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「9-11テロ〜すべての悲劇はブッシュから始まった」ジャン・シャルル・ブリザール(週刊現代9/14号)
あの悪夢から1年。(WE WILL NEVER FORGET)グラウンド・ゼロには「絶対に忘れない」と垂れ幕が掲げられている。だが、アメリカは単なる悲劇の主人公なのだろうか?ブッシュと石油資本、そして石油王国とビンラディンの深い結び付き。フランス人ジャーナリストが事件の真相に迫る。
ベルリンでの軍事的脅迫
2001年7月、トム・サイモン元パキスタン大使を代表とするアメリカ側は、ドイツの首都ベルリンで、アフガニスタンのタリバン政権側に対してこう持ちかけました。
「オサマ・ビンラディンをアメリカに引き渡せば、アフガニスタンには『黄金のカーペット』が敷かれることになる。もし断れば『爆弾のカーペット』が敷かれることになるだろう」
つまり、莫大な経済援助と大量爆撃のどちらかを選べ、という軍事的脅迫を行ったのです。この交渉はもちろん非公式なものであり、サイモン元大使がアメリカ政府を正式に代表していたかもわかりません。ただ、この会談の報告はタリバン政権上層部にすぐに上げられ、最終的にはビンラディンにも伝えられました。そして、この非公式会談のわずか1カ月半後の9月11日に、同時多発テロは起きたのです。
こう語るのは、ジャン・シャルル・ブリザール氏だ。アメリカ上院議員の政策アドバイザーも務めたブリザール氏は、フランス情報機関の内部に精通する金融ジャーナリスト。パリを拠点とする『インテリジェンス・オンライン』編集長のギョーム・ダスキエ氏との共著『Forbidden Truth』がフランス、アメリカなどでベストセラーになっている。
日本でも『ぬりつぶされた真実』という邦題で上梓されたばかりの同書は、サウジアラビアと国際テロリズムのネットワークを金融面から分析し、ビンラディンが数多くのイスラム教の慈善団体を通じて巨大な資金を獲得し、テロ活動を行ってきたという証拠も示している。
本誌はニューヨークに滞在中だったブリザール氏を訪ね、インタビューした。
ビンラディンは、いまも生きているでしょう。もし同時多発テロ事件のような大規模な攻撃を彼が仕掛けたのならば、彼は米国からの報復行為を覚悟して、テロ直後には、それから逃れるための準備を完了していたはずです。ブッシュ政権は彼の資金源を絶とうとしていますが、上手なやり方ではありません。ビンラティンはいまでも湾岸諸国に抱える銀行組織から資金を得ているだけでなく、テロ組繊に寛大な銀行網を通して、テロの支援活動を行っているのでしょうから。
ビンラディンを匿っているのはサウジアラビアしかありません。サウジアラビアは94年にビンラディンの財産を凍結し、追放したことになっています。が、これは彼らの表向きの説明に過ぎません。
我々が握っている証拠によると、少なくとも98年まで、ビンラディンはサウジアラビア国内にある自分の口座を使用することができたし、スーダンやイエメンからサウジアラビア国内にある自分の会社をコントロールしていたことが分かっています。ビンラデインは、これらの会社を利用して自らのテロリストネットワークを支援していたのです。
また、サウジ国内の慈善団体の多くは、長年にわたって彼を支援してきました。これらの慈善団体がサウジアラビア政府やその官僚によってコントロールされていることを考えれば、彼の活動に対してサウジアラビアがどれだけ深く関与していたのか理解できるでしょう。
歴史的に見ると79年、サウジアラビア政府は、その情報機関の責任者であるトゥルキ王子を通じてビンラディンをアフガニスタンに送り込み定住するように要請しました。アラブ義勇兵を迎え、旧ソ連兵と戦う「基地」を作るためです。ビンラディンらはアラブ兵を迎え、彼らに必要な書類や武器、弾薬などを与えました。そしてその組織が後に「アルカイーダ(基地)」となったのです。
私が最も強く言いたいのは、ビンラディンという男はサウジアラビアが作り上げた作品であり、今でもそうだということです。そして、将来的に最も重要なことは、テロリストネットワークが他の形をとって復活することをいかに食い止めるかということなのです。サウジアラビアはパレスチナのハマスを支援し、世界中のアルカイーダ組織の支援を非公然に続けています。これを食い止めることが最も大事なのです。
すべては石油を巡るゲーム
私は、同時多発テロやビンラディンについて知りたかったわけではありません。なぜ世界があのテロ事件にまで至ったかを理解したかったのです。その広大な謎を完全に解明するには、まだまだ長い年月がかかるでしょう。
ただ、この背景として、最大の要因といえるのが石油利権であることは現時点でも明確です。米国はまず経済的、軍事戦略的、外交的な理由から、サウジアラビアあるいはタリバンといった政権と同盟関係を結びました。こうした政権が世界中の過激な原理主義運動者たちを支援していることに、ある程度目をつぶってきたのです。
米国とサウジアラビアをめぐる政治的ゲームは、石油の一言ですべてを説明できます。
プッシュ政権は閣僚のなかに石油メジャー資本から多くの幹部を登用しており、彼らの経歴やバックボーンが政策に反映していることは確実です。
米国はサウジアラビアの石油における最大の消費者であり、一日に170万バレルも消費しています。この数字は15年前に比べて2倍の消費量です。そしてサウジアラビアは米国製武器の最大の顧客であり、90年代には総額390億jもの武器を購入している。要するに、アメリカの経済的繁栄は、石油を独占的に所有するカネ持ちとの同盟関係に依存しているのです。
アメリカ石油資本が進めていた一大プロジェクトがあった。カスピ海沿岸諸国に埋蔵されている巨大な石油資源を確保するための、180億ドル相当の巨大なプロジェクトだ。そのひとつにアフガニスタンを通るパイプライン建設があった。
このパイプラインを確保するために、アメリカ石油資本はタリバン政権に接触してきた。タリバン政権は非道な人権抑圧政策や宗教的な狂信主義を深めていたにもかかわらず、ブッシュ政権は米国石油資本を守るためにこの事実に目をつぶってきた。
だが、あまりにも過激なビンラディンのテロ活動により、ブッシュ政権は冒頭の会談通り、タリバン政権に最後通牒を突きつけたのだと、ブリザール氏は見ている。だが結果は、ビンラディンの暴走を招く最悪の事態となった。
米国の反テロ戦争により、カーライル・グループほど財政的な恩恵を受けている企業は見当たりません。
カーライル・グループがパイプライン計画へも関与していたはずです。そのカーライル・グループとは何か?このグループはビジネスと投資問題のプロフェッショナルたちが集まった国際的なネットワークであり、一言で言えば石油と武器に関する専門家たちが集まるセールス組織といえます。
カーライル・グループへの主要な投資家はブッシュファミリーの側近、仲間で占められています。理事会の顔触れを見るとブッシュ父子の取り巻きたちばかりです。父親ブッシュ大統領時代の元国務長官、ブッシュ政権のホワイトハウス首席補佐官などです。
ブッシュ大統領父子もカーライル社の理事を務めるなど深い関係を保っています。
また、同グループはサウジアラビアとのビジネスに非常に深く関わり、サウジアラビアのほとんどの主要なビジネスグループと取引を行っています。サウジアラビア王室もビンラディン一族もカーライル・グループを通してブッシュファミリーとつながっていると言ってよいでしょう。
ラッシュファミリーの会社
ブッシュ大統領が直接ビンラディンと関係があるとか、同時多発テロ事件がブッシュ大統領とビンラディンとの秘密のつながりから出てきた事件だという人もいます。私はその説には与しません。
経済的取引を目的とした米国あるいは西側諸国とサウジアラビアとの関係と、サウジアラビア自身が独自に進めてきたビンラディン、アルカイーダとの関係とは別に考えるべきです。もしこの関係を混同すればとてつもない陰謀のセオリーが出来上がってしまいます。
しかし、はっきり言えることはビンラディン一族がサウジアラビア国内において裕福なファミリーであり、もっとも重要な経済的グループの一つであるという事実です。
ビンラディン一族はサウジアラビア王国の意思によって築き上げられました。しかも途方もないくらい大きなグループです。多くの米国企業はビンラディン一族と商取引を行ってきました。米国テキサス州にあるいくつかの企業にもビンラディン一族は投資を行ってきました。そして、これらの会社はブッシュファミリーによって支配されています。
アーブスト社(スペイン語でブッシュの意味)、ハーキン社などが、さまざまな代表者を立てながらプッシュファミリーの利益を代弁しています。彼らの多くは心地よいオフィスに座りながらビンラデ書いた7ページにわたるメモのコピーを入手しました。アテフは、明年11月の米軍による空爆で死亡したとされている、これまでアルカイーダの軍事部門の最高責任者と考えられてきた人物です。しかし、98年に書かれたと見られるこのメモで、彼は軍事的なことにいっさい触れていません。手榴弾やAK47など武器に関してもまったく触れていません。
そのいっぽうで、彼は外交問題について書いています。アテフはメモの中で、タリバンと米国側、そしてビジネスリーダーたちが中央アジア諸国を通過する石油パイプラインに関する交渉を進めていたことに関して、ビンラディンが一部始終を把握していたことを明らかにしています。
さらに彼は「我々は米国が世界中の石油をコントロールしたがっていることを知っている、彼ら(米国)は石油パイプライン計画を推進したがっている、そしてタリバンの経済的な利益のためにも我々は米国側と引き続いて交渉するべきだ、我々は米国によって脅迫されてはならない」とも書いているのです。
テロ事件再発の可能性は高い
ブッシュが経済援助という餌でタリバン側と密約を結ぼうとし、間抜けなことに、それがビンラディンに筒抜けだったことは、このメモも裏づけています。石油資本の思惑と、ビンラディンやアルカイーダのテロ活動には深いつながりがあるのです。
8月4日号の『タイム』誌によると、クリントン政権はアフガニスタンのアルカイーダに対する攻撃を準備していた。しかしその計画は、ブッシュが政権を握った直後に中断された。再びブッシュ政権がアフガン攻撃を検討したのは、01年8月のことで、タリバン側とのパイプライン建設交渉が決裂した直後からである。
9月の初めまでにブッシュ政権のアフガン攻撃プランは、ペンタゴンによって承認されていた。そして9月9日には国家安全保障大統領諮問会議がその攻撃プランを詳細にまとめ(その攻撃は10月に予定されていた)、ブッシュ大統領の承認と作戦実行の許可を求めるに至った。その2日後、同時多発テロ事件が起きたのである。
今後、米国が再び攻撃されるか、という質問に対してですが、米国に対する脅威は昨年の同時多発テロ事件以前より、もっと高くなっています。
なぜなら彼らのテロ組織は世界中に分散してしまったからです。しかもその分散したグループは非常に高い組織的な規律や資金源を確保し、世界中で復活を狙っています。
彼らは自らの存在感を誇示するためにも再びテロ活動を行う必要があるからです。現在でもチュニジアやパキスタンで続発している個人テロを見てください。こうした個人テロはもとより、大規模なテロ事件が起きる危険性は、残念ながら非常に高いと見なければなりません。
米国は同時多発テロ事件の教訓を正しく学んでいるようには思えません。米国は同時多発テロが起きる前までビンラディンはスーダンかあるいはアフガニスタンにいて、管理下に置かれていると考えていました。CIAや他の情報機関はビンラディンが決して米国領土を攻撃できないと考えていました。
しかしありえないことが起きました。ジョージ・ブッシュ大紋領はテロリズムを根絶すると言います。しかし再び言いますが、テロリズムの根源(元凶)に到達しない限り、テロリズムを根絶することはできないのです。
インタビュー・構成/太刀川正樹(ジャーナリスト)