現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
(回答先: あと10年で石油値段2倍から3倍へ上昇。約20年後には石油時代の終焉をみることになる。日本の運命、惑星の人類の運命はどうなる!(色グラフ見て!) 投稿者 超青空 日時 2002 年 11 月 14 日 15:39:54)
超青空さん、こんにちは。
結論から言えば、このコンサルタント会社のレポートで浮き足立つ必要は
ありません。石油資源は有限ですから将来の枯渇に備えた対策が重要なの
は明らかですが、その程度のことは既に折込済みです。レポート自体は今
年8月に出されたもののようですが、採掘可能な埋蔵量などに関する新た
な事実やデータに対する言及はありませんでした。ですから、資源そのも
のについてのレポートではないでしょう。
以前、石油資源の将来について調べてみようとしましたが、ろくな資料を
見つけることができませんでした。一般人の感覚としては、これほど資源
の枯渇についての警告が流布されながら、その詳細な情報が提供されてい
ないことに憤りを感じました。以来、その件について調べるのは諦めてし
まいましたが、今では、次のように理解しています。
石油について科学的な埋蔵量のデータは存在しない。存在するのは、採掘
可能な埋蔵量という経営的なデータのみである。経営的なデータは石油会
社の利害に直結する内部情報であり、外部には石油会社が知ってもらいた
い情報しか公開されない。さらに、石油カルテルの存在が情報の秘匿を完
全なものにしている。
特に将来の採掘可能性については、石油会社自体も、長期的に信頼性のあ
るデータは持っていない。技術の進歩は予測不可能で、さらに、技術開発
へ投入される資金は石油価格に影響を受ける。石油価格は需要の問題であ
ると同時に、代替エネルギーの価格にも影響される。特に、他社の価格競
争力は不明である。これらの要素を総合的に加味するコンセンサスは存在
し得ない。唯一存在しえるコンセンサスは現状の価格と技術のみである。
このように背景を解釈すれば、このレポートは警告的な口調とは裏腹に、
石油資源は最低2022年までは大丈夫であると保証していることになり
ます。その辺りはレポートでも慎重な言い回し”石油時代の終焉の始まり”
を使っています。
仮定の増加率を元にした石油需要と供給量から将来の価格高騰を暗示して
いますが、これはこの手のレポートの作法のようなものです。需給で価格
が決定されるものならば、供給は増加しないと仮定しても、その高騰の過
程で需要自体が脱落して、その価格は実現されません。石油会社としては
高価格を期待するのは当然ですが、その価格を維持できる需要構造がなけ
れば、絵に描いた餅でしょう。
仮に石油価格が高騰したとしても、CO2あたりのGDPが最も高い日本
は、石油消費国の中で優位を際立たせるでしょう。価格が高騰した石油1
単位を使って自動車を2台生産できる日本は、同じ量で1台しか生産でき
ない国に安く輸出できるはずです。そんな需要そのものが存在しないのな
ら、そもそも石油価格は市場的な意味で高騰しません。
長々と書いてきましたが、このレポートの趣旨はそういった経済的な見通
しではなく、100%政治的なものです。
>That means Saudi Arabia, Iran, and Iraq "will all have to allow
>greater access by foreign companies to sustain production growth,"
>"However, as OPEC's share of production reaches 40%, the potential
>for it to begin controlling oil prices increases dramatically."
要は、「今後の石油需要の増加に対応するには、サウジアラビア、イラン、
イラクの資源を欧米の石油会社が開発しなければならない。それだけでは、
OPECの市場占有率が高くなりすぎて、市場を支配されてしまう危険があ
る。だから、我々(米英)が中東そのものを支配しなければならない」、と
いうことなんでしょう。
>The resulting economic shocks will rival those of the 1970s, as oil
>prices "could double and treble within 2 or 3 years as the world
>changes from oil abundance to oil scarcity. The world is facing a
>future of major oil price increases, which will occur sooner than
>many people believe," that report concluded.
それにつけても思い出されるのは30年前のローマクラブのレポートと石油
ショックです。著名な学者の連名で”もうすぐ石油は枯渇する”と警告して
いたように記憶していますが、それが確かだったならとっくに枯渇している
はずです。当時、すっかり騙されてしまいましたが、金兌換停止後のドルを
石油で支えるための仕掛けだったのですね。
あっしら氏が現行のドル基軸体制は危機的な状況にあると分析しておられま
したが、だとすると、アメリカは10年程前から検討していたといわれてい
るコモディティ・バスケット体制への移行を真剣に企図しているのかもしれ
ません。そう言えば、近年、金鉱山会社のM&Aが進み、業界が再編されて、
ほぼ寡占的体制に移行したようです。EUからすると比較的健全な基盤を持
つユーロを立ち上げたばかりですから、”ドル潰れろ”と期待していたのに、
アメリカが力技で切り替えしてきたというところでしょうか。国連によるイ
ラク武器査察の決議でフランスが粘っていたのもそのあたりかもしれません。
どういう合意が成立したものやら。
日本としては、どちらに転んでもいいように決定的な対立を避けつつ、エネ
ルギー効率のいい産業・社会構造を実現しておきたいものです。