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■アラブの呻吟
幾つものWHY
アブドルカーデル・ヤーバーニ
イラクに対するアメリカの攻撃が、昨年の四月には敢行される
だろう、という予測が世界中に流れていた。正直なところ私もそ
う思っていた一人だった。なぜならば、アメリカでエンロン社を
中心とする経済スキャンダルが拡大し、ブッシュ大統領とその閣
僚の何人もが名を連ねていたからだ。しかし、周知の通り、それ
は現実のもとはならず、次いで出されたのが九月説だった。結局
それも実際には噂の域を出ず、地域に特別の緊張を生み出すこと
もなく時が過ぎていった。
そしてさらに流されたのが十一月説だった。これはアメリカの
中間選挙向けのものであったが、選挙前の開戦説と、選挙後とい
う説が乱れ飛んでいた。しかし、これも現実にはならなかった。
ウォーモンガー(戦争を待望する人たち)はこれにも懲りず、
次の戦争(十二月から一月の可能性)を噂し始めたのだった。そ
の根拠は国連の査察が一定の成果を出すことであろう、その成果
をアメリカは分析し、イラクに対する攻撃の理由を組み立てるで
あろうというものだった。
イラクが国連に出す、大量破壊兵器開発に関する自主報告書の
分析結果も、アメリカに攻撃の口実を与えるに十分だとされてい
た。イラクが大量破壊兵器開発に関する自主報告書を出したが、
アメリカはそれが不十分かつ不誠実なものであるとクレームをつ
けたものの、それを根拠にイラクに対する攻撃をかけることはな
かった。
そして、ついに十二月開戦説は消え、一月を迎えたが、今のと
ころ開戦の可能性をめぐる予測は頻繁に出されるものの、具体的
な動きと呼べる十分なものは何も示されていない。アメリカは昨
年十一月の段階で、イラク周辺に終結しているアメリカ軍の数を
五万人、あるいは六万人と発表してきた。そして、今にもその数
を倍以上に増やすという情報を流してきた。
だが実際には、未だに六万人あるいは五万人という数に変化は
ない。それはアメリカが発表している内容とは裏腹に、まだイラ
ク周辺諸国への増派を実現していないということなのだ。
カタールの基地を整備し、今にでも攻撃が可能、とアメリカは
何度となく十二月の段階で発表したが、実際にカタールのウデイ
ド基地が使用可能な状態になっている、という話は確認が取れな
いままになっている。多分、空軍基地の整備にはまだ時間がかか
ると見るべきではないのか。
周辺諸国では、アメリカ政府の元気のいい(?)開戦に関する
発表とは裏腹に、反アメリカ感情が拡大している。かつて、アメ
リカによってイラクの軍事支配から解放されたクウェートですら、
クウェート国民のアメリカ兵発砲事件が起こっているし、サウジ
アラビアやバハレーンでも同様の状況が見られる。湾岸諸国は押
しなべて、反アメリカ色が濃くなっているということだ。
何故こうまでも湾岸諸国を始めとするアラブ諸国の間に、反ア
メリカ色が広がっているのだろうか。アメリカ自身が言うように
「アメリカは何故こんなにも嫌われるのか」という疑問が湧いて
くる。
この疑問に対する答えは、アラブ人側からすると簡単だ。アメ
リカが自身の持てる力で、あまりにも勝手なふるまいをしている。
しかもそれは公平なものではない。たとえばイスラエル・パレス
チナ問題をめぐっても、アメリカは全く公平な立場をとっていな
いということになる。アラブの多くの人たちはアメリカという国
が基本的に好きであり、未だにアメリカン・ドリームを信じてい
る。従って、もしアメリカがパレスチナ・イスラエル問題で公平
な立場をとってくれるのであれば、今日からでもアメリカを歓迎
すると語っている。彼らに言わせれば、アラブ・アメリカ関係改
善の全ては、パレスチナ問題に帰結するということになるのだ。
そうした中で、パレスチナ問題に加えイラク問題がアメリカと
アラブの距離を遠ざけるようになってきている。サウジアラビア
はもとより、クウェートすらもアメリカによるイラク攻撃を歓迎
し難い状況になってきている。政府は別としても、クウェート国
民の間には、そこまでアメリカはやるべきではない、という考え
方が拡大してきているのだ。
今、アラブの間ではアメリカに対する幾つもの不満が拡大して
いる。それらは以下のような諸点に集約されよう。
(1)一九九一年の湾岸戦争以後イラクによる
アメリカ攻撃の危険性を示す何らかの証
拠があるのか。
(2)アメリカはサッダームフセイン大統領と
ビンラーデンがイデオロギー的に全く相
容れない関係にあることを知らないのか。
(4)イラクがアメリカの治安にとって危険だ
という証拠があるのか。
(5)アメリカ国内にイラクのスリーパーがい
て(?)、イラクが細菌、化学兵器を供
与するという証拠があるのか。9・11
以来彼らによるイラクのアメリカ国内で
の危険な動きがあったのか。
(6)イラクはアメリカ本土に達する射程一万
キロ以上のミサイルを持っているのか。
(7)イラクの周辺諸国はイラクの攻撃を本当
に恐れているのか。またそれを公式に発
表しているのか。
(8)アメリカはテロ撲滅戦争をしたいのか、
それとも大量破壊兵器絶滅を目的とした
戦争を望んでいるのか。
(9)アメリカが大量破壊兵器の廃絶を目的と
するなら、何故イスラエルの大量破壊兵
器については沈黙(黙認)しているのか。
(10)アメリカがイラクの民主化を望むのであ
れば、何故近隣の中南米諸国の民主化を
先に進めようとしないのか。
(11)何故アメリカはイラクと異なり、北朝鮮
に対しては穏健外交による問題の解決を
進めようとするのか。
こうした疑問に対するアラブ人共通の答えは、「アメリカは
イラクの石油を狙って戦争を画策している」ということになる。
読者はこのアラブ人の考えに賛成だろうか。