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(1) 再び“人工衛星”を打ってくるか
北朝鮮は、米朝交渉で核開発の事実を認めたことにアメリカが反発すると、逆に居直って核施設の封印を一方的に解除し、NPT(核拡散防止条約)脱退を表明した。
そのうえ、核爆弾製造のためのプルトニウムを抽出できる核燃料棒再装填をチラつかせたり、凍結しているミサイル発射実験再開をほのめかすなど、得意の脅しのカードを繰り出している。
そうした北朝鮮の一連の言動は、明らかに日朝平壌宣言違反であり、金正日総書記は日本から当面、賠償金を引き出せそうにないと見ると、小泉首相との約束をいとも簡単に反故にした。日本無視というより、馬鹿にされたのである。事実、アメリカ政府も、「米朝合意の枠組みはすでに存在しない」と明言している。
しかし、小泉純一郎首相はこの期に及んでも現実を直視しようとしない。
「日朝平壌宣言に沿って平和的解決をすべきだ」
――と、繰り返すばかりだ。
小泉首相にとって、現実を受け入れれば、自らの訪朝が外交的失敗に終わったことを認めざるを得ない。それが嫌だから、いつまでも平壌宣言の幻想にしがみつこうとしている。
元公安調査庁第2部長の菅沼光弘氏は、日本の危機は小泉訪朝から始まったと見ている。
「小泉首相は訪朝前にアメリカから北が核を保有していることを知らされており、問題の解決を託された。それにもかかわらず、首脳会談当日に拉致被害者8人死亡という真偽不明の情報を聞かされただけでショックを受け、核問題など忘れた状態で平壌宣言にサインした。つまり、交渉の出だしからつまずいた」
そのうえで、菅沼氏は、北朝鮮情勢はいまや日本への≪ミサイル発射≫もあり得るほど緊張の度合いを増していると分析している。
「米軍はイラクに集中しているとみられているが、実は、横須賀が母港の米第7艦隊は今も北朝鮮に向けて配備され、決して北の動きを軽視しているわけではない。近々、日本海で第7艦隊が北朝鮮船籍の船舶に臨検を実施するとの情報もある。いざ米軍による武力行使が避けられない事態となれば、北朝鮮は米軍の出撃拠点となる日本をまず攻撃してくる可能性が高い」
さる1月15日、新潟港に今年初めて北朝鮮の貨客船『万景峰号』が入港した。日本からの食糧輸送や不正送金、核開発に必要な化学物質やミサイル製造のための電子部品など戦略物資の運搬を担ってきた船であり、国内では入港禁止措置を取るべきだという声も強まっているが、政府は今回も入港させた。
しかし、いくら日本が寄港を認めても、米第7艦隊が臨検を実施すれば、当然、米軍の厳重な立ち入り検査の対象になる。食糧や生活物資の補給でも重要な役割を持つとされる万景峰号の出入りを事実上ストップされた場合、北朝鮮と米軍=日本が一触即発の状況になるのは間違いない。
菅沼氏は直接攻撃の場合に可能性が高いのは中距離ミサイルの『ノドン』だという。
98年8月、北朝鮮はノドンよりさらに射程の長い『テポドン』を日本に向けて発射し、「人工衛星を打ち上げた」としゃあしゃあと発表した。
今回もまた、ノドンによる本格攻撃の前段階として、北朝鮮が日本にブラフをかけるために“人工衛星”を撃ってくる可能性も否定できない。
(2) 金正日暴発のエピソード
ミサイル以上に脅威なのが生物・化学兵器によるテロ攻撃である。
危機管理の第一人者、佐々淳行・元内閣安全保障室長は、北朝鮮はむしろ日本に対する後方攪乱戦術に出るのではないかと分析している。
「アメリカとの関係改善が進展しなければ、金正日はなんとか譲歩を引き出すために新たなカードを切らなければならなくなる。その際、追い詰められて周辺国、つまり韓国や日本に生物・化学兵器テロを仕掛ける危険性は十分あると見ている。サリンはいうに及ばず、北朝鮮がアメリカでバラ撒かれた炭疽菌をはじめ、ボツリヌス菌や天然痘ウイルスなどを生物兵器として保有していることはまず間違いない。テロであれば北朝鮮がやったという明確な証拠は残らないし、国際社会を混乱させ、北の脅威を世界にアピールする効果も大きい。金正日は拉致工作や大韓航空機爆破事件を自ら指揮したことからわかるように、工作活動を好む。テポドン発射のような真正面からの武力行使より、テロの方が現実性が高い」
その場合、一番に標的にされると見られているのが在日米軍基地周辺というのは前出の菅沼氏の見方とも一致する。さらにニューヨークの世界貿易センタービル突入のような大規模テロを東京で起こせば、日本は瞬時に大混乱に陥り、反戦世論が高まるというのが北朝鮮側の狙いの一つだとされている。
また、佐々氏は北朝鮮が最初にNPT脱退を突きつけた93年の危機より現在の方が深刻だとも語る。
「93年の時はまだ金日成主席が存命だった。父親は朝鮮戦争を経験し、戦争の怖さが身にしみていたが、息子の金正日は知らない。それだけに暴発した時の危険性は金日成の比ではない」
金正日氏の好戦性を物語るエピソードがある。
80年代後半、国内の実権を掌握しつつあった金正日氏が韓国攻撃を主張し、父・金日成氏と激しく衝突した。
在日朝鮮人組織の最高幹部の間には、その時の金父子の緊迫したやりとりが次のように伝えられている。
「金正日将軍は軍部を完全に掌握するために、強い姿勢に出る必要があった。大韓航空機テロもその一つです。それだけでは終わらず、将軍は軍の取り巻きと韓国侵攻作戦を練り上げ、金日成大元帥に、
『わが軍はソウルを陥落させる準備を整えた。今こそ南北統一を実現するために攻撃を認めてほしい』――と迫った。当時は在日組織の内部も金日成派の長老と金正日派の幹部が主導権争いを演じており、祖国でも将軍派が早く実権を奪うために強硬路線に走った。しかし、その時、父の大元帥はこういったのです。
『朝鮮戦争で火の海となった平壌を再建するのにどれだけの年月がかかったか。戦争になればまた町が破壊される。わが軍が平壌の建物の窓ガラス1枚割られることなく勝利する自信があるのなら、やってもよい』と。
その後、しばらく金正日将軍派は事実上の謹慎処分を受けた」
今回はその金正日氏が軍の全権を握り、北朝鮮国内には制止できる者はいない。
在日組織の幹部さえ、≪北朝鮮の暴発≫を真剣に危惧している。
「金正日が強硬姿勢に転じた直接のきっかけは、KEDOに重油の供給を止められたことです。といっても、庶民の飢餓を心配しているわけではない。祖国の人々は、窮乏生活に耐えるのは慣れている。朝鮮新報などの年頭の共同社説では、軍の備えが強調されており、金正日はこのままでは重油や兵糧不足で権力基盤である軍が動けなくなることを恐れている。それだけに、核でも生物・化学兵器でも使えるものは何でも誇示して国際社会をギリギリまで挑発するだろう。テロを実行して非難を浴びても、“一部の過激分子がやった”と粛清すれば済むという発想です。しかし、そうなればアメリカはタリバンやイラクにやっているように北朝鮮の支援組織を徹底的に潰しにかかるから、在日組織内部でもそれを見越して一斉に金正日体制からの離反が進んでいる」
(3) 日本
「地下鉄サリン」後も対策はなし
日本国内で≪地下鉄サリン事件≫のような生物・化学兵器テロが発生した場合、都道府県ごとに定められた災害拠点病院や救命救急センターが対応することになっている。
東京都の場合、『都立広尾病院』や『国立病院東京災害医療センター』などが災害拠点病院に指定されている。
厚生労働省は昨年10月29日付で都道府県知事あてに『国内でのテロ事件に係る対応について』と題する通達を出した。その第2項には、炭疽菌、天然痘、野兎病、ボツリヌス菌による感染症が列挙され、生物兵器への危機管理がこう書かれている。
<感染症に対する専門的な知見を有する者との協力体制の確認等による適切な診断・治療の確保を図られたい>
一方の化学兵器については昨年12月5〜6日の2日間、厚生労働省が各地の災害拠点病院の医師や臨床検査技師ら約150人を集めて初の『化学災害研修』を実施した。
ところが、実際に複数の災害拠点病院に取材すると、とても対応は十分とはいえないことがわかった。
厚生労働省幹部が明かす。
「生物兵器の場合、症状は感染症だから、炭疽菌のように潜伏期間があるケースでは救命救急医療の対象ではなくなる。一般の大病院でも対処は可能で、日頃から対策を徹底するしかなく、特別の対策は講じていないのが実情です」
しかも、日本の災害拠点病院には生物・化学兵器テロ専門の医療チームもない。
(4) 「武装難民」の正体
テロへの備えなき日本の現実――。
まず菅沼氏がミサイルなど直接攻撃に対する防御の空白部分を指摘する。
「いま北朝鮮に攻撃されても日本は自衛できない。例えば航空自衛隊にはF15戦闘機があるが、実戦では使えない。空中給油機がないので、出撃しても帰ってくる燃料を補給できないからです。海上自衛隊のイージス艦は10方向の敵を同時に攻撃する能力があるが、現行法では防御のためしか発砲できないので、単なる情報収集艦になってしまっている。ならば米軍に頼めばいいのか。しかし、98年にテポドンが発射された際に米軍は何もしなかった。どこまで頼りにできるかわからないし、あくまで自前で防衛する覚悟がいる」
佐々氏は生物・化学兵器テロへの無防備さをこう語る。
「サリンの応急処置には『パム』『アトロピン』という薬が有効だが、日本にはほとんど備蓄はない。炭疽菌に有効な『シプロ』もない。さらに危険なのが天然痘で、免疫のない人が国内には1750万人以上いるといわれているが、ワクチンもない。だからこそ生物・化学兵器テロに対する政府全体の危機管理マニュアル構築を急がなければならない」
もう1つ、見落とせないのが北朝鮮からの大量難民が押し寄せた時の対策だ。
94年当時、政府は朝鮮半島有事が発生した場合、10万人規模の難民が日本海を漂流する事態を想定し、当面、沿岸の市町村が公民館などに収容し、炊き出しを行なうといった対応が検討されたものの、その後の米朝合意で緊張が緩和すると立ち消えになった。
≪公民館で炊き出し≫とはあまりにも北朝鮮難民の実情を知らない役人の発想というしかない。
北朝鮮との間を何度も行き来している在日組織の中堅幹部の指摘は重要だ。
「北朝鮮の人口は約2300万人ですが、そのうち子供を除いた1500万人ほどは軍事訓練を受けている。ただの訓練ではない。農民であれば、農作業をやめて3か月ほど軍隊に入り、実戦さながら人の殺し方を教わる。金正日体制が崩壊して国内混乱の中でそうした人々が国外に出る場合は、武装しているとみた方がいい。日本に上陸したら、捕まらないように身を守る訓練を受けているから、非常に危険です。通常のボートピープル同様に考えて公民館に泊めようといった善意は、死線を越えてきて興奮状態にある彼らには通用しないし、むしろ日本海の沿岸都市は襲撃にあう危険な状態に置かれると想定しておくべきです」
まさに≪開戦前夜≫の緊張が日本海に立ち込めつつあることを、われら国民は直視しなければならなくなった。