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情報収集衛星、宇宙開発事業に甚大な悪影響
http://www.asyura.com/2003/bd24/msg/1068.html
投稿者 nikkeibp 日時 2003 年 3 月 16 日 18:29:43:

(回答先: 情報収集衛星、利用者側も知識が不足 投稿者 nikkeibp 日時 2003 年 3 月 16 日 18:28:15)

情報収集衛星、宇宙開発事業に甚大な悪影響

 情報収集衛星(IGS)の開発は、既存の宇宙開発体制に、予算と人的リソースの両面で
大きな影響を与えている。IGSは既存の宇宙開発関連予算を食いつぶしており、開発を
受託している宇宙開発事業団(NASDA)の人的リソースも消費している。IGSは日本の宇
宙開発を先が見えない状況に追い込む原因の一つになっているといってよい。

 IGSはそこまでして推進する価値のある計画だったのだろうか。筆者は「安全保障と
いう目的のために、IGS以前に打ち上げるべき衛星があった」と考えている。気象衛
星、詳細地図作製のための地球観測衛星、測位衛星だ。

●IGSに予算と人員を食われて将来計画が空白に

 表1は総額2538億円に及ぶIGS開発予算の支出、開発を受託した宇宙開発事業団
(NASDA)の予算の推移をまとめたものだ。これからはっきりわかるのは、開発が本格化
した2000年度からNASDAの予算は総額が増えず、既存計画を食いつぶすようにしてIGS
予算が増えているということだ。2002年度などは、実にNASDA予算のうち25%以上を
IGSが占め、既存計画を圧迫している様子が見て取れる。

・表1 IGSとNASDA予算の関係(単位:億円)
年度
1998
1999
2000
2001
2002
IGS予算
17.3
370
700.6
773.3
676.8
IGS予算のうちNASDA向け予算
 
 
239.2
489.9
546.6
NASDA予算総額
1851.0
1919.4
2002.4
2082.2
2040.3
IGSを除く実質的なNASDA予算
1851.0
1919.4
1763.2
1592.3
1493.7

 これに対して内閣府は宇宙開発委員会などで繰り返し「予算的には別」という答弁を
繰り返している。表向き実質的な宇宙開発予算の減額は、「厳しい歳入状況のため」と
いうことになっているわけだ。しかしこうして数字を並べてみると、「どうせ同じ宇宙
分野の支出だから、建前とは別に実態はまとめてシーリング」という、霞が関官僚の姑
息な数字合わせが見えてくる。

 NASDAは、IGSに人的リソースも取られている。現在、全NASDA職員約1100人のな
かのおよそ100人程度がIGS専任として働いているらしい。既存計画に携わる人員をIGS
に振り向けるわけにはいかない。勢い将来計画を検討するための人員をIGSに振り向け
ることになる。

 予算と人員をIGSに取られた結果、現在、日本の宇宙開発は全く将来計画がないとい
う恐ろしい状況に陥っている。

 NASDAの打ち上げ予定(表2)を見てみると、2005年度以降は、国際宇宙ステーショ
ン(ISS)関係の予定しか入っていないことがわかる。ISSはスペースシャトル「コロンビ
ア」が空中分解事故(関連記事:シャトル事故、日本の有人活動には甚大な影響)を起
こしたことによって、現在「予定は未定」という状態だ。つまり2005年以降、日本は独
自の宇宙活動について独自の計画を全く用意できておらず、ただ一つ残った国際協力計
画のISSも「どうなるかわからない」状況なのである。かろうじて2003年度からは温室
効果ガス観測衛星の開発がスタートすることになっているが、それだけだ。

・表2 NASDA打ち上げ予定(2002年度から2007年度)
02年度
H-IIAロケット
情報収集衛星
03年度
H-IIA
MTSAT-1R(気象衛星)
03年度
H-IIA
情報収集衛星2回目打ち上げ
04年度
H-IIA
ALOS(地球観測衛星)
04年度
H-IIA
ETS-8(通信実験用技術試験衛星)
05年度
スペースシャトル
国際宇宙ステーション用
生命科学グローブボックス
05年度
H-IIA
増強型試験機
05年度
H-IIA
SELENE(月探査機)
05年度
H-IIA
WINDS(超高速インターネット衛星)
05年度
スペースシャトル
ISS日本モジュール「きぼう」船内保管室
06年度
スペースシャトル
「きぼう」与圧部・ロボットアーム
07年度
スペースシャトル
ISS生命科学実験設備
07年度
スペースシャトル
「きぼう」船外実験プラットフォーム・
船外パレット
07年度
H-IIA増強型
HTV技術実証機(ISS向け補給船)

 技術開発のための衛星は、少なくとも開発に5年はかかる。IGSに予算と人員を取ら
れた結果、日本の宇宙開発は将来何をするかが見えなくなってしまっているのだ。

●IGSではなく気象衛星、地球観測衛星、測位衛星を

 冒頭でも触れたように、筆者は、国家安全保障のためには、IGS以前に整備するべき
衛星システムがあったと考えている。気象衛星と、地図作製を目的とした高分解能地球
観測衛星、そして日本独自の測位衛星である。

 まず気象衛星だ。気象情報は民生面はもちろんのこと、安全保障分野でも重大な意味
を持っている。IGSも光学衛星は雲やもやがあれば目標を撮影できない。運用計画の立
案には高精度の気象予測が必須である。

 アメリカは海洋大気庁(NOAA)が日本の「ひまわり」に相当する静止気象衛星
「GOES」の他に、地球を南北に回る極軌道気象衛星「NOAA」シリーズを運用してい
る。さらに国防総省が軍事専門の極軌道気象衛星「DMSP」シリーズを保有している。
それほど気象情報は安全保障にとって重要なのだ。

 ひるがえって日本はといえば、気象衛星を長年バックアップなしの1機だけという体
制で運用してきた。1999年11月の気象衛星「MTSAT-1」打ち上げ失敗により、現在日
本は、寿命が尽きかけた「ひまわり5号」(1995年打ち上げ)をだましだまし使い、さら
にはアメリカから軌道上で待機している予備の気象衛星を借りるという状況に陥ってい
る。その後、国土交通省は代替衛星「MTSAT-1R」と後継衛星「MTSAT-2」を発注した
が、「NOAA」や「DMSP」のような極軌道気象衛星を保有しようという動きは出てい
ない。気象衛星の価格は1機140億円程度だ。静止軌道衛星の予備を1機、極軌道気象衛
星を4機調達したとしても、1000億円もかからない。IGSの半額以下である。

●議論が欠如している日本の宇宙開発

 精密な地図情報が安全保障にとって重要であることはいうまでもない。偵察衛星が撮
影したデータの有効利用には、地図との照合が必要である。地球全域の地図を作製する
ための高分解能地球観測衛星は、IGSが開発に入る以前からNASDAが「ALOS」という
名称で開発を始めていた。しかし、IGSのあおりをうけた予算削減のために計画はずる
すると遅れ、当初2002年だったALOSの打ち上げ予定が、現在は2005年になっている。
これは明らかに本末転倒だ。ALOSが取得するデータが事前に用意できていれば、IGS
の有用性も増大したはずである。ALOSの開発費は459億円である。

 自分が今、どこにいるかを知るための測位衛星は、軍用、民生を問わず重要である。
米国防総省が軍用に開発した測位衛星システム「GPS」はカーナビに使われ、今や生活
に欠かせないインフラとなっている。アメリカは測位衛星での独占を求めて各国の計画
に干渉しているが、欧州はアメリカの圧力をはねのけ、独自の測位衛星システム「ガリ
レオ」の開発を昨年決定した。ロシアは旧ソ連時代に構築した測位衛星システム「グロ
ナス」を維持すべく努力しており、中国も、2010年までに独自の測位衛星システム構築
を目指すという方針を公表している。

 米国防総省は1970年代から開発してきたGPSに2兆円以上を投資した。しかし欧州の
ガリレオはGPSと同等のシステムを36億ユーロ(約4600億円)で構築する予定だ。技術の
進歩が測位衛星システムのコストを下げているのである。

 注意深くシステム設計をするならば、2000億円以下でも独自の測位衛星システムを構
築することができるだろう。

 1998年に北朝鮮が「テポドン」を発射した結果、なし崩し的にIGSの開発は始まっ
た。しかしそこには「具体的にどのような宇宙インフラを開発すれば安全保障をより少
ない予算で確固たるものにできるか」という議論が欠如していた。そのツケは国民が払
うことになる。


http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/mech/236236

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