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米国主導のイラク攻撃開戦時期決定は、トルコ政府の米軍陸上部隊受け入れ決定延期で後ろにずれている。
国連加盟国や国連安保理の意思そして世界世論の意向には背を向けることを公言しているブッシュ政権にとって、イラク攻撃開始で障害になっている最大の要因は軍事作戦の確定だと言えるだろう。
米国は、南北からの同時侵攻により、イラク側の抵抗力を弱めるとともに南北に存在する油田地帯を短期で制圧するという軍事作戦が望ましいと考えている。
より言えば、トルコ政府が求めているトルコ軍部隊の北部イラク侵攻は、中東全域を大混迷に引きずり込み、その混乱を収拾するかたちで「近代化」を達成するという意味で欠かせないものかもしれない。
欧米そして日本のメディアは、トルコ政府の陸上侵攻部隊の受け入れ引き延ばしは“援助金額の引き上げ”を狙ったものだと解説している。
根源的価値ではない貨幣的富の蓄積に執着する近代人らしい解説だが、そのような「札びらでひっぱたく」外交交渉で目的が遂げられるのだろうか。
トルコの政府と軍との関係や歪んだ価値観と政策を考えると願望の域を越えないのだが、軍事力とお金で何でも思い通りになるという悪魔的傲慢なブッシュ政権のやり方は、目的を遂げられないと見ている。
昨日知人を介して来日中のトルコ人社会学者の話を聞いた。
その人によれば、「アメリカはイラク攻撃を支持して協力して欲しいという態度で交渉するのではなく、部隊を駐留できるようにするためにはいくら援助すればいいんだという交渉しかしてこない」という。
安全保障を米国主導のNATOに頼り経済苦境に陥っている国家なんだから、それなりのお金を受け取ったら言うことをきけということだろう。
どこかの国を例外とすれば、ほぼすべての国の統治者は、独立主権国家としての尊厳を自覚している。
まともな大国であれば、自分の言うことを貧乏国にきかせたいときでも、価値観と論理で説得し、相手が喉から手が出るほど欲しいお金はそっと差し出すものである。
ブッシュ政権は、昨年秋、EUへの早期加盟を望むトルコのためにEU諸国に働きかけたが実らなかった。
トルコ政府の気持ちを忖度すれば、
● イラク攻撃への協力は90%以上の国民が反対している世論に逆らうことである。
● イラク攻撃はイラク北部クルド人とトルコ領内クルド人の連携を誘発し大きな混乱を招く可能性が高い。
● イラク攻撃はトルコ政府になんら経済的利益をもたらさない。
● 軍を始めとした権力機構は米国との協調を重視しており、それを無視することは政権崩壊につながる。
● 敬意もなくえげつないブッシュ政権の交渉の仕方は、トルコに対する侮辱であり許しがたい。
● イラク攻撃は対イラク貿易で大きな利益を得ているトルコの経済に打撃を与えるのだから、その補償を求めるのは当然である。
● EU諸国多数が米国に反対するスタンスを貫いている。
このような意識状況にあると想像できるトルコ政府に対して、ブッシュ政権は、援助金だけで、陸上侵攻部隊の受け入れを迫っているのである。
米国が支払ったり保証する金額は250億ドルから300億ドルと言われているが、それは、「イラク攻撃でトルコがこうむる経済損失の補填」に相当するかどうかさえあやしい金額である。
ブッシュ政権が公言しているような短期収拾であれば見合うかもしれないが、米国でも多くの人が予測しているような長期化(ゲリラ的抗戦を含む)になれば、そんな金額は吹っ飛んでしまうような経済的損失になる。
トルコが長期的な経済利益と考えているEU加盟も、EU諸国のイラク攻撃反対意思が強固であれば、米国への協力はマイナスになることはあってもプラスになることはない。
希望的観測でもあるのだが、トルコ政府は、米国との軋轢を避けるために、援助金額の吊り上げを行いそれが受け入れられないことで米軍陸上侵攻部隊の受け入れを拒絶すると予測している。(政治的理由は一切持ち出さないだろう)
もちろん、開戦時期の政治的・気候的タイムリミットが近づいていると考えているブッシュ政権は、交渉期限切れを突きつけているいるくらいだから、トルコが受け入れを拒否する可能性を読み取って作戦変更には着手しているだろう。
(トルコ沖には既に侵攻部隊用の装甲車両などを満載した輸送船が停泊しており、陸揚げを今か今かと待っている)