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盧武鉉(ノムヒョン)大統領の就任式が行われた26日のメディアは、北朝鮮のミサイル発射を突然起きた驚天動地のように煽って報道し、その後も、「日本はミサイルを防御できない」などの表現に象徴されるように北朝鮮ミサイル脅威論を噴出し続けている。
北朝鮮ミサイル発射のメディア報道は韓国の「聯合通信」の報道を受けてなされたものであるが、その日そしてその後を報道を見れば、ミサイル発射については日本政府が北朝鮮から「事前通告」を受けていたことがわかる。
※ 「事前通告」関連報道
『日本政府は「シルクワーム」発射を“北朝鮮からの事前通告”で知ったらしい − 北朝鮮はミサイル発射に先立ち周辺諸国に通告していたと政府首脳が語った − [NHKニュース]』(http://www.asyura.com/2003/war24/msg/909.html)
『【事前通告あり】 北朝鮮ミサイル発射、取るに足らない実験と国務長官 [CNN]』(http://www.asyura.com/2003/war24/msg/917.html)
『北朝鮮は3回のミサイル発射実験を通告、26日の実施も=英政府 [ロイター]』(http://www.asyura.com/2003/war24/msg/982.html)
見聞きした範囲で「事前通告」を通じる内容を報じた国内主要メディアはNHKだけだが、それも、推測してようやくそうではないかとわかる内容でしかない。
CNNやロイターは明確な「事前通告」の報道をしているのに、面白おかしく北朝鮮の危機を煽り続ける国内メディアは、「事前通告」に関しては口をつぐんでいる。
国内メディアのセンセーショナルな報道ぶりに圧倒された国民は、リアルティの度合いは別として、北朝鮮のミサイル脅威はしっかりと脳裏に刻まれたはずである。
端的に言えば、26日以降の“北朝鮮ミサイル脅威騒動”は、日本政府が事前に「北朝鮮がミサイルを発射するが演習の範囲である」と説明していれば、ああいうかたちでは起きなかった騒動なのである。
ミサイル騒動と同じ日に、パウエル国務長官は、年内10万トンの食糧支援を発表し、盧武鉉大統領に北朝鮮を攻撃する計画はないと表明している。
このような動きにも、ミサイル騒動の背景を感じる。
北朝鮮が弾道ミサイルを日本に向けて発射するとしたら、米国もしくは日本が北朝鮮への攻撃に踏み出したときである。(米国が国内の基地を対北朝鮮攻撃に利用すれば、日本が参戦しなくとも、それを理由にミサイルが撃ち込まれる可能性がある)
日本政府もそれくらいの理解はしているはずで、そうでありながら、「北朝鮮ミサイル脅威論」の噴出を誘導したわけを推測してみたい。
● TMD構想現実化の正当性根拠とする
米国はNMD実戦配備に要する膨大な資金を同盟国に分担して欲しいと考えている。
これが、とりわけ資金負担力を有する日本に対するTMD受け入れ要請につながっている。
国際法に反するイラク攻撃を支持したり協力しようとしているくらいの日本政府だから、米国のそのような要請を受けたいと思っている。
今回のミサイル脅威騒動は、TMD配備に大きな正当性を与えてくれる。
(石破防衛庁長官は昨年末の訪米でフライングして導入を約束した)
● 日米安保体制強化という名の米軍補助軍事化を進める根拠とする
日本の軍事力強化に蓋をすることを主眼とした日米安保体制は、90年代に入ってから、米国の世界戦略に日本の軍事力を利用できるものへと変容させられてきた。
中国を表立って敵国扱いできない状況に照らせば、“叩き放題”の北朝鮮の脅威を持ち出して、米国の意向に沿うかたちでの立法と軍備拡張を進めるしかないことがわかる。
このような意味で、国民世論が北朝鮮脅威論に染まることは政府にとって願ったり叶ったりである。
● 国際法違反のイラク攻撃支持の妥当性根拠とする
緊要な政策課題は、国際法違反のイラク攻撃が行われるのが濃厚という状況で、米国を支持することに国民の理解を得ることである。
「北朝鮮脅威リンケージ」の米国支持論は既に沸き起こっているが、政府としては、それを公言しないとしても、国民のできるだけ多くがそのような判断をして欲しいと願っているはずだ。
今回の「北朝鮮ミサイル騒動」が、それにそれなりに貢献したことは間違いない。
● 膠着している日朝交渉の再開名目にしたい
昨年10月に拉致被害者5名が一時帰国したが、小泉政権は、北朝鮮と約束したにも関わらず北朝鮮に戻さない決定を行い、残された家族の日本への渡航を要求している。
小泉首相も、これくらいのことは北朝鮮も認めるのではないかと甘い期待を抱き、それが実現されれば国民の気持ちも和らぎ日朝交渉がスムーズに進められると考えたのではないかと推察する。(小泉首相の政治的得点も高まるがそこまでは“邪推”しない)
日朝交渉は、読売新聞が書いているように、3ヶ月間の交渉で国交回復まで進む予定だったという。
そして、日朝交渉は、日本独自の判断で行われたものではなく、北朝鮮のミサイル輸出と核兵器開発を抑え込みたい米国政権の差配に従って取り組んだものである。
国家の体面を何より重んじるキム政権は、日本側がいくら当然のことだと思っても、約束違反の行為をそのまま容認し家族も渡航させることはないだろう。
水面下の交渉を通じてそれがわかった政府は、拉致被害者5名を北朝鮮に戻す名目が欲しい。
イエメン沖の北朝鮮ミサイル輸出船拿捕事件や北朝鮮のNPT脱退騒動も、日朝交渉が予定通り進んでいたら起きなかった事件だと推測する。
米国は、日朝交渉のスケジュールに合わせて重油供給の停止時期などを決定済みであり、それと現実の日朝交渉とのズレが思わぬ事態を引き起こしていると見られる。
「北朝鮮ミサイル輸出船拿捕事件」や「NPT脱退騒動」は、米朝合作による日本政府せっつき行動と言えなくもないのである。
北朝鮮ミサイル脅威論が国内で高まれば、日朝交渉を通じてその脅威を取り除くという説明も可能になり、日朝交渉の阻害要因となっている拉致被害者5名の問題を妥協的に解決する手法も提示できると踏んでいると思われる。
今さら5名を北朝鮮に戻すという方針転換はできないから、北朝鮮に残された家族の引渡しは国交回復まで棚上げにする線で交渉が行われていると推測する。(これに北朝鮮が同意するかどうかは、国家の面子と経済援助を秤にかけてどちらが下がるかによるだろう)
小泉首相が9月の再選時期までに日朝交渉のめどをつけられなければ再選できないと予測している。
(何と言っても米国の指示に基づく重要な外交テーマなのだから、それさえきちんと処理できない人物が首相を続投することに同意しないだろう。イラク攻撃不支持に踏みきれば、そのようなタガは消えるが...)
※ 参考書き込み
『5人の拉致被害者の帰国問題で日朝が合意文書を交換していた [TV朝日「朝まで生テレビ」]』( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/102.html )
多くの国民が「北朝鮮ミサイル」をリアルな脅威として怯えているとは思えないが、政治課題を有利に進めるため、「事前通告」をそ知らぬ顔をして握りつぶし、メディアの狂乱的北朝鮮脅威報道の噴出を待つという手法はまさに“国家犯罪”である。
そして、小泉政権の意図を知っているのか、ただ、格好の“売りネタ”として煽っているだけなのかはわからないが、後からでも知ったはずの「事前通告」情報を握りつぶし、連日のように北朝鮮脅威論を振りまいているメディアも重犯罪に荷担しているのである。
今回の「ミサイル騒動」は、米朝合作でも大笑いと言えるものだが、それに日本政府も絡んだ日米朝合作であったとしたら、日本国民が笑い者にされたことになる。