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(回答先: 「家族会」訪米を“冷笑”する記事が二つ [ニューズウイーク日本版3・19] 【家族を歓迎した米国の本音 − 今は日本の機嫌を損ないたくない −】 投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 13 日 19:09:53)
題名: 平成15年3月13日 (二)
投稿者: 西尾幹二(B) /2003年03月14日 09時16分
イラク戦の後、クラウトハマーが言うようにフランスが中小国に転落し、インドと日本が抬頭するということがかりに起こっても、これは日本にとって容易な話ではない。石原さんのことをきいてきたワシントン・ポストの女性記者にも私は言った。「軍事的自己決定のない安保理常任理事国なんて考えられないでしょう。」「そりゃあそうですね。」「ですから石原さんが短期内閣でいいから、北朝鮮危機に対応して、憲法9条第2項の削除だけでも大急ぎでやってくれるといいのですが。」
『ニューズウィーク』日本版(2003、3、19)にDana Lewis が「拉致家族の訪米と国際政治の現実」と題して書いている中から二・三句を拾ってみる。
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ワシントン・ポスト紙も保守系のワシントン・タイムズ紙も、横田家の
門灯の話を記事にした。横田めぐみがこつ然と姿を消した77年の夜以来、
彼女の帰りを待って門灯はともされ続けている、と。
訪米は大成功だった。だがそこに希望ではなく、恐ろしい既視感を覚え
るのは私だけだろうか。拉致被害者の家族が夢を奪われたように、日本
の「無垢の時代」もまた失われたのではないかという思いを、私は禁じ
えない。
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日本の「無垢の時代」とは? いったい筆者は何を言いたいのだろうと私はあやしんだ。すると、こんな風にも言うのである。
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北朝鮮に強硬姿勢を取る今の共和党政権が拉致問題の解決を主張するの
は、クリントン政権とは別の理由からだ。いずれ新たな戦争を仕掛ける
口実として、ジョージ・W・ブッシュ大統領が横田めぐみの名を口にす
る日が来るかもしれない。湾岸戦争ではクルド人、昨年のアルカイダ掃
討作戦では抑圧されたアフガニスタン国民の名が使われた。来年は拉致
被害者の番かもしれない。
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拉致問題がまぎれもなく戦争史のひとこまにくりこまれつつある現実は、この筆者にいわれなくても、日々、日本人は肌でかんじている。米政府が横田夫妻や蓮池さんの声に耳を傾けたのが、利用価値があるからにすぎないこともわれわれは分っている。ワシントンでは「悪の枢軸」への強硬論が高まっている今だから、たしかに例外的に門が開かれたのだ。これを利用しない手は勿論ない。その点で訪米はいいタイミングだったといえる。
けれども同記事が次のように結ばれると、私の気持ちは複雑になった。
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ワシントンの大物たちの気が変わらないうちに、拉致被害者の家族が愛する
人を取り戻せるよう、あるいはせめて詳しい消息を知ることができるよう、
私は心から願っている。
だが同時に、悲しい気もする。日本は過去何十年もの間、国際政治の血も涙
もない現実とは奇跡的に無縁なようにみえていたからだ。
もちろん、キュートなマンガやお気楽なJポップ、ディズニーのキャラクター
で身を飾る少女たちの国という日本のイメージは、ただの幻想にすぎない。
それでも、拉致被害者の家族たちが頼らざるをえなかった権謀術数が渦巻く
国際政治の世界よりは、はるかにましだった。
彼らが子供たちに再会できる日が来ることを願ってやまない。ただ、日本が
「無邪気な子供」に戻れる日はもう来ないかもしれない。
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アメリカ人には、日本は千と千尋とモーニング娘の国だと思われているのだろう。日本を「無邪気な子供」と思いたいのは白人の願望だが、わが国の政治家や官僚や新聞をみている限り、そう思われても仕方のない面がある。
北朝鮮が地対艦ミサイルを発射しても、「日本には特別の脅威はない」とただちに防衛庁がコメントを出す国である。かつてテポドンが列島を越えて太平洋に着水したとき、「あれは人工衛星だった」という北の発表を国民は誰も信じないのに、政治家と官僚と新聞は北のこの解釈に救われたとばかりに、いっせいに「あれは人工衛星だった」と符牒を合わせて発表し合い、めでたしめでたしに終わらせた。こういう国の風景は、外国人からみて日本は千と千尋とモーニング娘の国と思われても致し方ないような気を起こさせる。
イラク後の新しい国連の構成が変化し、日本にも発言権が出てくれば、当然ながらわれわれは「無邪気な子供」でなくなり、そこにもう戻れなくなるであろう。
私が心配するのは、これからの平和維持は「危険な大人」にならなければ不可能なのだが、それが分らなくて、今のままでいたい、何も変えたくない、外の世界は見たくもない、子供を大人にしようとしているアメリカがいけない、アメリカとそれに同調する一部の日本人が悪いのだ、と、だだっ子のように喚き立てる勢力が今から予想されることである。彼らを現実に目覚めさせることの方がどんな外交政策よりも難しいし、大切だと思わずにはいられない。