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<個人情報保護法案の行方>与党修正案になお異論
投稿者 NihonKitsune 日時 2002 年 12 月 17 日 13:00:15:

<個人情報保護法案の行方>与党修正案になお異論・・・上
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021217-00000166-mai-soci
 表現・報道の自由への制約が懸念されていた個人情報保護法案が今月13日、臨時国会の閉会に伴い廃案となった。政府は与党3党が提案した修正案を下敷きに来年の通常国会に新法案を再提出する。新法案で懸念は払拭できるのか。与党案について各界関係者に聞き、論点を整理した。【臺宏士、大治朋子】

■基本原則 理念に残る懸念

 「通常国会後にメディア各団体から話を改めて聞いてみたところ、基本原則への懸念が非常に強いことが分かった。廃案にする以上、基本原則の削除という目に見えやすい修正は不可欠だった」

 与党案の下敷きとなった公明党案をつくった漆原良夫衆院議員は語る。

 「利用目的による制限」「適正な取得」「透明性の確保」「正確性の確保」「安全性の確保」。個人情報の具体的な取り扱い方を定めた5項目の基本原則は、取材から報道の後までのすべての段階を規制しかねなかった。

 違反しても罰則はないが、「損害賠償訴訟で違法性の判断要素となる」(細田博之・科学技術担当相)など裁判規範となって拘束力を持つため、取材・報道活動を制約すると指摘されていた。

 与党案が基本原則を削除したことについて評価する声は少なくない。

 野党4党実務者会議の座長を務めた民主党の枝野幸男政調会長は「一歩前進だ」と評価。また、法制化への道筋を付けた政府の個人情報保護検討部会の座長を務めた堀部政男・中央大教授(情報法)も、国民への過剰規制への懸念から削除を支持する。

 上智大の田島泰彦教授(憲法、メディア法)は「改善には違いない」としながらも、与党案は旧政府案の基本原則の前書きとして定めた部分を「基本理念」として残し、新たに「安全管理をはかり」との文言を追加したことに着目。「抽象性を高めたとは言え、安全性の管理や適正な取り扱いなどの文言は、プライバシー侵害の訴訟で援用される恐れがある。懸念が除去されたとは言えない」と指摘する。

 一方、政府・検討部会委員だった主婦連合会参与の加藤真代氏は「国民全員のマナーとして、基本原則は必要で全部の削除は心配だ」と話した。

■義務規定 「管理」変わらぬ発想

 大きな論点となりそうなのが、違反すると罰せられる義務規定だ。

 与党案は、主務大臣が助言や勧告・命令などを行う場合には個人情報取扱事業者の表現の自由▽学問の自由▽信教の自由▽政治活動の自由を「妨げてはならない」と改めた。旧政府案は「妨げることがないよう配慮しなければならない」と記しており、表現上は「主務大臣の権限の制限」が明瞭になった。

 しかし、与党案は、旧政府案と同様に主務大臣による監督制を維持し、個人情報取扱事業者の定義も踏襲している。このため営利目的だけでなく、非営利目的の市民活動を含めた幅広い分野が義務規定の適用を受ける構図が残されたままだ。

 野党4党は、欧州にならい独立した第三者機関による監督を提案。民主党は、義務規定を適用する対象業種だけを限定して列挙する「ポジティブリスト」方式を独自案として主張するなど、両者の見解の違いは法律の構造にまで及んでいる。

 「個人情報保護法案拒否!共同アピールの会」のメンバーで、ノンフィクション作家の吉岡忍氏は「非営利と個人の活動は基本的に法の網から外すべきだ。与党案も個人情報の保護が必要な分野で緩く、不要な分野では厳しすぎるという構造上の問題点は依然として解決していない」と指摘する。市民グループ「プライバシーアクション」の白石孝代表も「修正案でも一般市民が逮捕・捜査の対象になる可能性がある。国家が国民の個人情報を管理する発想に変わりない」と話す。

 従来、高い独立性が保障されてきた弁護士にも法務省という監督官庁ができる恐れが出てきた。

 弁護士でもある岡村久道・近畿大講師(コンピューター法)は「官僚のサジ加減で何でもできかねない枠組みに変わりない」と懸念を示した。

 主務大臣が権限を行使する際の歯止め策も今後論点となりそうだ。

 一方、加藤氏は消費者の立場から「個人情報は件数や目的にかかわりなく保護されるべきで、与党案は保護の実効性が十分でない。また、本人同意の条件が緩すぎる」と話した。

■著述業を適用除外 内部告発保護に疑問

 与党案は、義務規定の適用除外対象を拡大した。EU(欧州連合)は報道、文学、芸術目的の適用除外を指令しており、今回新たに「著述を業として行う者」が「著述の用に供する目的」についても、法規制の対象から外すことにした。

 また、旧政府案が義務規定の除外対象を「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関」としていたが、フリージャーナリストを念頭に報道機関には「報道を業として行う個人を含む」との文言を加えた。ただし「出版社」の明記は与党案でも見送られた。個人名簿の出版などを「報道」に含めることへの抵抗が強かったためだ。

 さらに義務規定の対象となる個人情報取扱事業者が、報道機関や学術研究団体など第三者に情報提供する場合も「主務大臣は権限を行使しないものとする」と新たに明記した。法規制で、内部告発などが出にくくなることに配慮したものだ。

 これに対して、田島教授は「行政権限が及ばないことを明記したことは意味はある」と評価したうえで「第三者への提供が原則違法であることには変わりなく、抑止的な効果を生む。明確に除外すべきだ」と指摘する。

 漆原氏は「第三者提供を例外とすると、報道や学術などの目的以外での提供も適用除外と解釈される恐れがあるためだ」と説明している。

■「報道」を定義 「枠」はめて規制も

 与党案で注目されるのが新たに加わった報道の定義。日本の戦後立法では初めて報道の内容が法律で定められることになりそうだ。

 与党案では、政府の国会答弁を踏襲し「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること又(また)は客観的事実を知らせるとともにこれに基づいて意見若(も)しくは見解を述べることをいう」と定義した。

 政府・与党側は「報道の定義があいまいで、主務大臣の権限が恣意的に行使される恐れがある、という批判に応えた」と説明する。

 田島教授は「報道の定義を狭く設定し、それ以外を規制しようという意図が見え隠れする。行政機関が権限を発動できる構造こそが問題だ」と話し、吉岡氏も「報道の在り方が今後どうなるか分からない中で一定の枠をはめるというのはおかしい」と批判する。(毎日新聞)
[12月17日1時32分更新]

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