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(湾岸戦争、サダム・フセイン、ブッシュ政権、中間選挙、知識人をめぐって)
アンソニー・ディマジオによるインタビュー
『インディ』誌、2002年12月6日
(翻訳:寺島隆吉+岩間龍男+寺島美紀子)公開2003年2月6日
急進的な大学教授であり著名な社会批評家であるノーム・チョムスキーは、マサチューセッツ工科大学で教鞭をとっている。彼は70冊以上の本を書いており、最近のものとしては『ならず者国家:世界情勢における武力統治』"Rogue State: The Rule of Force in World Affairs." がある。最近のインタビューで、チョムスキーは第1次湾岸戦争、サダム・フセイン、現時点におけるブッシュ政権のイラクへの執着、そして中間選挙における共和党の大勝利について論じた。
アンソニー・ディマジオ(D):
ブッシュ政権の対イラク戦争案にはふたつの主な理由があると私はいつも考えてきました。ひとつは、米国の支配下にない中東最後の石油の宝庫を手に入れることです。もうひとつはブッシュが国内で一般労働者に対して行っている政策から米国国民の注意をそらすことです。あなたの御意見では、イラクの石油資源の確保と対イラク戦争が、どれくらい関係しているのでしょうか。また、ブッシュ政権による国民への攻撃から国民の注意をそらすことと対イラク戦争が、どれくらい関係しているのでしょうか。これらふたつのうちで、どちらかがより大きな要因ということはあるのでしょうか。
ノーム・チョムスキー(C):
対イラク戦争についてふたつの主な理由があるということは、一般に広く憶測されていることです。私もその理由についてはその通りだと思います。イラクの石油資源に対する支配を回復することは長年の願いでした。(アクセスではなく支配です。そのふたつは全く違うことです。)9.11は武力行使の口実を与えました。それは米国だけでなく、ロシアや中国やインドネシアやイスラエルや他の多くの国々に対しても同じです。現在国民に対して行なわれていることから注意をそらす必要性は、時期を見れば分かります。その証拠に、それは今度の中間選挙で見事に効果を発揮しました。そこで次の大統領選挙までにイラク攻撃で勝利を収め、次の選挙運動へと進む必要があるのです。
D:湾岸戦争は主にクウェートの石油へのアクセスを確保することが目的だったのでしょうか。それとも、サダムのクウェート侵略に対して懲罰を加えたかったのでしょうか。湾岸戦争は、どんな要因がブッシュ政権にとって決定的要素となっていたのでしょうか。
Chomsky: 第1次湾岸戦争の主な理由は、いわゆる米国の「威信」の問題だと私は考えています。つまりサダムは秩序を無視しました。誰もそのようなことをすることは許されません。マフィアのドンに聞いてごらんなさい。そうすれば的確な説明を受けるでしょう。交渉によるイラクの撤退は可能だったと考えるのはもっともな理由がありますが、それでは問題の核心をついたことにはならないでしょう。もう一度お気に入りのマフィアのドンに聞いてごらんなさい。説明してくれるでしょう。
湾岸戦争の時、サダムを叩きつぶさずにしておいた理由は、公然と率直に説明されています。ニューヨークタイムズの外交関係の特派員トーマス・フリードマンが、米国がクルド人を潰すサダムを支持した時に次のように説明しました。ワシントンにとって「世界で最善のもの」は「サダムが行ったように軍事政権がイラクを支配することです」。しかし、サダムは現在厄介者なので、違った名前の軍事政権である必要がありました。しかし、そのような人物が見あたらなかったので、次善の策として旧友サダム=バクダッドの虐殺者と和解し決着をつけなければならなかったのです。このことについては、当時私が書いたものに多くの資料がありますし、拙著『民主主義の阻止』にも採録されています。それ以来も、さらに多くの資料が出てきています。
D:10年前と比べて、現在の米政権がイラクの石油を確保できると考えているのは何故なのですか。イラクは当時と同じくらい不安定のようですが。湾岸戦争以来、ブッシュ政権のメンバーの気持ちを変えたのは何でしょうか。
Chomsky:当時、米国はイラクを敢えて占領することには消極的でした。それは安定性と何も関係がありません。イラク独裁政権は現在非常に安定しています。当時は他国との連立や国内の支持との関係で、イラクを征服することには消極的でした。先ほども言いましたように、間近に適当なサダムに替わる人物がいなかったのです。現在は状況が違います。
D:聞くところによると、最初の湾岸戦争の時、ジョージ・ブッシュはコリン・パウエルにバクダッドを核兵器で攻撃する計画を立てさせたようですね。もしそれが本当であるなら、米国の外交政策が人道的民主主義的原理(それを私たちの指導者は信奉しているはずですが)に少しも関心がないことを、どうして米国人は認識できなのでしょうか。
Chomsky:核爆撃の計画は知られていません。それは意味がなかったからでしょう。イラクが実質的に無防備であることが前もって知られていました。米国は細菌戦のほうを好みました。そしてそれなら、編集者や知識人が見ないふりをするのが容易です。(他方、もし誰かが電力・水道・下水のシステムを破壊したらシカゴで何が起きると思いますか。)
D:サダムが大量破壊兵器や化学兵器や核兵器を持っているかもしれないことについて、ブッシュ政権のメンバーは本当に関心があると思いますか。彼らはイラクに(現実の問題ではなく少なくとも頭の中で)怯えるのは無理のないことなのでしょうか。
Chomsky:ブッシュが考えていることは(仮に彼が何か考えていることがあるとして)、私には分かりませんが、チェイニーやラムズフェルドは(頭の中の世界だけでなく)実際に外界が現存していることを知っていますし、その地域の人々や政府がサダム・フセインを軽蔑してはいても、彼を恐れてはいないことをよく理解しています。サダムが米国の友人・同盟国として好意を持たれていた当時、彼によって侵略されたイランやクウェートでさえも、彼を恐れていないのです。ただしイラクが大量破壊兵器を持つことは誰も望んでいません。正気である人ならば誰もイスラエルやパキスタンやインドや米国やロシアなどが大量破壊兵器を持つことも望みません。
この問題を扱う最善の方法は、国連決議687号を実行することです。その決議は査察を通じてイラクを武装解除すること(このことについて米国は必死に妨害しようとしてきました)であり、また国連憲章第14条を履行することを要求しています。そしてその決議が持ち出されると、いつも拒否・削除されてしまうのです。なぜなら、それは中東地域の武装解除を要求し、それは間接的にイスラエルの大量破壊兵器WMDの巨大な武器庫の武装解除をも要求することになるからです。この武器庫は米国戦略軍も含め、すべての人々を恐れさせているものなのです。
D:もし石油支配が本当の動機であるならば、ブッシュの口実は詐欺に思えます。もしそうなら、ブッシュはどのようにして道徳的大義を主張する権利があると信じているのでしょうか。
Chomsky:ブッシュはおそらく無関係なのでしょう。しかし彼の周囲の人々には前科があります。彼らはレーガン政権を担っていた人たちです。そういうわけで、20年前に宣言した最初の「対テロ戦争」の時に彼らが行ったことを、メディアや知識人は意図的計画的に無視しているのです。自分たちに責任がある恐怖物語は覚えていない方が都合がいいからです。
人間の行動については、何が起きているのか理解することは難しいことではありません。あなたが並外れた聖人でないならば、人生の中では間違っていると分かっていることもやってしまったことがあるでしょう。おそらく7歳の時にあなたは弟からおもちゃを取り上げ、弟が母親のところに泣いて走って行った時、あなたはそのおもちゃは本当はあなたのもので、弟があなたからそのおもちゃを取ったとか、弟はそのおもちゃは欲しくなかったんだとか言ったのではありませんか。あなたは弟より強かったから、おもちゃを取り上げ、それを持って逃げたのだと自分自身に言いましたか。そんなことはないでしょう?
あなたが世界で国を支配している時、全く同じ現象が起こります。ナチス・ドイツやファシストの日本やソビエト連邦の公文書を読むことは興味深いことです。その指導者たちは、想像し得る最も高い動機から行動をとっていますし、おそらく彼ら自身がそう信じていたでしょう。自らに都合よく考えるようになることは全く容易なことなのです。括弧つきの「責任ある知識人」であること、つまり自分は独立した思想家だと思いながら、卑屈にも権力の僕(しもべ)になりさがってしまう秘密がここにあります。
D:イラク攻撃については、ブッシュ政権は虚勢を張っているだけなのでしょうか。
Chomsky:いや、そうではありません。私が思うに、彼らは無防備の敵に簡単に勝利を収められると信じていますし、それを強く望んでいます。そうすれば彼らは英雄として解放者として胸を張って歩くことができます。それを知識階級は拍手喝采するというわけです。昔から歴史はそういうものです。
D:ブッシュがイラクを話題にした一般教書演説を行ったのは半年以上前でした。なぜ動きだすのにそんなに時間がかかったのでしょうか。
Chomsky:中間選挙の季節が始まる今年の9月までは、イラクは差し迫って重要事ではありませんでした。ですから一般教書演説では、イランや北朝鮮や「国際テロリストの脅威」と同じく、イラクは遠い問題でした。
<アンソニー・ディマジオはイリノイ州立大学3年生で、イリノイ州ノーマルの独立系週刊誌『インディ』の執筆者である。>
<註>
国連憲章第14条【平和的調整】第12条の規定を留保して、総会は、起因にかかわりなく、一般的福祉又は諸国間の友好関係を害する虞(おそれ)があると認めるいかなる事態についても、これを平和的に調整するための措置を勧告することができる。この事態には、国際連合の目的及び原則を定める、この憲章の規定の違反から生ずる事態が含まれる。
一般教書《米》State of the Union Message◆大統領が作成する教書。3大教書(一般教書・State of the Union Message、予算教書・Budget Message、経済報告・Economic Report)の一つ。大統領は議会で演説する。1990年代はTV放送が他の裁判中継で中断されるなど、あまり注目されない年もあった。[出典:英辞郎]