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「メガバンクの誤算」と長銀判決文(nikkei.bisplusより)
投稿者 Gaia 日時 2002 年 11 月 19 日 09:26:24:

(回答先: 外資系ファンドの実態(経済コラムマガジンより) 投稿者 Gaia 日時 2002 年 11 月 19 日 09:02:26)

【メガバンクの誤算〜長銀問題〜】
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_kimura13
(抜粋)

中公新書から刊行されている「メガバンクの誤算」という新書だ。著者は箭内昇氏で旧長銀の経営陣を真っ向から批判した最期の改革派という噂を仄聞したことがある。

不良債権問題の現実を直視せずに、ペイオフ延期だけに固執している愚を思い知らされるだろう。

 箭内氏は、近年の経緯を事実に即して克明に記している。例えば、1992年、日債銀が関連主要ノンバンク3社に対して、他行に金利減免の要請をしたときに、メインバンクの責任を果たさないという掟破りに対して、「日債銀いじめ」が湧き起こった。

 『この日債銀いじめをみた銀行経営者は、自分の関連ノンバンクや自行のメイン取引先についての金融支援を他行に要請することだけはなんとしても回避しようと固く誓ったに違いない』と箭内氏は当時を振り返る。そして、『だが、このとき固めた「誓い」が後の不良債権問題先送りの出発点であり、最大の要因になった』と断罪している。

 そうした中で、『大手銀行の財務担当者間では不良債権額トップの汚名だけはなんとしても避けたいという思惑が強く、水面下で陰湿な「不良債権隠し競争」が展開した』のだが、『実質的に破たんした取引先に対して償還期限延長の変更契約を結んで金利だけを支払わせた』り、『資金繰りが行き詰まった企業に追加資金を融資して元利金を支払わせた』のだという。これは外部の銀行アナリストによる分析ではない。当事者の赤裸々な告白なのだ。


◆政治が打ち砕いた金融界の常識

箭内昇氏の「メガバンクの誤算」を読み進むと、さらに問題が悪化していく様がみえてくる。例えば、95年の兵庫銀行の破たん処理である。資産量トップの第二地銀だった兵庫銀行は、バブル時代の放漫経営で行き詰まり、93年6月から吉田正輝元銀行局長を社長に迎えて再建中のはずだった。しかし結果は、3兆5600億円の貸出資産のうち1兆5000億円が不良債権というボロボロの惨状。

 箭内氏は、このときの事後処理が現在に続くモラルハザードを招いたのだと厳しく指摘する。具体的には、『もっとも驚いたのは吉田社長の経営責任が社長辞任と退職金辞退だけですまされたことであった』と当時の心境を吐露し、『「公的資金を導入しても責任をとらなくてよい」という意識を脳裏に刻んだはずだ』と原罪を問うている。

 その直後の住専の破たん処理もひどかった。当初案は、母体行は全額債権放棄をした上で、農林系も1兆2000億円を負担するというものだったが、自民党は農林系の負担を半分以下の5300億円に削った上で、残りは公的資金を注入するという強引な処理案で強行突破したことをご記憶の方も多いだろう。

 この事件における、『農林系の負担する5300億円は債権放棄ではなく、住専から一度全額償還を受けた上で改めて贈与するという奇妙な方法だった。「農林系には焦げ付きなどなかった」と強弁したのである』という箭内氏の指摘は鋭い。確かに今から振り返っても住専処理は、『金融の原則を踏み外した最悪の処理』であった。この処理に関して、当時、『柳沢伯夫現金融担当相も自民党が設置した系統金融プロジェクトチームの座長として農林系擁護の急先鋒であった』ことは、念のため指摘しておこう。

 箭内氏は、この経緯を振り返って、『不良債権という純粋な金融問題が政治の道具になり、結局最後は政治家も官僚も手におえなくなって放り出してしまったというのが現在の銀行危機である』と喝破している。『金融界の常識は政治力によって見事に打ち砕かれ、大手銀行は以後メイン取引先の不良債権処理に対する意欲を完全に失い、問題先送り路線を走るようになったのである』との記述は真実だけに悲しい調べに満ちている。

 一度堕落してしまうと、後は苦界に堕ちていくだけである。『金融当局は、不良債権の実態を把握し、地価がさらに下落して銀行の経営がますます圧迫されるのを十分に予見しながらも、余力のある銀行に銀行界全体の損失を割り振るという奉加帳スタイルの処理策を強行して銀行界全体の体力をそいでいった』し、『銀行サイドも不良債権問題の深刻さを認識し、抜本的処理に着手しなければ危機を迎えることを予見しながら、業界内のカルテルを強化することによって展望のない逃げ込みをはかった』。そして、『不良債権問題は国家ぐるみの先送り構造に陥っていった』のであった。


◆不良債権問題「3つの教訓」

 さらに次があるから恐ろしい。箭内氏に拠れば、98年8月の長銀破たんから以降の期間は、『当局も銀行も国益を損ねることを明確に認識しながらひたすら組織防衛に走った「国家的背任の時代」』なのだという。『当局は破綻した長銀を特殊例外扱いすることによって生き残った銀行を無理やり「健全銀行」に仕立て上げ、問題の本質を隠蔽することで大手銀行の不良債権処理を決定的に遅らせたのである』と一刀両断。世の中では「銀行に厳しい」とみられがちの私よりも、一段と厳しいご託宣だ。

 正鵠を得た箭内氏の指摘はあまりにも鋭い。金融当局者と銀行経営者の臓腑を抉っている感がある。金融の裏と表を究めた箭内氏は、不良債権問題に関して、重大な教訓を3点指摘している。

 まず第1の教訓は、『輸血(融資)だけで生き延びている企業は早期処理しないと傷口を広げる』ということ。しかし、箭内氏も認めているように、『大手銀行はその後も死に体の関連会社やゼネコンなどに輸血を続けて不良債権額を膨らませた』のが実情だ。

 第2の教訓は、『不良債権の隠蔽は麻薬の恐怖』ということだ。この点に関して箭内氏は、『長銀が破綻し、その不良債権の実態や「飛ばし」についての詳細が報道されるにつれ、ほとんどの大銀行経営者は規模の差こそあれ、自分の銀行が長銀の相似形であることを明確に認識したはずだ。しかし、大手銀行はいまだに合法的な飛ばしを続けている』と証言する。その詳細については、原本を読んでいただきたいが、未だに「飛ばし案件」や「まぶし案件」が不良債権額を膨らまし続けているという箭内氏の指摘に背筋がゾッとする。

 第3の教訓は、『ひとたび「健全銀行」の認定を受けると、金融当局も銀行もかえってその後の不良債権処理が困難になる』ということである。その結果、未だにわれわれは銀行危機の真っ只中にいる。『当局は行政面で何らの軌道修正することもなく「健全路線」を強引に突っ走って、業界全体を危機に陥れた。大手銀行はもっと悪質だ。不良債権の実態を完全に把握し、公的資金導入が不可欠であることを十分認識しながら「健全銀行」の仮面をかぶって国民をあざむいた』という箭内氏の怒りは悲しいくらいに正当だ。

 

 

【金融問題を語るなら、まず、長銀事件の判決文を読め!】
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_kimura14

金融問題を論じる多くのエコノミストたちに是非とも読んでいただきたい文章がある。

◆当たり前の基本知識を理解しないエコノミストたち

 「証券取引法が、……会社の概況や経理の状況等その事業内容に関する重要な事項を掲載した有価証券報告書等の……開示を求めている趣旨は、現代社会における企業の資金調達手段として重要な機能を担い、かつ、その経済活動の基盤となっている証券市場において、投資家が、その自主的な判断と自己責任に基づき安心して有価証券の売買を行うことができるようにするためには、投資等の判断等をするに当たって必要不可欠な上場会社の財務内容等に関して客観的でかつ正確な情報の提供を受ける必要があることに基づくものであり、上場会社によってその財務内容の重要な事項に虚偽の情報が混入させられることは、多くの投資家の判断を誤らせて経済的損失を被らせるだけでなく、証券市場に対する投資家の信頼を失わせ、ひいては我が国の経済にも重大な悪影響を与えかねない」

 どうだろう。金融論の初級教科書を読まされているという感じだろうか。それとも、「そんなことは当り前だ」という反応だろうか。

 この文章の出自を答える前に、もう一つ、次の文章を読んでもらいたい。

 「商法において、利益の配当をするに当たって一定の配当可能利益の存在を要求している趣旨は、株式会社に対する債権を有する債権者にとっては、会社が保有している財産が唯一の担保であるため、安易な資本の流出を防止することによって債権者の利益を保護する必要性が高いことに基づく」

 これまた商法の教科書から引用したような印象を与えてしまうかもしれない。しかし、商法を学んだ者であれば当り前のこの基本知識を理解しているエコノミストは驚くほど少ない。

 じつは、この2つの文章、どちらとも出自は同じである。

 日本長期信用銀行の粉飾決算事件に関して、元頭取の大野木克信らは証券取引法違反と商法違反の罪に問われてきた。そして9月10日、東京地裁は、大野木被告に懲役3年、執行猶予4年を言い渡した。2つの文章は、そのときの判決文から引用したものだ。

 川口宰護裁判長は、「証券市場に対する投資家の信頼を裏切り失墜させたことは明らかである」と断じ、「巨額の違法配当を実施し会社財産を流出させたことは、会社財産及び債権者らの利益を危うくした誠に重大かつ悪質な犯行といわざるを得ない」と判示した。

 川口裁判長はこう解説している。

「金融機関においては、一般企業以上に公共性が強く、企業経済活動をはじめとする国民経済の基礎となる重要な役割を担っていることからして、より高度な企業倫理が要請されることに加え、本件当時は、バブル崩壊に伴う景気の減退が続き、その原因が金融機関における多額の不良債権処理の遅れにあると指摘され、その早期処理が喫緊の課題とされていた時期に当たり、それまでの裁量的な行政指導による金融行政から透明性の高い客観的な基準に基づく行政処分による金融行政に転換するに当たって、金融機関の自己責任が強調され、それまで以上に自己責任の強化が求められていた中で、主要金融機関の一角を占め、長期信用銀行として国民の信頼を得ていた長銀の経営者であった被告人らが巨額の不良債権の隠蔽を図ったことは、誠に悪質な犯行と言わざるを得ない」

 どうだろう。粉飾決算は立派な犯罪なのだ。わが国のエコノミストは、この点に関する理解が決定的に欠けている。エンロンやワールドコムの粉飾決算を責めるのに、長銀に代表される邦銀の粉飾決算については口を拭っている。極めて場当たりで無責任な評論だ。

◆資産査定通達違反は粉飾決算

 いずれにしても、この判決文を冷静な気持ちで読める銀行頭取はそうおるまい。もっとも、ひょっとすると、「世の中の仕組みを知らない裁判所が暴走しおって……」くらいの受け止め方をしていらっしゃるのかもしれない。

 非常に重要な判決なので、その内容を吟味しておこう。争点は、粉飾決算か否かという点に尽きる。

 となれば重要なのは会計である。財務諸表の会計処理基準については、商法の規定が適用される。そして金銭債権の評価に関し、商法285条の4第2項は「金銭債権に付取立不能の虞あるときは取立つること能はざる見込額を控除することを要す」と定めている。

 そして、いかなる場合が同条項にいう「取立不能の虞あるとき」に当たるのか、また、「取立つること能はざる見込額」をどのように算定するのかについては、商法第32条2項の「商業帳簿の作成に関する規定の解釈に付いては公正なる会計慣行を斟酌すべし」との規定に従うことになる。

 この「公正なる会計慣行」に当たるものとして、企業会計原則・同注解が挙げられるが、同様に、金融当局が示している決算経理基準も、「公正なる会計慣行」に当たると解せられる。

 さて、平成10年4月から金融機関の健全性確保のために早期是正措置制度が導入され、金融行政当局が、各金融機関の自己資本比率に応じて業務改善計画の提出等の是正措置を発動することになった。これに伴い、自己資本比率算出の前提として、大蔵省大臣官房金融検査部から資産査定通達が発出され、同年3月期末決算から、これらの基準と整合性を有する適正な自己査定基準を策定した上で自ら資産査定を行い、不良債権を含む貸出金等を回収可能性に応じて分類し、その結果に基づいて従来にも増して適切な償却・引当を行うことが求められた。

 この資産査定通達は、貸出金等の回収不能見込み等を判断する上で合理的な基準であり、当時これに代わる合理的な基準は存在しなかった。したがって、この通達は「公正なる会計慣行」に相当し、これらの基準に違反する会計処理に基づいて貸借対照表等を作成することは、有価証券報告書上の財務諸表の作成方法に係る規範違反となる。要するに粉飾決算とみなされるわけだ。

 早期是正措置制度は、不良債権を早期に処理し、バブル経済の崩壊で低下したわが国の金融システムの機能回復を図るとともに、市場規律に立脚した透明性の高い金融システムを構築することにより、その安定化、健全化を成し遂げるために導入された制度である。その背景に鑑みれば、この早期是正措置制度を有効に機能させるために策定された資産査定通達等の趣旨に反する会計処理は許されるはずがない。

 そういう状況下、長銀は、関連親密先は一般先と異なるとして、「経営支援先」「経営支援実績先」「関連ノンバンク」という債務者区分を設けた上、これらの関連親密先は、長銀が支援を続ける限り、経営破綻に陥る可能性は極めて小さいからという理由で、非常に甘い査定を適用していた。それが問題視されたのだ。具体的には、第一ファイナンス、エヌイーディー、日本リース、ビルプロ有楽エンタープライズなどが挙げられ、その内容の杜撰さが詳細に立証されている。


◆巨額の不良債権知りつつテクニック弄する

 長銀と関連ノンバンクは、バブル期に不動産関連会社等への融資を増大させたため、バブル崩壊とともに多額の不良債権を抱え込むに至った。その後も不良債権の抜本的処理を図ることなく、赤字決算を回避する目的で受皿会社を設立して「不良債権飛ばし」をするなどして不良債権処理の先送りを続けてきた結果、大野木氏が頭取に就任した平成7年4月ころには不良債権額が巨額に上っていたとみられる。

 例えば、同年7月10日に開催された常務会において報告された長銀の関連会社27社の不良債権額は合計で1兆4334億円に及んでおり、長銀リース等の関連ノンバンク6社の不良債権だけでも9905億1700万円もあって、処理しなければならない不良債権額が8908億円にも上っていた。このとき、大野木氏が「9000億円の処理をすぐにはできない」旨の発言をした記録が証拠として残っている。

 また、平成8年4月に大蔵省による金融検査が実施される直前に開催された会議の資料には、「査定後(最悪ケース)」の場合には即刻償却しなければならない不良債権額(以下、W分類)が1兆1256億円と示されていた。

 さらに、MOF検での検査結果を受けて事業推進部担当者が作成し、経営陣に説明した「今後の不良資産処理について」と題する資料の中にも、関連ノンバンク7社について「実態ベース(現時点において当行として本音ベースで自己査定した場合の分類数字)」の数値として、W分類が1兆608億円と記載されていた。

 また、97年度から99年度までの3ヵ年の中期計画が策定される直前の平成9年2月の会議の席でも、7000億円から1兆円あると見られていた。さらに、同年12月の会議における社員向けの不良債権処理方針でも、「関連親密先の損失を完全に一掃するには1兆円規模の手当が必要で、当面はこれを一掃出来ないので抱えていかざるを得ない」との説明が行われていた。

 要するに大野木氏らは、少なくとも1兆円前後の処理を要する不良債権があることを十分認識しながら、意図的にその会計処理を怠ったのだ。その事実を否定することは難しい。

 ちなみに、平成9年4月下旬から5月上旬にかけて、長銀経営者に説明した「早期是正措置への対応と今後の不良債権処理について―不良債権処理3ヵ年計画―」という資料には、自己査定に関して「関連・親密先については、日本リースの扱い等無理をしているところがあり、会計士から相当意見が出てくる可能性がある」と記してあったという。また、償却・引当に関しても、「関連・親密先については引当率の考え方について会計士と相当議論になることは必至」と指摘していた。

 巨額の不良債権があることを知りながら、償却・引当を避けるために、諸種のテクニックを弄してきたことが白日の下に晒されたわけだ。

 前回のコラムで、箭内昇氏の「メガバンクの誤算」(中公新書)を紹介し、『大手銀行の財務担当者間では……水面下で陰湿な「不良債権隠し競争」が展開した』中で、『実質的に破たんした取引先に対して償還期限延長の変更契約を結んで金利だけを支払わせた』り、『資金繰りが行き詰まった企業に追加資金を融資して元利金を支払わせた』ことを示しておいたが、その事実が裁判でも立証されてしまったのである。

 川口裁判長は、明らかになった事実をとりまとめて、この事件の本質を次のように説明している。じつは、ここで触れられている点は他の邦銀にも当てはまる不良債権問題の核心である。

「本件は、……早期是正措置制度が導入されるに当たり、……適切な自己査定を行い、不良債権について適切かつ妥当な償却・引当を実施した上で、客観的かつ正確な財務諸表を作成されることが期待され、かつ、義務付けられていた時期において、長銀の頭取……らが、……多額の不良資産を生じさせてしまった関連ノンバンク等を多数抱えている事実を隠蔽し、長銀に対する早期是正措置の発動を回避する意図から、……資産査定通達……の許容する範囲を逸脱した自己査定基準を策定して不良資産額を過少に積算した上、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表及び利益処分計算書に過少な当期期処理損失を計上した有価証券報告書を作成……するとともに、株主に配当すべき剰余金が存在しないのに違法に株主に多額の配当を実施したという事案であって、その粉飾額は3100億円余りで違法配当額も71億円余りと多額に上っている」


◆健全銀行の仮面かぶり国民をあざむく

 もっとも、川口裁判長の指弾は長銀ひとりに向かっているわけではない。重要な部分なので引用しておこう。

 「被告人大野木が代表取締役頭取に就任した時には、既に巨額の不良債権を抱え込んでしまっていて、その処理は容易な状況にはなかったと言える。そのような状況の中で被告人らは、何とか住専処理を実行したものの、その後は、株式市況の低迷で不良債権処理の財源となる有価証券の含み益が減少する一方で、早期是正措置制度の導入に当たってBIS比率を確保し、かつ、長銀に対する市場の信頼を繋ぎとめる手段としての配当を続けるという苦渋の選択をせざるを得なかった側面があることも否定できない。その意味では、長銀の厳しい財務状況の中でその経営陣の中核となり、極めて困難な舵取りを委ねられた被告人らの立場には同情すべき余地があり、被告人らだけを非難することは失当と言える」

 この部分は、不作為の罪を重ねて、病状を悪化させ続けている金融当局者に心して読んでいただきたい箇所だ。わが国の金融当局は、業界ぐるみで罪を犯しているのだ。その点については、箭内氏も指摘していた。前回のコラムでも紹介したが、改めて読み返しておきたい。

 箭内氏は、「メガバンクの誤算」において、『金融当局は、不良債権の実態を把握し、地価がさらに下落して銀行の経営がますます圧迫されるのを十分に予見しながらも、余力のある銀行に銀行界全体の損失を割り振るという奉加帳スタイルの処理策を強行して銀行界全体の体力をそいでいった』と記述し、『銀行サイドも不良債権問題の深刻さを認識し、抜本的処理に着手しなければ危機を迎えることを予見しながら、業界内のカルテルを強化することによって展望のない逃げ込みをはかった』と断じた。そして、『不良債権問題は国家ぐるみの先送り構造に陥っていった』と慨嘆している。

 『長銀が破綻し、その不良債権の実態や「飛ばし」についての詳細が報道されるにつれ、ほとんどの大銀行経営者は規模の差こそあれ、自分の銀行が長銀の相似形であることを明確に認識したはずだ。しかし、大手銀行はいまだに合法的な飛ばしを続けている』と箭内氏は証言する。『当局は行政面で何らの軌道修正することもなく「健全路線」を強引に突っ走って、業界全体を危機に陥れた。大手銀行はもっと悪質だ。不良債権の実態を完全に把握し、公的資金導入が不可欠であることを十分認識しながら「健全銀行」の仮面をかぶって国民をあざむいた』という箭内氏による告発の真否が裁判によって明らかにされるのはいつなのだろう。

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