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週刊ダイヤモンド2002年11月16日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 469
「道路公団改革の足を引っ張る張本人は小泉首相か」
驚いた。真偽のほどはあとひと月もすれば白日の下に明らかになるが、道路関係四公団の改革の足を引っ張っているのは、じつは、小泉首相その人であるかもしれない。
四公団の改革案は現在、民営化推進委員会が討議中だ。8月末に出された中間整理案では、四公団のすべての資産と債務を引き継ぐ「保有・債務返済機構」を設置し、そこから道路を借りて運営する民営化会社は、保有機構にリース料を払う。機構はリース料から新規道路の建設資金を出すとされた。
上の案は「上下分離」であり、保有機構から新規道路建設資金を出すのは、これまでの道路公団の無責任経営をそのまま受け継ぐことになり、惨状に陥っている四公団の過ちを繰り返すものだと強い批判を浴びた。道路族が最も喜ぶこんな案を考えた民営化委員会は怪しからぬと思っていたら、今井敬委員長が、それは「小泉首相の意向である」と語ったという。
委員の1人が語る。
「10月29日の委員会の前と後、2回にわたって、立ち話のようにして今井さんは私に言いました。小泉首相を支えるために、中間整理案のように保有機構をつくり、そこから新会社に新規道路の建設資金を貸すしかないと。で、私は、それは決して小泉首相を支えることにはならない。その案では、現在の道路公団の無責任体制は何も変わらない、改革にもならないと言いました。すると今井さんは『総理の意向もそうなんですよ』と言われました」
なんと小泉首相その人が、上下分離案、保有機構という独立行政法人に巨大な資産と収入と権限を与える案に賛成しているというのだ。しかも、特殊法人と実態において大差のない独立行政法人から、新規建設資金を出させる案に賛成だというのだ。
上の委員も今井氏も、それぞれひとかどの人物である。両氏ともに嘘偽りを口にする人びとではないと思われる。となると、この驚くべき話は注目に値する。その委員はこうも語る。
「国土交通省も道路族議員も、9342キロまでは必ず造ると言っています。今、約7000キロ完成していますから、あと2300キロ、その費用は20兆を超えると積算されています。10月23日に石原伸晃行革相が主催した委員を招いての夕食会でも、今井さんは保有機構から建設資金を出せればよいと明言しました。食事の席で語るような問題ではありませんが」
夕食会での今井氏のこの発言は、複数の委員も確認しており、その件について激論があったこともすでに報じられている。しかも、今井氏は雑談のかたちながら、その額まで述べていた。
先出の委員の話だ。
「あくまでも雑談のかたちですが、今井さんは12兆円出せればよいと、明確に額を口になさいました」
残り2300キロの建設資金は20兆円を超える。それを保有機構から12兆円に抑えて出せば、20兆円に比べて大幅な圧縮になる。12兆円という額は、かねてから事務局が、閣議決定にうたわれた50年以内の返済を前提に、料金収入のなかから投資可能な額として提示していたものだ。
「20兆強を12兆に圧縮するだけでも小泉首相にとって成功だ、という意味に受け取りました」と、先の委員。
小泉首相は10月31日に、石原伸晃行革相に最終報告を11月末に前倒しして出すよう指示し、述べた。
「最終報告を尊重するから、責任を持って結論を出してほしい」
首相が今井氏の語った案を求めているとしたら、小泉首相こそは国民を欺く張本人ということになる。真偽を確認するため、今井氏に取材を申し込むと、一連の発言の有無についても、民営化委員会についても、いっさい取材には応じないということだった。