現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ22 > 417.html ★阿修羅♪ |
|
日本に行って、情報処理と経済の勉強をしたい−−中国の大学を卒業した林明(24、仮名=以下同)が来日したのは平成13年4月のこと。成田空港に着くと、一人の男が迎えに来ていた。知人の紹介で、日本で林が暮らすアパートの手配などをやってくれた。
「欲しいものはないか。そうだなぁ、中国語のビデオが見たくなったら周さんに借りるといい」
以前同じ職場で働いていた友人も紹介してくれた。
林は世田谷にある短大で日本語を勉強するかたわら、学費や生活費を稼ぐために築地の魚市場でアルバイトを始めた。そして、時間を作っては周のアパートを訪ね、ビデオを借りたり悩み事を相談するようになる。周は、異国の地で頼れる数少ない人物だった。
「ちょっと手伝ってほしいことがある。簡単な文字の入力なんだ」
周からそう頼まれたのは、日本に来て1年余りが過ぎた14年6月。林は言われた通り、紙に書かれた数字や文字をパソコンに入力し始めた。
「途中でおかしいと気づきました。自分が打ち込んでいるのは、外国人登録証明書に記載されているものと似ている、と。しかも、すごくたくさん」
使い道を尋ねたが、答えてはもらえなかった。それ以上追及することをあきらめ、林は1時間ほどキーボードを叩き続けた。そして、翌日も。
「不安でした。でも、周さんには恩があったから…」
来日して1〜2週間たったころ、周に約88万円ものお金を用立ててもらったことがあった。
「ビザ発給の際、銀行口座の残高が足りなくて貸してもらったんです」
築地で働いていたときにも、周のところに魚を持っていくと高い値段で買い取ってくれた。
「私がお金に困ってることを知っていつも助けてくれた。その人の頼みを断ることはできなかった」
結局、2日間にわたり、林は1日1時間ほどパソコンでの作業を続け、5万円の報酬を受け取った。
「違法なことを手伝っているという認識はありました。だから、それ以後は勉強が忙しいことを理由に行かないようにしていた」
だが、2カ月後の同年8月、林は中国に帰国することになった周からノートパソコンや携帯電話、スキャナー、プリンターなどを譲り受け、外国人登録証明書の偽造方法も教わることになる。
「お金が必要だったんです」
林は推薦入学で入った神奈川県内にある四年制大学の経営情報科で学ぶようになっていた。
「ようやくやりたかった勉強ができるようになった。でも、アルバイト先が遠くなって仕事を辞めてしまったため学費が払えなくなって…」
中国にいる両親も経済的に苦しく、送金してもらえる状態ではなかった。林は、授業料だけでなく、アパートの家賃2万5000円を捻出するのさえ苦しくなっていた。
神奈川県厚木市の自宅アパートに周からもらったパソコンやスキャナーなどを運び込み、携帯電話にかかってくる仲介人からの注文に応じて外国人登録証明書の偽造を請け負うようになった。約2カ月で、作成した偽造外国人登録証明書は70〜80通に及んだ。
「報酬は後払いで1通1万円。でも、偽造と見破られたときはお金もらえない。なかには払ってくれない人もいたから、受け取ったのは全部で40万円程度」
やがて、旅券法違反の捜査線上に林の名前が挙がり、彼は有印私文書偽造の容疑で逮捕される。
「もともと、年が明けるまでにはやめるつもりでした。今までは日本語があまりできなかったからアルバイトが見つからなかったけど、できるようになれば仕事もあるだろうし…」
求刑は懲役4年と偽造外国人登録証明書の没収。大学は、退学処分になった。在留資格は2004年4月まで残っている。林は「できれば期限いっぱいまで日本滞在を続けたい」と言う。いったい何のために?