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やはり謀略の巣窟だった−。北朝鮮工作員で朝鮮総連元幹部の男（７２）が約８年間にわたり、新潟港に入港する北船籍の不定期貨客船「万景峰９２」の船内で、対韓国工作の指令を受けていたことが２９日、警視庁公安部の調べで分かった。これで、北への不正送金や輸出規制物質の搬送など、闇に包まれた「疑惑の船」が「工作船」だったことが判明。同船の入港禁止を求めた議員立法による法改正への動きにも、はずみがつきそうだ。

　男は公安部の任意聴取に対し、自分が工作員であることを認めている。調べでは、男は別人の名前、本名、偽の日本人名の３種類を使い分け、工作活動を続けていた。同部は昨年１１月、東京都内の男の自宅などを家宅捜索し、北朝鮮の「指令書」や不正取得した外国人登録証を押収。近く男を公正証書原本不実記載などの疑いで書類送検する。

　男は韓国生まれで、昭和２４年ごろ日本に密入国。北工作員として活動を始めた平成５年以降、新潟港に入港した万景峰に乗船して船長から指令書を受け取り、韓国に親戚のいる在日朝鮮人を使って韓国国内での工作活動を遠隔操作。結果を船長に報告するなどしていた。

　「万景峰９２」は新潟港と北の元山、清津などの港を結ぶ貨客船で、日朝間を年間約３０回往復する。以前から北への不正送金や輸出規制物質の搬送などへの関与を指摘されてきた。公安当局ではこれまでに朝鮮総連の議長、副議長ら大物在日朝鮮人の乗船を確認しており、同船を「金正日総書記の指令を運んでくる指令船」と見てきた。

　拉致被害者、有本恵子さん＝失跡当時（２３）＝の母、嘉代子さん（７７）は、「国は入港停止などの対策をとってほしい」と話し、小泉純一郎首相も記者団に対し「（同船が）犯罪に使われないよう注視していかなければ」とした。

　昨年１２月には同船の入港禁止を、自民党の河野太郎衆院議員らが議員立法で実現しようとする動きも浮上。同船が「工作船」と判明したことにより、“打ち払い”立法化への動きは一気に加速しそうだ。

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