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(1) なぜ沖縄に『エセックス』がいたか
『エセックス』は戦車や装甲車、兵員を積んで敵前上陸作戦を行なう米海軍でも最新鋭の強襲揚陸艦だ。揚陸艦といっても、広い甲板を持ち、最大で20機のハリアー攻撃機を搭載できる4万トンの空母でもある。一朝有事の際には、甲板には42機の大型ヘリとハリアー6機が並び、約1800人の海兵隊の上陸部隊が乗り込む。敵地の沿海に着くと、船尾の大きなハッチが上下に開いて中からホバークラフト型の上陸用舟艇が発進する。
本誌は1月16日に母港・佐世保を出航して以来、所在がつかめなかったエセックスを沖縄でキャッチした。ホワイトビーチ軍港だ。
同軍港は嘉手納基地に駐留する米海兵隊が出動する際に使われるが、付近に集落はなく、周囲は米軍への提供水域として一般の船舶は運航を制限されている。いわば陸の孤島であり、どんな軍艦が寄港しているのかが知られることはほとんどない。本誌取材班が目撃したのは2月1日の土曜日だったが、基地上空には大型ヘリが低空で飛び交い、緊張したムードの中でエセックスへの物資搬入作業が行なわれていた。
今年に入って強襲揚陸艦が慌ただしく活動を始めた真の目的は何なのか。元陸上自衛隊二佐で幹部学校教官(戦史、軍略)を務めた軍事評論家・高井三郎氏はこう分析する。
「砂漠地帯のイラク侵攻に上陸作戦は必要ありません。隣国のサウジアラビアやトルコから地上部隊を進めればいい。たとえ強襲揚陸艦を派遣しても、診療所なども備えているので、後方の洋上基地として使うぐらいでしょう。むしろエセックスが訓練航海をしているのは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)をにらんだ軍事演習だと考えるべきです。朝鮮戦争当時にマッカーサーが仁川上陸作戦を展開したように、そもそもエセックスが佐世保に置かれているのも、朝鮮半島での作戦行動を想定しているからです」
(2) 日本は湾岸戦争時のクウェートか
ブッシュ大統領は1月28日の米議会での一般教書演説で北朝鮮をイラク、イランと並べて≪無法者国家≫と名指しし、これまでにない強い調子でこう批判した。
「朝鮮半島では抑圧的な政権が人々を恐怖と飢餓に追いやっている。北朝鮮は世界を欺き、核開発計画によって恐怖を煽り、譲歩を得ようとしている。米国と世界は脅迫には屈しない」――。
実は、一般教書演説の直前、米国防総省(ペンタゴン)からホワイトハウスに、ある作戦概要が提出された。本誌はワシントンでの現地取材で、現在もペンタゴンに影響力を持つ米軍の元将軍に接触することができた。元将軍は、「日米のマスコミは事態を楽観視しすぎているのではないか」と、ペンタゴン内部で練られている対北朝鮮作戦の基本的性格を明らかにした。
「軍の上層部は、単に北朝鮮を牽制するための極東地域の軍備増強にとどまらず、軍事衝突を想定した緻密な作戦を準備している。その前段階として、まず、北朝鮮が軍事行動を起こした場合の影響をシミュレーションした。最前線になるのは、当然、在韓米軍と沖縄の在日米軍だ」
シミュレーションの結果は驚くべきものだった。元将軍が続けた。
「日本も韓国もわが国の同盟国だが、協力体制に重大な疑問が残るとされた。韓国は北朝鮮と同じ民族だ。いざという時、米軍に協力して同じ民族と戦えるかどうかは割り引いて考えなければならない。わが軍はベトナム戦争でそのことを身をもって学んだ」
日本はどうか。
「より不確定要素が大きい。日本は憲法上、軍事行動に対する制約があまりにもありすぎるし、国民にも自衛隊が戦闘に参加することに抵抗感が強い。9・11テロ以来、アメリカ政府は日本に対して憲法改正や核保有など、有事対応を本気で考えるように何度もボールを投げてきたが何一つ変わっていない。
現状を冷静に分析すれば、いざ北朝鮮が軍事行動に出た場合でも、日本はほとんど反撃ができないと見ておくのが妥当だ。ちょうど湾岸戦争でイラクに侵略されたクウェートのような存在だ。北朝鮮もそれをよくわかっているから、韓国よりむしろ、日本に対して攻勢をかけると見ておく必要がある。従って、米軍の対北朝鮮戦略は、日本をクウェートにしないためにはどうするかというところから組み立てられている」
では、米軍はどんな作戦をとろうとしているのか。元将軍はごく短く、核心部分に触れた。
「対北朝鮮作戦では、在韓米軍も在日米軍もすぐに戦闘に巻き込まれる。そこで他にも軍事拠点をつくる必要がある。最大のポイントは、グアムに前線基地を置き、そこから朝鮮半島に攻撃をかけたり、在韓、在日米軍への補給や後方支援を行なう態勢を早急に整えることにある」
元将軍は、それ以上は作戦の細部に踏み込まなかったが、ホワイトハウスには、もっと詳細な計画が報告されているのは当然だろう。
(3) 爆撃と上陸作戦で北朝鮮人民軍を急襲
グアムには米空軍の戦略爆撃機の基地があり、海軍でも原子力潜水艦の母港としている。現在、空軍基地には戦略爆撃機は配備されていないものの、命令が下れば、米本土から『B52』や『B1』、また、『B2』などの最新鋭のステルス爆撃機が短時間で派遣される。
元将軍の証言と符節を合わせたように、アメリカは2月に入って極東への兵力配備を大幅に増強している。
まず在韓米軍の司令部が、すでに中東などへの配置換えが決まっていた兵士約2900人の異動を半年間延期した。それを皮切りに、太平洋軍のファーゴ司令官がラムズフェルド国防長官に在韓米軍の2000人増員、『B52』と『B1』爆撃機をそれぞれ12機、『F15戦闘機』8機などの派遣を要請したと報じられた。国防総省はさらに、現在、横須賀に配備されている空母『キティホーク』を中東に派遣することになった場合、かわりに西海岸からより攻撃能力の高い『カールビンソン』を日本に回すことも検討している。
米紙ニューヨーク・タイムズ(2月4日付)は、
<追加の爆撃機は、偵察機とともに、アメリカ領土であるグアム島に派遣される。ブッシュ大統領が“北朝鮮が核燃料を核兵器使用のために再加工することを許さない”と決定した場合、それをやめさせるためである>――と報じている。
微妙な言い回しながら、爆撃機で核兵器製造をやめさせるとは何を意味するか明らかだろう。2月4日の上院外交委員会に出席したアーミテージ国務副長官も、北朝鮮の不測の事態に備えて爆撃機に待機命令が出ていることを認める証言をした。
前出の軍事評論家・高井三郎氏は、北朝鮮とイラクの関係から、別の視点を提起する。
「金正日は米軍がイラクに釘付けになっている足元を見透かして、核開発を本格化させた。ミサイル輸出も行なっているし、北朝鮮とイラクには裏の軍事同盟というべき結びつきがあると見ていい。その意味で、アメリカにすればイラク攻撃と北朝鮮への武力行使は別のものではなく、つながっていく。戦力的に二正面作戦は難しいといわれるが、そんなことはない。米軍はイラク情勢にかかわらず、北朝鮮を攻撃できる能力を十分に持っている」
高井氏は、想定される米軍の作戦として、81年にイスラエルが行なったイラク空爆の例をあげる。
同年6月7日、イスラエル空軍機9機がバグダッド郊外にあるイラクの原子炉を奇襲し、一瞬にして破壊した。
「アメリカが北朝鮮に軍事行動をとる場合、同じことをやるでしょう。航空機や巡航ミサイルで核関連施設を破滅させる。ただし、見落とせないのは、北朝鮮が韓国との軍事境界線に大量の軍隊を集結させている問題です。そのため、空爆は核施設だけにはとどまらない。軍事境界線の拠点など500〜1000か所の目標を同時に攻撃することになる」
その準備がまさに進められている。高井氏の分析では、在韓米軍は毎日、停戦ラインの外側に『U2偵察機』を飛ばし、軍事衛星と合わせて目標がどう移動したかをチェックしており、韓国と日本に配備されているF15やF16戦闘機に、空母1隻、そしてグアムに派遣される20機ほどの戦略爆撃機を加えると戦力的には十分間に合うという。
(4) 米高官極秘来日の重大発言
ひょっとして、一番無防備なのは、この国の総理大臣とその閣僚たちかもしれない。
小泉純一郎首相はアメリカの軍事戦略が朝鮮半島有事をにらんで大きく変容しつつあるにもかかわらず、施政方針演説では、
<北朝鮮については、日朝平壌宣言を踏まえ、国交正常化に取り組んでまいります>
――と、通り一遍の言い方ですませ、国民に警鐘を鳴らそうともしなかった。
官邸の情報収集能力も相変わらずお粗末だ。
さる1月24日、アーミテージ国務副長官が来日していたのとほぼ時期を同じくして、米国務省の情報部門の高官が極秘来日し、安倍晋三・官房副長官とひそかに会談をもった。いうまでもなく安倍氏は小泉政権の対北朝鮮外交の事実上の責任者だ。
官邸中枢筋は会談の内容をこう明かす。
「安倍副長官は拉致問題解決のためにアメリカの総合的な協力が得られないかと要請したが、色よい返事はなかった。国務省高官は『北朝鮮はプラグマティックじゃないからわれわれには理解できない』としきりに強調していた」
プラグマティックとは、「実際的な」という意味だが、ここでは要するに“話のわかる相手じゃない”ということだろう。官邸中枢筋が続ける。
「高官はさらにこういった。『米国にとって北朝鮮危機は、すなわち4つある。ひとつは核、そしてミサイル、生物・化学兵器、最後に在韓・在日米軍の安全だ』。今思えば、あれは“もはや話し合いの段階はすぎた。軍事力の行使も辞さない”という意味だったのかもしれない」
そして、小泉首相や福田官房長官、安倍副長官は、前述のようにニューヨーク・タイムズなど米国メディアが太平洋軍の北朝鮮に備えた軍備増強を報じてから、慌てて防衛庁に指示して真偽の確認に走った。対応が遅すぎる。
アメリカにとってイラクは一度戦った相手だけに与しやすい。今回もイラク攻撃となれば、48時間以内に事実上、制圧する短期決戦の構えでいる。それにひきかえ、北朝鮮は外交的にも軍事的にも、“寸止め”とはいかない。金正日総書記には何をするかわからない未知数の部分が多いだけに、アメリカが北朝鮮を正視して、軍事的な一線を踏み越えた場合、徹底的殲滅に進まざるを得ない。逆に北朝鮮も徹底抗戦で反撃するだろう。
その影響は日本にとって対イラク戦争の比ではない。