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スターウォーズへの序章
未来の戦争は人工隕石が活躍しレーザー光線が飛び交うスペースバトルに?
マイケル・オハンロン(ブルッキングス研究所)
宇宙戦争は、もはや遠い未来の話ではないようだ。米空軍は自分たちを「航空宇宙統合戦力」と呼び、管轄範囲は地表近くから大気圏外の軌道領域まで及ぶと主張している。空軍宇宙軍の長期計画では、宇宙空間での戦闘作戦も検討されている。
軍事未来学者は、さまざまな兵器の構想を思い描いている。たとえば、宇宙空間で敵のミサイルや人工衛星を撃ち落とすスペースレーザー。地上の標的を素早く攻撃するために、高度数百キロの低軌道上に兵器を配備するアイデアもある。大気圏の外側を跳ねるようにして飛ぶ未来型の航空機を開発して、3〜4時間で地球を一周させるプランも検討されている。
もっとも、こうしたアイデアが2012年までに現実のものになる可能性は低い。問題はコストではなく、技術的な制約だ。現状をみるかぎり、今後10年間でテクノロジーが革命的に進歩することはあまり期待できそうにない。
それでも、未来学者のSF的な構想の実現を視野に入れた基礎研究は始まっているはずだ。敵の兵器や軍事施設を自動追尾して爆破する小型のハンター・キラー衛星など、技術的なハードルが比較的低いものは、実際に配備が開始されているかもしれない。
その一方で、米軍は敵を瞬時に捕捉して攻撃するため、衛星テクノロジーの改良をさらに進めているはずだ。
アメリカと旧ソ連は冷戦時代から、スパイ衛星を使って軍縮条約の遵守状況を監視し合い、万一の核攻撃にそなえてきた。現在では、地上の目標物を撮影する画像衛星の技術は米ロ以外の国々にも広まりつつある。
だが、まだ米軍には大きな強みがある。衛星を使って実際の戦闘を支援する技術を確立したことだ。この技術のキーワードは二つ。GPS(Global Positioning System:衛星利用測位システム)を利用した高精度の誘導システムと、通信の広帯域化だ。
20基余りのGPS衛星を中心とする誘導システムのおかげで、米軍は悪天候や樹木などの障害物の有無にかかわらず、正確に標的を爆撃できるようになった。
リアルタイムで情報共有
GPSは10年ほど前から巡航ミサイルの誘導に使われていた。しかし本格的な利用が始まったのは、昨年のアフガニスタンでの軍事作戦からだ。このときGPSで誘導した兵器は5000以上。旧式の爆弾に2万ドル程度の安価な誘導装置をつけ、標的からほぼ10メートル以内に着弾させることができた。
アフガンでは、広帯域通信も威力を発揮した。無人偵察機プレデターが撮影した画像を米本土の司令部で同時に確認できたため、タリバンやアルカイダの追跡に役立った。特殊部隊の兵士が地上で発見した標的を、10〜20分後にはB52戦略爆撃機で攻撃できたのも、通信データの容量が広帯域化で飛躍的に増えたおかげだ。
50万の兵力が投入された91年の湾岸戦争に比べ、アフガニスタンの作戦に参加した兵士は10分の1ほど。しかし、通信網の帯域幅は5倍以上に広がった。
10年後には、標的の捕捉から攻撃までに10〜20分かかる現行のシステムは、すっかり時代遅れになっているかもしれない。
米軍は最終的なねらいを「情報優位性」や「戦場の透明性」といった聞き慣れない用語で表現する。要するに指揮官から前線のパイロットや歩兵まで、全軍が敵の正確な情報をリアルタイムで共有できるようにすることだ。今後10年で使用可能な帯域幅が2〜3倍になれば、この目標の達成はもっと容易になるはずだ。
10年以上先には、さらに画期的な宇宙兵器の開発が可能になる。たとえば――。
■宇宙レーザー砲
レーガン政権が80年代に打ち出した戦略防衛構想(SDI:Strategic Defence Initiative)の目玉だったアイデア。現在の未来学者の間でも支持する声が多い。
宇宙空間での燃料補給をどうするかが問題だが、原理としては巨大な望遠鏡と大型のレーザー装置を組み合わせるだけ。ただし、実現はかなり先になるだろう。国防総省は現在も年間数千万ドルを投じて研究を続けているが、開発のめどは立っていない。
■運動エネルギー型宇宙対地兵器
一部の軍事未来学者が提唱する「人工隕石」。タングステンなどの材料で作った細い棒状の物体を宇宙空間に大量に配備しておき、遠隔操作で付属のロケットを噴射させ、地上の標的に衝突させる。敵の駐屯地や動きの遅い標的が攻撃目標で、隕石と同様の圧倒的な衝撃波で敵を一気に壊滅する。
問題は精度に欠けることだ。現行のICBM(Inter Continental Ballistic Missile:大陸間弾道ミサイル)と比べても大差はない。
■追尾衛星ネットワーク
現行の画像衛星は地上の精密な写真やレーダー画像のデータを提供できるが、特定の標的の上空を通過するのは数時間おきに数分間だけ。衛星の数も十分ではない。
国防総省は将来的に、20〜40基ほどの追尾衛星を連動させて、標的を常時監視できるようにしたいと考えている。計画実現のネックは、衛星の複雑な動きを制御するソフトウエアの開発とコストだ。
国防総省が考える現実的な製造コストは、衛星1基当たり1億ドル前後。だが、同レベルの性能をもつ現行の衛星は10億ドルもする。10年以上先になっても、そこまでの大幅コストダウンはむずかしいかもしれない。それでも、基本的なコンセプト自体は検討に値する。
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宇宙の軍事利用のアイデアは、まだまだある。
たとえば、衛星にもっと多くのセンサーと防御用兵器を搭載して、攻撃を受けたら反撃できるようにする。安価で再利用可能なロケットを開発して、衛星打ち上げのコストを下げる。巨大な画像衛星を小型衛星のグループに置き換えて、故障や攻撃された場合のリスクを減らす……。
ほとんどのアイデアは、10年後も研究段階のままだろう。だが、断定は禁物だ。そもそも発明とは、予測不可能なものなのだから。
(筆者はブルッキングス研究所上級研究員)
宇宙兵器の利点と欠点
未来の軍事技術もいいことばかりじゃない
利点
現状では、衛星に敵の攻撃は届かない
欠点
いずれ格好の攻撃目標になる可能性も
利点
世界中のどこでも即座に攻撃できる
欠点
地球に「兵器の網」をかける費用が高い
利点
ICBMよりも敵の防御がむずかしい
欠点
国際法上、使用を正当化するのは困難
資料:THE RAND CORPORATION