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「年内に各人が地元の『金竜泉』ビールを六ケース(百四十四本)ずつ買うように」――。中国湖北省にある武穴市(人口七十二万人)は七月五日、「全市民に武穴市ビール産業の発展支持を呼び掛ける通知」を出し、共産党員や公務員ら一万二千人の幹部にはこんなノルマを課した。
ビール購入強要
ビール代は給料から天引きするという有無を言わせぬ措置。さすがにビールを飲めない幹部らから猛反発を買い通達は次の日に撤回されたが、王斌副市長は「党や市政府の幹部が(地ビールを愛飲し)模範的な役割を果たすのは当たり前」と北京日報紙上で本音を吐露した。
地元の産品や企業を不公正な手段に訴えてでも守ろうとする「地方保護主義」の動きが中国各地で後を絶たない。中央政府は四月下旬、「市場経済活動における地域閉鎖の禁止規定」を定め罰則を強化した。世界貿易機関(WTO)への加盟を視野に入れた措置だ。だが、武穴市のような動きはなくならない。
北京市のあるメーカーによると、大半の地方の専売局がよそのビールを扱う卸売業者に特別税を課している。地元業者には安価な非耐圧瓶のビール製造を許しているのに、よそから非耐圧瓶の製品が入ってくると罰金を科すところも多い。他の地方のビールを積んだ車両が入境してくると過積載を問い、罰金を科すやり方もある。
最大手の青島〓酒集団はこの五年間に地方で約四十社を買収したが、買収先では「青島ビール」ブランドを使わずにいる。李桂栄董事長は「買収先のブランドをそのまま使うことで地方政府の保護を受け続けられるし、買収先の販路を使って青島ビールの拡販もできる」と、地方保護を逆手に取った戦略を明かす。
中国の昨年のビール消費量は年間約二千万キロリットルで米国に次いで世界第二位。今年か来年には世界一に躍り出る。海外のメーカーもこの大市場を虎視眈々(こしたんたん)と狙う。WTO加盟交渉で中国の中央政府は、国内市場での公正競争の確保や内外無差別を約束した。しかし地方に一歩足を踏み入れると、厚く高い参入障壁が立ちはだかる。
ビール業界には四百六十ものメーカーがひしめくだけに、とりわけ地元企業を守ろうという意識が強いという面はある。しかし同じような地方保護主義は自動二輪車、自動車、たばこ、洗剤、乾電池、そしていま問題になっている偽物などでもみられる。
ヤマハ発動機は昨年暮れ、台州華田摩托車(浙江省台州市)とその子会社の台州雅馬哈摩托車(同)が「日本YAMAHA」ブランドを冠した模造二輪車を製造・販売していたため商標権問題を担当する台州市の工商行政管理局に摘発を求めた。国家工商行政管理局は既に商標法違反との判断を示していた。しかし台州市当局はなかなか動かない。やっと摘発されたのは三月十五日。谷野作太郎・前駐中国大使が呉邦国副首相に書簡を出して問題解決を直訴した三週間後だった。
背景に貧困・腐敗
北京で商標権や意匠権の侵害問題を多く扱っているクデール・ブラザーズ法律事務所のティボール・バランスキー弁護士は「地方の工商行政管理局や(偽物問題担当の)技術監督局、公安局がなかなか取り締まってくれないケースも多い」と証言する。
中央の意向が地方に徹底しにくいのは国土が広いためだけではない。背景には地方の貧困や腐敗問題がある。
新華社電が項懐誠財政相の話として伝えたところによると、中国の地方行政組織である県のうち、半数近くの千以上が行政職員の給与欠配に陥っている。欠配総額は二百五十三億元(約三千八百億円、一元=約一五円)に上る。
原因は地元企業の業績悪化に伴う財政収入の伸び悩み。勢い、地元企業を保護し利益を上げさせようという発想が頭をもたげる。給与をきちんともらえない行政職員は地元企業と癒着し腐敗に走りやすくもなる。よそのビールを排除するための特別課税や様々な罰金はその産物でもある。
過大な期待禁物
WTO加盟に向け、中央では着々と法整備が進んでいる。七月一日には特許権や意匠権侵害への処罰を強化した改正特許法も施行された。ただ、「上有政策、下有対策(上に政策あれば下に対策あり)」というお国柄。中央が法律を定めても、地方にはそれぞれの事情や利害関係があり、様々な手を編み出す。
WTO加盟で、海外からの投資が集中しそうな沿海部と発展の遅れた内陸部の貧富の格差は一段と開くとみられている。失業率も上がるのは避けられない。それがまた地方で保護主義の台頭を促す。
中国市場は確かに巨大で将来性に満ちており開放に向かっているが、過大な期待は禁物。「絶望しないよう期待する」(バランスキー弁護士)ことが大切なようである。