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広島県沖美町の無人島・大黒神島（おおくろかみしま）に、米空母艦載機による夜間発着訓練（ＮＬＰ）を厚木基地（神奈川県綾瀬市など）から移転する計画で、誘致撤回の意向を固めていた谷本英一・同町長は５日午前、町役場で会見し、正式に撤回と辞意を表明した。谷本町長は会見に先立ち、川野保・町議会議長に辞職願を提出。議会は辞任に同意する見通し。同島へのＮＬＰ移転計画は１月３０日の表面化後わずか１週間で頓挫し、在日米軍の強い要請を受け移転先決定を急いでいた政府は、同島への移転を断念した。
谷本町長は会見冒頭、「事前に町議会、住民、県、近隣市町の合意を得る必要があることは分かっていたが、防衛施設庁から、トップシークレットということで、一切漏らしてはならないと厳命されたため、説明したり納得していただける作業が出来なかったことが最大の反省点」などとしたコメントを読み上げた。そのうえで、誘致撤回と辞任の理由について「町民の間で反対運動が起きている一方、水面下では移転を推進する動きもあり、このまま状況が長引くと、町内を二分して混乱を招く」と述べた。
ＮＬＰを巡っては、厚木基地周辺の騒音被害を受けて８５年、政府が三宅島（東京都三宅村）への移転計画を発表した。しかし、地元の強い反対と、００年の噴火で始まった火山活動終息のめどが立たないことから断念。９１年からは、暫定的に硫黄島を中心に訓練を行っていたが、米軍側は暫定使用の長期化に不満を示していた。
水面下で移転先を模索していたところ、昨年１月、膨大な交付金を過疎地振興の切り札にしたいとして谷本町長が誘致を申し出た。これを受け、防衛施設庁内にプロジェクトチームが発足。「投資額」として１３０億〜１５０億円という金額を谷本町長に提示し、極秘に具体的協議を進めていた。
しかし、毎日新聞の報道で誘致計画が明らかになった先月３０日以降、藤田雄山・広島県知事をはじめ、合併を協議している周辺町や平和団体などから一斉に反対の声が上がった。いったんは「前向きに検討する」としていた沖美町議会も今月３日、計画反対を決め、谷本町長は四面楚歌（そか）の状態に追い込まれていた。 【中尾卓英、和田崇】
沖美町選管によると、出直し町長選の日程は、町長の辞職願を受け取ったことを、議長が町選管に通知した日の翌日から５０日以内に実施される。
▽藤田雄山・広島県知事の話 白紙撤回を求めていたので、この結果を評価したい。町長自身の辞職については、コメントする立場にない。早い段階で明白に県の意見を示していたので、多くの県民から激励を受けた。正直言ってホッとした。
◆谷本町長コメント
谷本英一・沖美町長が会見冒頭で読み上げたコメントは次の通り。
誘致を断念し、併せて町長を辞任いたします。
初めに、先般の記者会見で、私の発言の中、この誘致計画を思い至る過程の中で、「おもしろい」と言ったことについて、基地周辺におられる方々や関係のある方々に対し失言であったと深く反省いたしております。
事前に、町議会、住民の皆様、並びに県、近隣市町の合意を得る必要があることは分かっておりましたが、防衛施設庁から、国のトップシークレットということで、一切漏らしてはならないと、厳命されたため、説明をしたり納得していただける作業が出来なかったことが、最大の反省点であります。
ご批判は多々あることとは思いますが、国策である合併で、この小さな町が、１１年後に待っている特例債の返済等、多くの問題を、何とか打開し、福祉、教育に力を入れ雇用の安定を図り、これからこの重荷を背負っていかなければならない若い人々が、どうしたら幸せな生活が出来るか、また、生き残れる策はないかという思いが常にありましたが、こういう結果になりましたことを心から陳謝いたします。
広島県をはじめ、近隣市町に経過報告とお騒がせしたことの文書を出したいと思っております。ただ、計画の内容を十分説明し判断していただける機会がなかったことを残念に思います。
また、ヒロシマ「国際平和都市広島」のイメージを損なう可能性の認識が希薄であったことも事実で反省しております。最後に沖縄だけが基地を負担する問題と平和都市広島と日米安保条約の意義をこれを機会に考えていただければ幸いと存じます。
江能３町には近々訪問し、説明するつもりでございます。
［毎日新聞２月５日］ ( 2003-02-05-12:54 )
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。