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成田・関西空港に秘密の顔認識システム配備完了
投稿者 朝日新聞 日時 2002 年 12 月 31 日 14:59:54:

成田空港、関西空港に顔認識システム設置済みとのこと。明らかに憲法違反。

朝日新聞 平成14年12月30日朝刊より。

 不特定多数の人の顔を監視カメラで撮影し、その中から特定の個人を割り出す「顔認識システム」を、財務省関税局が国内で成田空港と関西空港に設置していたことが分かった。カメラは全旅客が通る税関エリアに設置され、撮影中の表示はなく、使用実態も「密輸捜査に支障が出る」と明らかにされていない。このシステムは米国の同時多発テロ以降、欧米の空港で導入が広がっているが、月本で設置が明らかになったのは初めて。
 財務省関税局監視課によると、顔認識システムは5月、サッカー・ワールドカップ(W杯)で入国する外国人対策として両空港に設置。02年度W杯対応費から「顔照合・検索監視システム」の名目で、事業費は計約1500万円。成田には米国社製、関空には日本製を配備したという。 旅客の顔映像をとらえるカメラは、飛行機を降りた旅客が入管通過後、荷物を検査される税関エリアにある。別室で映像を映し出し、あらかじめデータベースに登録してある顔写真と自動的に照合する。一致すると、画面内の別枠に保存される。データベースには、関税局が入手したり、他の捜査機関から提供されたりした「ブラックリスト」の人物写真を使用。ほかの旅客の映像は、成田税関支署、関西空港税関支署がそれぞれ設置後の11月に運用規定を設け、消去しているという。
 松田学・関税局監視課長は「現在は試用期間として使ったり、使わなかったり。個人情報の保護に配慮しつつ、運用したい。顔を隠されると捜査にならないので、撮影の表示は考えていない」。システムの導入が密輸摘発につながったケースはまだないという。
 日本の最高裁判例は、私生活上の自由の一つとして、みだりに容貌を撮影されない自由が憲法上保障され、公権力が本人の同意を得ずに撮影できるのは、犯罪が現に行われているか、行われて間もないときで、証拠保全の必要性や緊急性がある場合に限られると述べている。
 監視社会と人権問題に詳しい棟居快行成城大教授(憲法)は「空港を使う一般市民を継続して撮影することが、この要件にあてはまるとは思えない。映像は保存しないというが、公権力内部での情報処理はブラックボックス化している。制度的な歯止めが必要だ」と指摘する。

【顔認識】 目の間の距離、鼻の長さ、あごの角度など、顔の複数の部分をとらえて、人物の同一性を識別する方法。指紋や声、目の虹彩など、身体の特徴を用いる生体認証(バイオメトリクス)の一種。

街角や公共スペースに急増する監視カメラ。いま、ごく普通の市民生活が監視されている。防犯などが理由だが、不特定多数の中から特定の個人を割り出す「顔認識システム」が国内でも成田空港と関西空港に導入されるなど、「監視社会」は進む一方だ。撮影された映像は警察の捜査に利用されるケースも出ている。個人情報の保護など運用面での課題は置き去りにされたままだ。

 監視カメラ総数は明らかになっていないが、調査をしている市民団体「一矢の会」 (東京)は延ベ200万台ほどにのばるとみている。最近では、東京都新宿・歌舞伎町や大阪市・心斎橋など繁華街にも設置され、地方都市のごく普通の市民生活空間にも広がり、いわゆる「監視社会」ができつつある。
 人口約30万人の宮崎では、この1年で市が市内に監視カメラ約40台を設置した。目的は中心商店街がシャッターのらくがき防止用で、駅前の駐輪場が盗難防止用。山間部や海岸部はごみの不法投棄対策用だという。
商店街では8月、近くで起きた傷害事件を写した可能性があるとして、市が県警宮崎北著に録画テープを渡したことが分かった。同署は2週間後「有効な部分はなかった」と返却。市はこの後に提供基準を設けたが、写された人の同意など個人情報としての位置づけはされていない。
 市役所の窓口にも今月から、他人に成りすまして印鑑証明などを取らないようにと、小型のビデオカメラが付けられた。大谷幸朗・市民課長はプライバシーに配慮して職員も映像を見ず、写った本人が情報公開を請求しても見せない」と説明、刑事訴訟法の手続きを取った捜査機関だけが見られるとしている。 ロンドンのニューハム地区には98年から約300台のカメラが設けられ、成田空港に設直されたのと同じメーカーの顔認識システムに接続している。設置後、犯罪件数は約30%減少したという。だが直接、逮捕につながった例はない。行動の抑止にはなっても、犯かには、疑問の声が出て罪の解決に役立っているいる。
米国の人楓団体「米市民自由連合」の情報公開請求などによると、バームピーチ国際空港でも今春、顔認識システムの導入実験があったが、照合して正しく一致したのは47%だった。 自由連合は「顔認識持術は精度に疑問がある上、容疑者の写真を入手していないと使えない。空港での使用は、私たちに秩序も自由ももたらさない」と、導入に反対だ。
 大分市はW杯期間中、繁華街にトラブル防止用の監視カメラ14台を設置した。精度は、個人の顔が特定できない程度とされたが、「人権侵害の可能性がある」という指摘があり、W杯の大分開催が終わると撤去した。
 日本の市民団体「監視社会を拒否する会」(東京)の北野弘久共同代表は「一般の人が見過ごしがちなドーム形のカメラで知らないうちに日常が監視されている。これらの映像情報が最終的にどう処理されているのか、不透明だ。監視社会の加速化について真摯に考える必要がある」と話す。

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