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安倍晋三、朝日新聞拉致報道 徹底批判!! (週刊文春2月13日号)
投稿者 アーヴ 日時 2003 年 2 月 08 日 00:57:23:

「安倍さん、よく読んで」というタイトルの社説が、1月27日の朝日新聞に載った。社説を使って一政治家への批判が行われたことに、永田町ではみんな驚いた。恐らく私が、朝日にとってよほど触れられたくないところに触れたせいなのだろう。
 内容は、私が友人の議員の応援の際に行なった講演に対する反論だった。書き出しはこうだ。
<安倍晋三官房副長官が講演で朝日新聞の社説を取り上げ、そのような論調が北朝鮮の拉致問題をめぐる交渉の障害になっている、と批判した。
 批判は大いに歓迎だが、誤解や曲解によるものなら迷惑である。>
 では、朝日新聞の論調に対する私の指摘が誤解でも曲解でもないことを、詳しく説明したい。
 私は、まだ父の秘書をしていた88年、有本恵子さんのお母さんの訪問と相談を受けたときから、一政治家として拉致問題に関わってきた。被害者家族の方々の悲しみ、怒りを痛いほど感じてきた。被害者当人や家族の方々になり代わることはできないが、その気持ちの代弁だけはしなければならない、と考えている。
 件の講演の前日、私は家族会の方々と都内で食事を共にした。横田滋さん早紀江さんご夫妻に息子さん、蓮池透さん、増元照明さんたちがいらっしゃった。その席で皆さんから、
「不安を感じている」
 というお話が出た。
「拉致問題の行方よりも、『五人を一度、北朝鮮に戻せ』とか、亡くなったとされている八名の方々について『北朝鮮の主張を鵜呑みにしたほうがいいのではないか』といわんばかりの議論が行なわれていることに、大変不安を感じている」
 というのだった。これはご家族だけでなく、五人の被害者本人の思いでもある。初めて聞く話ではなかった。だが、被害者の五人と家族会の方々が一番苦しい今こそ、政治家の責任で私がきっちり指摘をしておくべきだと思った。

●帰国事業を煽った朝日新聞

 朝日新聞は、先の『週刊朝日』による地村夫妻騙し討ちインタビューに代表されるように、当事者たちの心を平気で踏みにじるような報道を繰り返し行なってきた。平成11年8月31日、社説に「拉致疑惑は国交正常化交渉の障害」と書き、その後の不誠実な対応によって蓮池透さんを激怒せしめ、横田滋さんに親の代からの朝日購読を解約せしめた体質は、少しも変わっていないのだ。
 翌日の講演は時間の制約もあったため、十分に言葉を尽くせなかった。なぜ私が特定の報道機関を名指しで批判したか、ここで改めて真意を述べる。
『「千と千尋」の精神で』と題する朝日元旦の社説は、拉致問題に触れてこう書いている。
<拉致の被害者たちに寄せる同情や北朝鮮への怒りがあふれたのは自然として、そうした感情をあおるばかりの報道が毎日繰り返される。(略)
 日朝交渉を進めた外交官を「国賊」と呼んだり、勇ましく「戦争」を口にしたり、「それなら日本だって」と核武装論をぶったりする政治家も現れる。
 同胞の悲劇に対してこれほど豊かに同情を寄せることができるのに、虐げられる北朝鮮民衆への思いは乏しい。ひるがえって日本による植民地時代の蛮行を問う声は「拉致問題と相殺するな」の一声で封じ込めようとする。(略)
 深まる日本経済の停滞と歩調を合わせるように、不健康なナショリズムが目につくのは偶然ではあるまい。>
 さて、<感情をあおるばかりの報道>というなら、かつて北朝鮮を“地上の楽園”と賛美し、熱狂的に帰国事業を煽ったのは朝日自身ではなかったのかと言いたい。
 また、<核武装論をぶつ政治家>とはいったい誰か? 私のまわり、自由民主党にはそんな人は誰もいない。なぜこういう極端な議論を持ち出すのかと考えると、我々のように原則を貫いて毅然と北朝鮮と交渉を進めようという人たちを、極端論者に貶めようというイメージ戦略にほかならないのではないか、としか思えない。
<同胞の悲劇に対してこれほど豊かに同情を寄せることができるのに>という言い回しは、被害者への同情を皮肉っているとしかとれず、続く<虐げられる北朝鮮民衆への思いは乏しい>もおかしい。
 日本はすでに、120万トンのコメ援助を行なっている。また、イコール北朝鮮ではないが、朝銀信組にも法に則り、1兆円を超える公的資金を投入している。逆に、送金停止など制裁的な対応は何ひとつ行なっていない。
<植民地支配と拉致の相殺>については、昨年9月30日の朝日新聞紙面審議会(掲載は10月7日)において関川夏央委員(作家・早稲田大学客員教授)がいいことをおっしゃっているので、引用させていただく。
「歴史的問題と、平時にもかかわらず現在進行中のテロを並列させるのは見当違いだと思う。全被害者の生死が確認され、生存者の原状回復がなされるまで、テロはつづいている。」
 まさにその通りだ。我々は、被害者の完全原状回復がなければ国交正常化交渉は進まない、という覚悟を北朝鮮に完全に認識させなければならない。拉致は国家機関による犯罪だったと認めたのだから、原状を回復せよと言い続けることが基本なのだ。他人の骨を渡されて「はい、そうですか」などありえない。妥協の入り込む余地はないのである。
 これが我々の言う原則論であり、多くの識者が指摘しているところだ。逆に、日本側が妥協するかもしれないと思わせることは、北朝鮮に誤ったメッセージを送ることになる。彼らは「自分たちは妥協しなくていい」という考えに傾いていくのではないか。
 社説はそのあと、唐突にアニメ映画『千と千尋の神隠し』に話が移り、
<千尋はひとり果敢に、しかし優しく彼ら(註・その前の段落によれば「始末に負えない化け物たち」)と向き合う。そうすることで、逆に彼らの弱さや寂しさを引き出すのだった。
 この地球上にも、実は矛盾と悲哀に満ちた妖怪たちがあちこちにはびこって、厄介者になっている。それらを力や憎悪だけで押さえ込むことはできない。>
 朝日は北朝鮮と優しく向き合い、弱さや寂しさを引き出せという。京都大学の中西輝政教授が『週刊文春』1月16日号で嘆いたように「本気で書いているのだろうか」。
 アニメ映画に出てくる妖怪と北朝鮮を同一視することで、彼らに愛しい子供たちを拉致された家族はどう感じるか。その想像力の貧困さには、暗澹たる気持ちにならざるを得なかった。
 さて、「安倍さん、よく読んで」と題する1月27日の社説は、こう書いている。
<安倍氏は「朝日新聞の元日の社説には『原則論を言うだけじゃなくて、落としどころを考えろ』との論調があった」と発言した。さらに、朝日新聞は北朝鮮が亡くなったとしている8人を「忘れてしまえと同じことを言っている」と断じたのだ。
 安倍氏にはまず、社説をきちんとお読みになったのか、と問いたい。(略)
 もとより、8人のことを忘れろなどとは書いていないし、私たちにはそんなつもりは全くない。「落としどころを考えろ」という短絡的な主張もしていない。(略)
 北朝鮮には原則を譲らぬ構えとともに、アメとムチの使い分けが必要だ。日本の安全を願い、拉致問題の解決を望めばこそ、柔軟な思考の大切さを重ねて訴えたい。
 さて、安倍氏はこの社説もまた「交渉の障害」になるというのだろうか。>
 と挑発に終わる。
 私は、一独立国家に対して朝日のようにアメだのムチだのの言葉を使うのは侮蔑的だと考えるから使わない。だがその言い方を便宜的に借りれば、私はムチ的な対応を何も主張していない。それなら、朝日の考えるムチとはいったい何なのか? あえて問いたいと思う。紙面からは、アメをやれとの主張しか読み取れないからだ。
 私が問題にしているのは、元旦の社説だけではない。朝日が社論として、拉致問題についてどんな主張を繰り返してきたか、いくつかの記事を辿ってみればたちまちわかる。

●偏向する「読者投稿」

 昨年12月8日の「体制転換を望めばこそ──北朝鮮と国交交渉」と題する社説。
<5人の家族の帰国問題をどう解決するか、答えは簡単でない。当事者の気持ちに日朝それぞれの原則論やメンツ、駆け引きも絡んで時間はなおかかるかもしれない。>
 拉致という国家的犯罪を犯した北朝鮮の原則やメンツと、被害を受けた我が国の原則とメンツを、同列に扱っているのである。拉致犯人の原則やメンツとは、いったい何なのだろうか。そして、両者が並び立つ土俵の上で朝日が行司を務めるかの如き姿勢が、基本的に問題だ。続いて、
<大事なのは、打開に向け、日本側も一切の妥協を排すという態度をとるべきではないということだ。感情論に乗るだけでは真の国益を踏まえた外交にはならない。>
「妥協を排すな」ということは、「打開のために妥協をせよ」という意味だろう。「原則論を離れて落としどころを探れ」と、当然論理的にそう読める。そうしないのは感情論だ、と言っている。つまり、私たちの言う原則論は感情論だと、朝日は批判していることになる。
 では、どんな落としどころがあるのか。拉致問題で落としどころというのであれば、「八人については忘れてしまえ」という結論になるではないか、というのが私の指摘だ。
 実は「落としどころ」という言葉を使った記事も、現にある。たとえば11月14日。
<日本政府は、日本に帰国した被害者5人と、朝鮮民主主義人民共和国に残された家族との離散状態も早く解消したい考えだが、妙案はなく(略)落としどころを探るのがより困難になっている。>
 これでは「落としどころを探れ」と主張するのにほかならない。「家族との離散状態」という表現も、まるで日本側にも責任があるかの如き印象を、私などは受けてしまう。
 朝日が「安倍さん、よく読んで」と言うので過去の新聞を読み返してみれば、右のような記事をほかにも数々見つけることができた。
 社説ばかりではない。次に、朝日の読者投稿欄『声』と、読売の投稿欄『氣流』とを比べてみよう。そこには両紙の論調の違いが明確に現れているように思える。五人が帰国した昨年10月15日直後の両紙から抜粋する。まずは朝日の『声』から。
●24日 「子供の立場に配慮必要では」(主婦・45歳)
<今すぐ帰国して、言葉も分からず友達もいない国でマスコミのフラッシュを浴びせられる子供たちを想像すると、切ないです。>
●29日 「拉致被害者の居住の自由は」(会社員・49歳)
<政府が拉致被害者の「永住帰国」を決めたことに大きな危惧を抱いた。今回の政府の決定は、本人の意向を踏まえたものと言えず、明白な憲法違反(註・22条/居住や国籍離脱の自由)だからである。>
 連日こんな調子だ。10月30日には『今月の投書から』と題するまとめのコラムにこうある。
<5人が帰国。そして23日の社会面などで蓮池薫さんが「おれなりの24年、無駄だったと言うのか」と語ったとの報道が、以後の投書の引き金になったような気がします。
「子供の立場に配慮必要では」(24日)、「日朝間の往来自由になれば」(25日)、「永住の
決定で本人の意思は」(26日)
 被害者5人と北朝鮮に残してきた家族の立場になって想像力を働かせた投書です。>
 続いて、同じ時期の読売『氣流』を見る。
●23日 「拉致事件解明に真剣な対応期待」(大学生・20)
<拉致被害者の時間と自由を奪った国家犯罪にも責任ある対処を示せないようであれば、国交正常化への日本国民の納得は到底得られずはずのないことを(註・北朝鮮に)よく考えてもらいたい。>
●26日 「家族含めた帰国、しっかり要求を」(地方公務員・48歳)
<政府が毅然とした態度で、家族も含めた永住帰国を要求するのは当然だ。こうした動きが、今回帰国した五人の問題ばかりでなく、ほかにも拉致された疑いのある多くの日本人や、数百人とされる韓国人拉致被害者の問題解決の突破口となることを願っている。>
 11月3日の投稿欄と同じページには、『10月の読者相談』というコラムがある。
<五人の故郷での家族、友人との触れ合いが伝えられるにつれ、「北朝鮮に戻すべきでない」(都内の男子大学生)「五人は北朝鮮に帰らなくてはならないのですか」(横浜市の主婦)との意見が増えてきました。
 その後、政府が五人を北朝鮮に戻さず、五人の子供らの早期帰国を北朝鮮に求める方針を決めたことについては「当然のこと」(都内の年配男性)「最後まで方針を貫いてほしい」(埼玉県の男性会社経営者)という反応が多数を占めました。>
 新聞をじっくり読み比べる機会はなかなかないが、これほどまでに違う。編集方針によって、朝日の社論に沿った投書ばかりが採用されていると判断せざるを得ない。
 今回の反論について友人の中には、何の得にもならないから止めたほうがいい、という親切な忠告もあった。確かに、選挙にさらされる政治家にとって、大新聞を怒らせるのは怖いことだ。だが私は、言うべきことは言わなければならない、と考え、あえて反論させていただいた。


■このインタビューを読んで 西岡力「救う会」副会長

「安倍先生は、国交正常化交渉の前に五人の子供たちを返せ、と主張しているだけです。死亡とされた八人の安否については、交渉の中でいいと言っている。家族会や我々の立場からすればもっと踏み込んで欲しいくらいなのですが、そんな安倍先生さえけしからんと言う朝日は、ではどうしろというのか。
 昨年の9月以降、拉致問題に対する朝日の論調を批判する声が満ち満ちています。これこそが、健全な民主主義なのかもしれません」


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