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09/20 16:49 擁護、忠誠語るだけの国民　内心に渦巻く将来への不　外信61
共同
　生活の隅々まで張り巡らされた密告網、外国の自由な報道を事実
上シャットアウトした情報鎖国―。　　　　　　　　　　　　　　
　イラクでは約二十年、記者の取材には当局の監視が必ず付く。人
々が口にするのは体制擁護論ばかり。国への忠誠を示さなければ生
きていけないこの国で、住民の本音を聞き出すのは極めて難しい。
ただ、将来への不安が内心に渦巻いているのは確かなようだ。　　
　「フセイン大統領はクルド人の諸権利を全面的に認めてくれた世
界で唯一の指導者です」。イラク北部の要衝キルクークで、イラク
の翼賛政党の一つ民主クルド党キルクーク支部のファーデル・アブ
デルカリム支部長は、一語一語を吟味するように語った。　　　　
　キルクークは少数派クルド人が多数居住する地域。「米国の攻撃
が始まれば、トルコ国境の反政府クルド人組織がキルクークに侵攻
するかもしれない。その時どうするのか」と質問すると、立ち会っ
ていたイラク情報省の職員一人とキルクーク市情報局職員三人のそ
ばで、支部長の表情が見る見るこわばった。　　　　　　　　　　
　「ブッシュの戦争は石油という私益のためだ。北にいるクルドの
（反体制派の）二大政党は米国から金をもらっている。なぜ彼らが
政府に盾突くのか分からない。クルド人はイラクという祖国の利益
に奉仕しなければならないのに」。絞り出すように話すと、支部長
はため息をついた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　重苦しさは首都バグダッドでも同様だ。首都有数のアルサドリー
ヤ市場の表通りで大きな食肉店を営むモハマドさん（３４）は、米
軍がバグダッドに来たら「武器を取って戦うよ。みんな大統領には
大きな恩顧を被っている」と話す。　　　　　　　　　　　　　　
　ブッシュ大統領の演説はテレビで見たこともないという。衛星テ
レビの視聴は、アラブ系の音楽や映画など娯楽中心の十四チャンネ
ルに限って認められる。加入料が中間層の月収とほぼ同じ二百ドル
（約二万四千円）、聴取料が月二十ドルでは、庶民には高根の花。
当局の無用の注目も呼ぶ。　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　理髪店を構えるハリドさん（２６）は一年前にこの場所に開店。
客は平均八、九人だ。散髪代は一人七百五十―千ディナール（約四
十六―六十二円）で「悪い稼ぎではない」という。　　　　　　　
　米国の攻撃は「ないんじゃないの。だけど攻撃されたら戦うよ」
。にやにやしながら答える。客も「米軍が来たら、この辺の住民は
みんな武器を持って戦うさ」と叫んだ。（バグダッド共同＝木庭慎
吾）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
（了）　　０２０９２０　１６４８　　　　　　　　　　　　　　
[2002-09-20-16:49]

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