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TRONプロジェクトの生みの親、東京大学大学院の坂村教授が、ユビキタス社会の整備に際し誤った考え方、
姿勢があると弁舌鋭く批判した
オープンソースのリアルタイムOS「TRON」のプロジェクトリーダーとして知られる、東京大学大学院の情報学環・学際情報学府教授の坂村健氏が、ユビキタス社会の整備に際し誤った考え方、姿勢があると弁舌鋭く批判した。12月20日に開催された、NTT-ATのシンポジウムで持論を展開した。
講演は、同氏が会長を務める「T-Engineフォーラム」の紹介が主な内容。しかし、一部の人々が思い描く“ネットワーク社会の未来”に対する批判、および技術開発者に対する不満も飛び出して議論がヒートアップ、会場をわかせた。
「IPv6でユビキタスなんてありえない」
坂村氏が最初にやり玉に挙げたのは、ネットワークインフラが整備された世の中では「あらゆる家電、製品にIPアドレスが割り当てられ、IPv6ネットワークで管理される」という考え方。
同氏は、生活環境の中で利用する機器には、リアルタイム性と高い信頼性が求められると説く。しかし、インターネット経由の操作では、これらの機能が損なわれるという。
「IPアドレスを持ったリモコンでテレビを操作するとして、(トラフィックの混雑から)ボタンを押したのになかなかチャンネルが変わらないとか、さっきは変わったのに、今度は変わらない、といった現象が起こり得る」。製品の製造コストも、赤外線を利用する場合より10倍以上高くついてしまうと指摘した。
また、IPv6アドレスを割り当てられた製品が、直接インターネットに接続し始めると、当然それらがハッキングに遭う機会も増える。
「万一、家電がハッキングされれば、電子レンジは火を吹き、冷蔵庫の中身は凍りつき、シャワーの蛇口をひねれば熱湯が出る」。こうした事態を防ぐには、個別の製品にファイアウォールを設定する必要が生じるが、これは現実的でないという。
同氏は、家庭で1カ所がインターネットに接続されていればよいと提唱する。「(ネットワークインフラの利用には)TPOがあるんです。“IPv6でユビキタス”なんてできないし、私はやりたくない。そういうトンチンカンなことをいうひととは、話をしたくない」と、バッサリ斬り捨てた。
「開発環境がWindows」に不満
坂村氏は、T-Engineという“土台”となる組み込み機器向け開発環境を整備することの重要性を主張する。日本の技術開発者は、Windowsの開発環境を利用する傾向があると指摘する辺りから、同氏の言葉は再び熱を帯び始める。
「研究所でWindowsを使うというのは、世界の中で日本ぐらいのもの。一般ユーザーがWindowsを使うのも間違いだが、それはまあ仕方ないとして、開発者はWindowsを使わないでほしい」。
Windows OSはアプリケーション層より下のレイヤーがブラックボックス化しており、関係するモジュールが把握不能なため、表層的な開発しかできない。さらに、Windowsのバージョンアップという「ワナ」にはまり、最新版ではソフトウェアが正常に動作しなくなるというケースも稀ではない、という。「現場では、訳の分からないままデバッグの作業に追われ、製品の市場投入が遅れる。全部、Windowsのせいだ」。
「T-Engineフォーラムに入会を」
T-Engineは、SH/ARM/MIPS/M32Rといった代表的な組込みCPUアーキテクチャをサポートしている。坂村氏は、「大手チップベンダーは全てT-Engineフォーラムに入会した」と、胸を張る(フォーラムの会員リスト参照)。
講演の終わりには、聴講者に対しT-Engineフォーラムへの入会を呼びかけるシーンも。「そもそも、(シンポジウム主催者の)NTT-ATさんがフォーラムに入っていない。NTTグループは、全社入会してください。持ち株会社が入会したら、それでいいなんて会則はありませんよ」(笑)。