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http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/1827/111.html
軍事費に表れぬ大軍拡の脅威
次に中国の暗部を構成する軍の増長ぶりを見よう。
中国海軍はいまや「沿岸パトロール」のレベルから、「海洋巡航隊」レベルまで既成事実化している。このうえ空母二隻体制となると、日本海からインド洋までの海上覇権が確立し、相対として米軍のパワーは格段に縮小することになる。
今年三月二十一日には誘導ミサイル搭載の駆遂艦「ハルピン」、「旅大」と補給艦が、米国海軍最大のサンディエゴ基地に堂々と寄港した。「ハルピン」は一九九六年三月の台湾海峡での実弾演習に参加している。中国艦隊の米国寄港は初めてのこと、長距離航海能力を見せつけた。
増強するのは海軍力だけではない。スホイ27も中国はロシアから六十機輸入して実戦配備しているが、さらにこれをライセンス生産する契約を交わし、西暦二〇〇三年ごろには「スホイ27三百機体制」を構築する。あまつさえロシアからバックファイヤー超音速爆撃機を四機導入した。これは可変翼、戦闘行動半径だけでも二千二百キロというスグレモノだ。 これだけの陣容であれば米国製F16百五十機、仏製ミラージュ二〇〇〇六十機を持つ台湾とも空中戦で互角に闘えるうえ、在韓米軍のF16、日本のF15百七十七機を牽制することもできる。新鋭次期戦闘機XXJの開発も計画中とされる。
そうなれば二十一世紀にアジアの盟主としての中国が実現することは確実となる。
ところが驚いたことに、いま列記した大軍拡路線の内容、実は国防費の一五・四%増の「軍事費」には計上されていないのである。
中国が公表している「国防費」の内訳は兵士の給与、食糧費、宿舎、基地の維持費に加え、軍事演習のコストだけといってよい。「研究開発費」(R&D)は中国でも膨大な額であるが、そのほとんどは他の官庁の予算で処理されている。
いま中国は一万三千キロの射程を持つ核ミサイルを持っており、日本ばかりか米国のワシントンを完全にカバーできる。保持する核弾頭はすでに三百八十発内外と見積もられている。
しかし中国の国防費には、こうした核兵器および開発費は含まれていない。
ロシアから購入したほとんどの新兵器も輸出入アカウントの中で処理されており、国防費には算入していない。兵力の鉄道輸送費なども、他の省庁の予算に廻されている(それどころか軍輸送の特権でおさえた鉄道便を、商社やメーカーの物品輸送に提供して、ちゃっかりマージンを稼いでいる)。
軍需工場の一部を外国との合弁として「民生品」を作っている。銃、大砲を作っていた軍需工場で生産した合弁シェアの利益も、もちろん除外してある。
軍直営のホテル、レストラン、工場経営などのアルバイトの売上や、基地内で飼育している牛豚、野菜栽培などの副食費も別である。兵器密輸などの非公式ビジネスの収益も当然のように軍幹部のポケットに入っている(昨年、米国のFBI囮操作で発覚したAK47二千丁の密輸事件では中国国有企業が関与していた)。
こんな国の国防費を、人事院勧告による日本の自衛隊の公務員としての給料と比較して「日本の国防費は突出している」などという。いかにナンセンスな論議であることか。台湾の蒋仲苓国防相は「公表された数字の二・五倍」が実際の中国の国防費だとしたが、これだってまだまだ遠慮した数字に過ぎないのだ。欧米アナリストのなかには十倍から十三倍と分析するものが少なくない。
軍の高官を懐柔できぬ江沢民
それにしても江沢民政権は改革開放路線を継承したはずなのに、これほどの軍の突出に矛盾を感じないのか?
江沢民は党と国家の「軍事委員会主任」だが、軍歴のないテクノクラートであるため、軍の高幹を懐柔しえない。党総書記に加え、八九年十一月に小平からこのポストを譲られたとき、江沢民は震えるほど畏まっていたという。劉華清はケ小平の信任厚く、張震は国防大学学長の経歴から軍幹部の尊敬を集める。遅浩田は訪米して「天安門での死者はゼロだった」と言い放つ剛の者だし、張万年は台湾侵攻の急先鋒だ。戦功に輝く副主任の四人(劉華清、張震、張万年、遅浩田)は江沢民など、なにほどにも思っていない。
ケ小平の目の黒いうちにと急いだ政権づくりも、何とか上海閥で周囲を固めたものの、ライバル各派が団結したら、江沢民の派閥などたちまちにして吹き飛ぶくらいの力でしかない。
だからこそ軍の帰趨がポイントになる。各派が軍の取り込みにしのぎを削り出したのは、こうした理由による。
軍は軍でこうした状況を逆手にとってにとって、力の拡大に努める。つまり各派が軍に決定的影響力をもたないばかりか、ケ小平の植物人間化とともに軍に擦り寄る態勢が露骨になったのをよいことに、ここぞとばかりの軍拡路線への暴走を始める。軍事費を抜け目なく各派に了承させる。台湾へミサイル試射してハイテク兵器装備、近代化のデモンストレーションをおこなったのも、タカ派の存在を見せつけておく必要があったのである。
それにしても、この軍備の拡大はどこまで続くのか?
まず第一に中国の過去九年間にわたる二ケタ増の軍拡は、GDP成長率一二から一三%を維持するという、高い経済成長に支えられてきた。これが来年度には一〇%を切ることになる。
近い将来、六%台の成長率にダウンするとなれば、物理的にもこれ以上の国防費の増強は難しくなる。旧ソ連が天文学的軍事費に耐え切れず、ついにパンクしたように、将来、クラッシュが待ち受けていないとはいえないだろう。
第二は軍の性格だ。「党に従属する軍」というマルクスレーニン主義テーゼが全人代で再確認されたことで、近未来の矛盾を深く胚胎した。
もし中国が近代国家を目指すのであれば、「国家のための軍」に脱皮すべきであり、実際に下士官クラスには国軍への性格替えを模索する動きがある。八九年六月四日天安門のあの虐殺を、正規軍が始めひどく躊躇したのも、軍は国家に従属すべきだと多くの若手兵士が思っている証拠であろう。
第三は、江沢民に辞令を発令されたからといって、幹部が江沢民に堅い忠誠を尽くすほど、ことは単純ではない。
中国人の怨念の深さ、面従腹背ぶり、裏切り、その謀略、大胆さは日本人の想像を絶するものがある。
「黒社会」は半警察、半ギャング
それが次の問題、マフィアの暗躍につながるのだ。
現代中国における「黒社会」(マフィア)は、「半ば警察、半ばギャング」だ。かつて黒幕・杜月笙のように裏と表の権力をともに握るのである。
彼らは「公定価格と市場価格との格差を利用して暴利」をむさぼり、詐欺、窃盗、密輸、売春であれ、はては殺人、放火、拉致、恐喝、何でも怖い者なしという力を持つ。
武装警察を増強し、取り締まりにあたっているのに犯罪が少しも減らないのは、共産党幹部とマフィアが結託しているからだ。
マフィアの興隆は、@商業都市の膨張A流民群の形成(没落した地主・商人・流民の都市への流入)B社会規範の混乱と喪失によって起こる。したがって、中国共産党こそ黒社会の生みの親なのである。
かつて黄巾党の乱、白蓮教徒の乱、太平天国の乱、すべて同じ体質からであった。アナーキーを生み、やがて中央政権そのものを覆す。中国共産党も辛亥革命と日中戦争という社会混乱の中から巧妙に権力を掌握した。黒社会と同じ本質を中国共産党はすべて備えている。
かつての革命劇がそうであったように、もし民主グループがマフィアの力を借りて権力を倒そうとするなら、マフィアはむしろ共産党を支援し、民主グループと敵対することになろう。中国の本質はここにある。
日本のマスコミがいつも中国に対する見通しを誤るのも、こうした中国人の人間性を理解しないものが増えたからである。
表裏を見通せない日本の指導層
中国と戦争経験のある世代が指導者だった戦後しばらくは、中国の表裏を見抜く眼力を備えていた。チャイナ・ウオッチャーもしっかりしていた。
ところが戦争を知らない層が増え、まして軍経験ゼロ、中国の狡智な人々と交わったことのない新しい世代がチャイナ・ウオッチャーとなりだしてからは、米国留学仕込みの「数字」と「データ」重視の分析に傾きだした。
日本のマスコミを占拠する中国論の多くがこれでは、軍拡中国の中心にある人間の野心や本物の狙いが分かりにくい。 北京の大使館に加え、上海、成都、広州、瀋陽の四つの領事館の警戒を強化し、スパイの防止に努めだすなど、データ重視の米国でさえ、以前より中国への警戒を強めている。
各派の微妙なバランスの上に辛うじて乗っている江沢民が他派を懐柔するには、軍もマフィアも巨大になりすぎた。繁栄する中国の舞台裏で、闇の世界が日増しに増長している事実はまさに不気味である。 (完)
《『月刊日本』8月号より原文通り転載》