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2003.01.21
Web posted at: 16:39 JST
- CNN
スイス・チューリヒ(CNN) 運動機能が失われていく神経の難病、運動ニューロン疾患(MND)で長年苦しんできた英国人男性が20日、スイスで積極的安楽死の処置を受けて死亡した。患者自らが安楽死を求める積極的安楽死は、英国では違法だがスイスでは合法化されている。積極的安楽死を推進する団体によると、スイスで処置を受けた英国人はこれで2人目だという。
チューリヒの施設で積極的安楽死の処置を受けたのは、英リバープールのレジナルド・クルーさん(74)。水に溶かした多量の睡眠薬を与えられ、妻と娘が見守る中で亡くなった。施設の場所や名前などは明らかにされていない。スイスに到着したクルーさんは、医師から安楽死の意志を確認され、精神状態に問題がないと判断された後に、睡眠薬を処方された。
クルーさんは運動機能が失われていくMNDのため、自力で起きあがったり食事を取ったりすることができず、寝たきりの状態が4年近く続いていた。
クルーさんは昨秋、同様にMNDを患う英国人女性ダイアン・プリティさんが「死ぬ権利」を求めた法廷闘争を描いたドキュメント番組を見たのをきっかけに、自らも積極的安楽死の選択肢を検討しはじめた。
プリティさんは、自分の積極的安楽死を夫が処置できるよう司法判断を求めて、01年夏から02年春にかけて英国の裁判所や欧州人権委員会へ訴え、広く報道された。訴えは却下され、昨年5月にホスピスで呼吸不全などのため亡くなった。プリティさんの訴えが英国でも欧州人権委でも却下されたと知り、クルーさん夫妻はショックを受けたという。
プリティさんの訴え却下によって、英国で積極的安楽死を受けられる見通しがなくなったため、クルーさんは「ほかに方法がない」とスイス行きを決意し、チューリヒに本部を置く積極的安楽死の推進団体ディグニタスに参加した。初めは反対していた妻のウィニフレッドさん(71)も、最後には夫に賛成し、家族でスイスへ向かった。
クルーさんは先月、「朝、目覚めることさえも苦痛だ。私の介護で家族は死ぬほどの苦しみを味わっている。こんな状態で生きることそのものが、私に死ぬほどの苦しみを与えている。私はこの世界から、解放されたいだけ」と話していた。
妻ウィニフレッドさんは、「夫はこの病気がどれだけ苦しいものか理解してもらうため、積極的安楽死を選んだことを公表しました。自分で食事することもトイレに行くこともできない。苦痛のため横になることもできない。首の筋肉が動かないために物をかめず、まもなく声も出せなくなるという状態だったのです」と話す。
団体「ディグニタス」によると、スイスで合法的に積極的安楽死の処置を受けた英国人は、クルーさんで2人目。1人目は、食道がんの77歳男性だったという。この男性の詳細は明らかになっていないが、娘と息子の助けを借りて、積極的安楽死の処置を受けたという。