っているのは2001年度決算の検査で、今年度に交付決定があったものは対象ではない。検査自体は続ける」と説明する。
しかし、過去には、旧動力炉・核燃料開発事業団東海事業所を巡り、検査報告で予算要求段階の問題点にまで言及したケースもある。複数の検査院関係者は、「総長の説明は検査報告に載せない単なる方便。両事業は一体のもので、処分事業もすでに交付決定されているのだから、今年の検査報告で取り上げても問題はない」と首をひねり、「社会の関心が薄れたころに検査院が取り上げても、どれほど意味があるだろうか」と批判する。積極的だった幹部2人が6、7月に退官した影響を指摘する関係者もいる。
検査院の方針を最終決定するのは、院長を含む検査官3人による検査官会議だ。だが、事務総局が同会議に提案しなければ、議論にすらならない。BSE問題は、今年の検査報告には保管事業の助成金の支払い方法など個別の問題しか掲載されないことになった。
一方、道路公団問題についても、総長の段階で検査官会議に上げないことが決まった。深田総長は「議論の中にはいろいろあるとしか言えない」としている。(読売新聞)
[11月21日15時16分更新]