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(回答先: イラク攻撃の費用、2000億ドルに達する可能性 〜日本の負担は? 投稿者 たにん 日時 2002 年 9 月 24 日 17:10:44)
http://www.cool-knowledge.com
吉田繁治氏<時事評論:米国のユニラテラリズム(単独覇権主義)の帰結>より
【目次】
1.「先制攻撃」に見る論理構造
2.単独覇権主義(unilateralism)の展開
3.ロシアとの協調戦略の意味
4.日本にとっての北朝鮮と、米国にとっての北朝鮮
6.北朝鮮の経済
7.ロシアの経済政策
8.米国のユニラテラリズムのほころび
9.米国が財政赤字になるという大転換
■3.ロシアとの協調戦略の意味
ロシアのプーチン政権とは、「石油を含む資源の輸出」を図るロシア
の経済振興策と協調する路線をとることによって、「米露同盟」とも
言える関係を作った。これが、資源戦略で、米国とロシアの利益を一
致させる米露の接近です。
プーチンにとって、ロシア経済の振興には機軸通貨であるUSドルが
必要です。まだ信用のないルーブルでは、商品を売ってくれない。
USドルを得るには、資源の輸出しかない。
ロシアの兵器を含む工業生産物は、イラクや中東では買っていますが、
西側諸国はロシアの資源にしか関心がない。
▼大陸西欧を押さえる
米国にとって、ロシアと協調することの世界戦略での意味は、統一通
貨ユーロで同盟する大陸西欧を抑え、「西欧の自主性」に制限を加え
るためです。ロシアが、社会民主主義の西欧につけば、彼我の勢力が
逆転します。
(注)ドイツとフランスは、米国のイラク「先制」攻撃の予告に対し
反対を表明しています。他方ユーロに加盟していない英国は、逆に米
英軍でのイラク攻撃を先導する役を果たしています。
▼中国を押さえる
米国とロシアの協調には、もうひとつの狙いがあります。新興工業国
として、アジアでパワーを増している中国の封じ込めです。
中国の北の脅威であるロシアを利用することで、中国には勝手な行動
を許さないという戦略です。
ブッシュ政権は「ロシアカード」を、単独覇権主義(ユニラテラリズ
ム:unilateralism)に有益なものとして使っています。
▼戦略
以上をまとめれば、ブッシュ政権は、
(1)プーチンのロシアと協調路線を手段に、
(2)ユーロ諸国と中国を押さえ、
(2)米国の、世界に対する外交的・経済的覇権を強化・維持すると
いう、「外交的ゴール」を設定していることになる。
【ゴール】
ブッシュ政権のゴールは、ユニ・ラテラリズム(単独覇権主義)であ
るという仮説を設定することで、複雑に見える国際政治に、明確な筋
が通ります。
【英国】
英国ブレア政権の立場は、ブッシュ政権の世界戦略にのって、国際世
論を形成する先導役を果たすことを通じ、経済的に漁夫の利を得るこ
とでしょう。米国の資源戦略に絡んで、英国経済の浮揚を図るブレア
政権のユーラシア戦略と言ってもいい。
【日本】
こうした太い筋で、日本と北朝鮮の問題を解釈すれば、なぜ突然、小
泉首相が北朝鮮を訪問したかが、分かります。
■4.日本にとっての北朝鮮と、米国にとっての北朝鮮
マスコミでは、拉致(らち)問題一色になっている感があります。拉
致は犯罪です。「今後、日本国が、他国からの犯罪に対し、国民の生
命を守ることができるかどうか」という日本国への信頼にまで及びま
す。瀋陽事件の記憶も、新しい。
拉致の経緯の説明、および北朝鮮の国家としての謝罪と損害賠償への
姿勢を抜きにして、日朝の国交正常化と、金正日政権が期待する開発
援助(ODA)が困難であることは明白です。
本稿では、拉致問題の帰結の重大さは意識しながらも別の角度から、
北朝鮮問題をとらえてみます。
▼日本にとっての北朝鮮
日本にとっての北朝鮮は、
(1)防衛では、ミサイルと不審船、そして核兵器開発疑惑、
(2)金融では、4つの「朝鮮信用組合」への総額1兆4000億円
枠での「日本政府の公的資金」の投入と、その受け皿の問題、
(3)犯罪的な、拉致(らち)問題、
(4)外交では、戦後賠償とODA(開発援助)を含む、国交正常化
問題でした。
こうした、困難な問題をはらみながら、米国のイラク開戦前夜と言え
る今、金正日(キム・ジョンイル)総書記は、なぜ小泉首相との会談
を望んだのか?
▼米国にとっての北朝鮮
ブッシュ政権は年頭教書でイラク、イラン、北朝鮮の3国を、テロ活動
を支援する「悪の枢軸」としています。
ブッシュが最初にとった戦略は、国際的マネーロンダリング(資金洗
浄)によるテロ組織の資金源を断つことでした。日本から北朝鮮へ流
れているであろうマネーも含まれます。
小泉首相の北朝鮮訪問に、ブッシュ政権が期待した役割は、日本が北
朝鮮への開発援助の姿勢を示すことで、融和策へ向かうことでしょう
。
イラク攻撃のためには、極東での軍事的不安定の要素を減らし、極東
に配置している米軍を中東へ集結する必要があるからです。
北朝鮮の外交政策に影響力をもつのは、ロシアと中国ですが、今回の
小泉訪問の受け入れでは、プーチンが糸を引いた形跡があります。
小泉首相は、金正日との首脳会談に、政治生命をかけた。国民の支持
は63%(世論調査)に高まり、小泉政権を支持しています。理由は、
危険で困難な問題に取り組んだ、政治姿勢の評価です。
■5.北朝鮮の経済
ソ連からの資源を含む援助で経済を成り立たせていた北朝鮮は、
91年のソ連崩壊以降は、援助が止まって経済では困難に陥っていま
す。
各種統計で開きがありますが、イメージとしての数字は以下です。
【97年のIMF試算では】
1979年の1人あたりGDP 1920米ドル
1996年の1人あたりGDP 480米ドル(5万8000円)
で、17年前の25%に低下。
【他の推計では】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1997年のGDP 218億ドル(2兆6000億円)
人口 2400万人
1人当たりGDP 900ドル (10万8000円)
工業生産高 −7%から−9%(92年)
失業率 不明
インフレ率 不明
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輸出 9億ドル(1080億円:92年)
相手国:中国・日本・ロシア・韓国など
輸出商品:鉱物・冶金製品・水産物・農産物
輸入 20億ドル(2400億円:96年)
相手国:中国・ロシア・日本・香港など
輸入商品:石油・穀物・コークス・機械類
対外債務 120億ドル(1兆4400億円:96年)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
国家予算
歳入 193億ドル(2兆3160億円:92年)
歳出 193億ドル(2兆3160億円:92年)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
国家予算で、GDPのほとんどすべてを統制する経済です。
80年代は、ソ連を筆頭とする共産圏から年14億ドル(1680億
円)レベルの援助がありましたが、その後はほぼゼロになっています。
強い輸出産物はないため、外貨の獲得には海外からの援助しかない。
実態経済は、上記の数字よりずっと悪いでしょう。
金正日政権は、政権の維持のためにも、日本からの開発援助資金を引
き出す必要がある。
■6.ロシアの経済政策
▼シベリア鉄道から、韓国までを結ぶ狙いがある
極東におけるロシアの狙いは、
シベリア鉄道を中国経由で北朝鮮と結び、
北朝鮮と韓国の鉄道を結んで、
モスクワからの一貫コンテナ輸送路を確保することです。
北朝鮮と韓国の鉄道を結ぶことは、南北朝鮮の会談の議題でもありま
す。障害は、北朝鮮国内の鉄道の荒廃であり、修復には22億ドル(
2640億円)が必要というロシアの試算があります。↓
http://www.iijnet.or.jp/IHCC/infra-joho-kaisetu-020415.html
問題は、そのマネーをだれが出すかです。国際政治では、復興資金と
してジャパンマネーを使うことが容易です。
(注)拉致問題の今後の帰結によっては、日本政府が北朝鮮支援の資
金を出すことは、国内政治的には困難になります。
▼ロジスティクスによって、製品(product)が商品(merchandise)に
なって、価値(money)を生む。
資源や生産物、工業製品は、大消費地との間に安定した輸送路が確保
されて始めて、価値を生む「商品」になります。
これが「市場経済」です。
製品品質+生産地と消費地を結ぶロジスティクス網→商品価値
生産だけでは、お金を生む商品にはならない。過去のソ連には計画生
産はあっても、「在庫管理」の概念、つまり製品が流通によって商品
になるという概念が弱かった。
生産され工場と倉庫に溜まった在庫は「配給予定商品」として生産価
値が計上されていたのです。それがソ連のGDPだった。
国土の制約条件から、陸路に頼らざるを得ないロシア経済の生命線は、
鉄道網でのコンテナ輸送です。広大な国土でのトラック輸送では、
鉄道の何倍もコストが高くなる。
【ソ連時代の閉鎖流通】
80年代までのソ連は、周辺国は併合し、周囲に独立した共産国を配
置して、鉄のカーテンの内部での経済的盟主でした。
ソ連の兵器と石油・天然資源を、周辺国の工業製品・日用品と交換す
る経済を作っていた。工業国であった東欧の輸出先はソ連でした。
▼中国の工業化も、海洋コンテナ輸送から
中国のトウ・小平は、沿岸に外資と技術を呼び込む経済特区を作り、
資金では香港と台湾の華僑網を使うことで、工業を浮上させた。中国
大陸への投資の1位と2位は、香港と台湾です。
中国は、東シナ海の沿岸部に加工貿易の工業都市を作ることで西側世
界へのコンテナ輸送を行うことができるようになった。
(中国の今後の、大きな経済成長(=内需成長)は、大陸内の輸送路
作り、つまりロジスティクス網作りにかかっています)
(補注1:日本の産業と輸送)
日本の戦後の工業化も、沿岸工業地帯によって果たされました。世界
との、加工貿易に必要な海洋ロジスティクスに島国が有利だったこと
が、輸出入を起動源とする戦後経済を作った。安価で安全な大量輸送
路は、経済にとってそれくらい重要です。
他方、日本国内での土地と輸送コストの高さは、多段階流通でのハイ
コストと組み合わさって、国内生産〜流通の不利さを生んでいます。
これが輸入物価が、比較すれば安くなる原因のひとつです。国内の陸
路は、安価な物流網ではない。90年代後期の流通業での成長産業は、
ほぼ例外なく製品輸入産業ですね。
道路公団と輸送の、世界と比較したときのハイコスト構造は、国内の
製造業を空洞化させる原因でもあります。こうした視点を、小泉政権
や国土交通省はもっているのでしょうか?
(補注2)日本の25倍の広大な大陸、米国にとっては、国内輸送は
トラックです。米国でも海外からの、大型船でのコンテナ輸送が有利
になる構造がある。米国の$4000億の貿易赤字は、米国が大陸で
あることと無関係ではありません。
大消費地のニューヨークを抱えるニュージャージー州には、海岸を見
渡せば、世界中のコンテナが集まっています。国内輸送より有利だか
らです。(補注終わり)
▼伝統的な南下政策
ロシアでは周辺国との関係は、帝国であったソ連の崩壊で切れたまま
です。ソ連が仕掛け、97年に敗れたアフガン戦争は、カスピ海原油
の輸送路の確保という狙いをもったものでしたが、逆にソ連崩壊の契
機になった。
ロシアは、西側世界との貿易において、「南下政策」を図らないと経
済が浮揚しない。北の海は、凍結と流氷で海路にはならない。
西側世界への、効率的な大規模輸送路の構築は、ソ連経済の再生に、
必須のものになります。
北朝鮮が示した小泉首相訪朝の受け入れは、
ロシアの輸送路の確保という戦略、
およびブッシュ政権のイラク開戦準備にのったものでしょう。
■7.米国のユニラテラリズムのほころび
▼地域紛争への無力
世界戦略の大きな部分での米国の単独覇権主義(unilateralism)は、
小さなレベルでの地域紛争には、無力を示します。
例えば、1947年以降の英国からの分離独立を果たしたインドとパ
キスタンの、カシミールの帰属をめぐる55年間の紛争は、今はイン
ド・パキスタンの核戦争の危機までをはらむものですが、米国の介入
は、ほとんど無力です。
同様に、自爆テロを繰り返すパレスチナとイスラエルとの紛争に対し
ても、米国の仲介は効果を生んでいない。
米国は、国益が明確に絡む巨大国家との間では、ゴールを設定し、戦
略を描くことができます。対ロシア、中国、ユーロ諸国、および対日
本です。
大国間の戦略では、米国の単独覇権主義が、いまのところ有効に働い
ているように見えます。しかし、その下の地域紛争のレベルでは、無
力であるということが続発する。
▼ほころび
地域紛争とは異なりますが、最近では、9.11のテロ首謀犯の、大
半の国籍がサウジアラビアであったことを理由に、7月の国防総省の
諮問委員会ではサウジアラビアを敵国と位置づける報告すらなされて
います。
アラブ系銀行とサウジ王家を相手取り、同時多発テロの遺族を代表し
て、3兆ドル(360兆円)の訴訟を準備している弁護士もいるとい
う。(ニューズウイーク9月4日号)
イスラム過激派のみならず、アラブ諸国一般の米国の政策への反発に
は根強いものがあります。
また、テロ組織とテロ支援国家の間の関係は、その証明がほとんど不
可能です。相手国は、公式声明では否定するからです。そうなれば、
米国の戦略で国際世論を説き伏せることはできない。
ブッシュ政権の単独覇権主義は、ロシアとの同盟的な協調路線が基底
にあって初めて成功します。それを考慮すれば、軍事力で突出する米
国の一国覇権主義戦略も意外に弱い基盤に基づいていることになる。
▼語られざること
更に、語られざる重大な問題は、米国が核兵器のパワーで、地域紛争
を含んで世界を制圧できる時代は、終わっているということです。こ
れは、恐怖をもたらす事実でしょう。
核開発を含む科学技術の拡散は、誰も止めることはできない。小国と
言えども、米国の反対勢力が核兵器とミサイルを持つことは、ますま
す容易になる。10年単位で見れば、どの国も、軍事力での強制的な
制圧はできない。
■8.米国が財政赤字になるという転換
米国経済は、貿易の面では、年間$4000億(48兆円)を超える
貿易赤字(=ドルの海外への散布)を続けています。
年間48兆円のドルを海外へ散布しながらも、$機軸通貨体制が破壊
されなかった理由は、
(1)軍事を含む、米国経済への世界からの信任
(2)日本と中国を2大黒字国として、2カ国の中央銀行が、米ドル
を外貨準備として貯め、米国債を買ってきたことに基づきます。
▼90年代後期は、機軸通貨体制の維持から強化の時期だった
加えて、IT・通信企業が、米国経済を先導していた1998年から
は、米国は企業利益と個人所得が好調で、減税にもかかわらず、国家
財政は黒字を記録していた。
財政黒字が、国際通貨の面で米ドルの強さの根源になっていました。
【連邦財政の黒字:邦貨では$1=120円換算】
1998年 $692億( 8.3兆円の黒字)
1999年 $1255億(15.1兆円の黒字)
2000年 $2364億(28.4兆円の黒字)
2001年 $1271億(15.3兆円の黒字)
2002年 −$1650億(19.8兆円の赤字)
(米行政管理予算局)
貿易のみでなく、米国の財政への着目は、重要な視点です。
1998年から2001年までの国家財政の黒字は、米国経済の強さ
の根底だったと言えます。
1992年の財政赤字、$2904億(35兆円)は8年後の00年
には$2364億(28兆円)の黒字まで、63兆円分も回復してい
たのです。
50兆円に近い貿易赤字にも関わらず、米国が世界のマネーを集める
ことができたのは、国家財政の黒字があったからです。それが、20
02年で、一転して赤字に転じたことの意味は大きい。
(注)日本は米国の逆で、貿易(サービスを含む)では01年は3兆
9000億円の黒字で、国家財政は、年30兆円以上の赤字です。
財政赤字は、国家の政策の幅を縮小します。
▼2002年に急転した国家財政の内容
ITバブルの崩壊が広くは認定されず、セプテンバーイレブンも起こ
っていなかった2001年1月時点では、財政黒字の10年間の長期
見通しは、$5兆6000億ドル(1年平均で$5600億:67兆
円)でした。
つまりITバブルの崩壊があっても、21世紀の最初の10年の米国
財政は、他の先進国の財政赤字に比較すれば、洋々たるものがあった。
【2001年1月時点】
02年〜11年の財政黒字予想$5.6兆(672兆円:10年間)
年間で67兆円、10年で672兆円もの財政黒字が予想されていた。
財政黒字は、米国国債の利払いと償還の確実性を意味します。
貿易は赤字でも、米国債の信用は、世界で群を抜いていた。
世界のマネーが集まる理由は、財政の黒字予想からきていた。
(注1)ところが、この財政黒字には「公的年金基金の黒字」と「高
齢者向けの医療年金黒字」である$2.9兆(348兆円)を含みま
す。米国は、日本ほど高齢化が進んでいないため、年金基金などは黒
字になります。
(注2)野党である米国民主党は、この2.9兆円を財政黒字に含む
べきではないと主張しています。
【ブッシュ政権の対策】
共和党のブッシュ政権は、10年で$5.6兆の財政黒字予想を背景
に、以下のような、経済浮揚政策をとった。
[10年間で$1.35兆の減税(01年6月の決定)]
そしてセプテンバーイレブン以降の01年12月には、景気減速から
、10年間の所得税の減収が$1.5兆と見積もられることになる。
[10年間の当初予想からの所得税減収 $1.5兆]
更に、テロ事件直後には、$400億の緊急歳出、航空業界への$1
50億の緊急支援措置がとられます。こうした緊急予算措置を含む歳
出拡大は4000億ドルが予想されています
テロ対策関連で軍事支出の増加予想は、今のところ$3000億です。
これは、年間国防予算($3150億)に匹敵する額です。
(注)今後、国防予算の拡大がどの程度かは、予断を許しません。
▼以上を総合すれば
以上を総合すれば、
01年1月の時点での$5.6兆の財政黒字予想(10年間)から、
01年12月時点では、今後10年間で、
$1.35兆の減税
$1.5兆の所得税の減収予想
$0.4兆の歳出拡大
$0.3兆の軍事費拡大
合計で$3.6兆円の財政黒字の減少があり、
$2兆の黒字に減額されています。
$2兆の黒字から、民主党が主張するように10年間の公的年金基金
の黒字と、高齢者向けの医療年金黒字分の合計、$2.9を除けば、
$0.9兆(108兆円)の赤字(10年間合計)になる。
年金や保険の基金は、投資信託(=株)と債券のポートフォオで運用
されます。株が下がり、金利が上昇して債券価格が下がれば、その分
だけ、基金は蒸発します。株はすでに00年春のピークから40%以
上の下落です。
▼方向は多極分散のネットワーク
90年代末にピークを迎えていた米ドルの機軸通貨体制は、貿易赤字
に加えた米国財政の赤字化で、大きく揺らぐことになる。
本稿では、米国の9.11以降のユニラテラリズムを仮説にして、世
界経済の焦点にもなる米国財政の赤字化という事態への、考察を加え
ました。ブッシュ政権の戦略的な意図にも関わらず、世界の趨勢は、
多極分散の方向へ向かっているように思えます。
日本は、米国に寄り添いつつも国益のための自主外交を図るべき時で
す。それが世界の安定をもたらすはずです。インターネットは中心の
ない分散ネットワークであるからこそ、問題をはらみつつも、安定し
ている。こうしたインターネット的な相互関係が、21世紀の国家関
係でしょう。核兵器の開発の容易さで、長期で見れば、一国の軍事力
で世界を制圧できる時代は終わるでしょう。
インターネットで縦横に結ばれる世界と企業は、地球の裏とのビジネ
スプロセスの連結までを含んで、米国のダントツの軍事力を背景にし
た単独覇権の世界イメージとは異なるはずです。