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【ワシントン中島哲夫】米国防総省は15日、大統領と議会あての02年国防報告を公表した。報告は、テロ攻撃などから米国を守るためには時には先制攻撃も必要であり、防衛には「あらゆる手段を用いる」として核兵器使用の可能性も排除しない姿勢を示した。また、大統領が命令すれば米軍は敵国の政権転覆のためにも動くと宣言するなど、特にイラクに対する軍事攻撃の可能性を示唆したものと解釈できる内容を含んでいる。
この国防報告は、米同時多発テロ後の昨年10月に発表された4年ごとの国防政策見直し(QDR)や核配備見直し(NPR)など各種報告を総合したもの。先制攻撃に関する部分などは、ブッシュ大統領が演説で打ち出した内容を取り込んだものと言える。
冒頭の総括メッセージでラムズフェルド国防長官は「敵は従来なかった驚くべき方法で米国を攻撃しようと狙っており、この攻撃は不可避的に起きる」と指摘。現在のテロとの戦争に勝利しつつ、過去とは異なる戦争に備えるためには米軍の改革が必要だと強調し、(1)不可欠な作戦基地の防衛と大量破壊兵器、運搬手段の阻止(2)接近困難な遠隔地への兵力展開と維持(3)監視、追跡、迅速な攻撃による敵の聖域排除(4)情報技術の向上と各軍の連携ネットワーク革新(5)情報システムの防衛(6)宇宙への展開能力維持と防御――の6目標を掲げた。
報告はアフガニスタン攻撃で得た教訓を列挙した部分で「米国防衛には(敵からの攻撃の)予防と、時には先制攻撃が必要だ」とし、「最良の防衛は良質の攻撃」と言及した。また「敵は、米国が彼(敵)を倒すためにあらゆる手段を用いることを知るべきだ」とも指摘した。
さらに、米軍の地球規模の展開に触れた部分では「大統領の命令を受ければ、敵の領土を占領したり、政権交代の条件を作る能力」を含む力量を保有すると明言している。
報告はまた、アフガン攻撃では地上の特殊部隊と無人・有人の偵察機、精密誘導兵器を含む空爆戦力との連携が大きな効果を上げたと指摘。今後、この種の作戦能力を高める方向性を示した。
また、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とイラン、イラクを改めて「悪の枢軸」と名指ししたほか、アジアでは「相当な資源の基盤を持つ軍事的な競争者」の登場可能性を指摘して、中国への警戒心をにじませた。
◇平和願う人々が抗議の声
「先制攻撃もありえる」「核兵器使用も辞さない」――。米国の攻撃的な国防報告が明らかになった16日、米原子力空母の佐世保港入港に反対した人たちや被爆者などから抗議の声が挙がった。終戦記念日の翌日、反戦平和を祈る人々は暗たんたる気持ちに沈んだ。
原子力空母「エイブラハム・リンカーン」が入港した長崎県佐世保市。港口を見下ろす佐世保市野崎町の路上で入港抗議のシュプレヒコールを上げた佐世保原水協の山下千秋理事長は、米政府の国防報告に対して「二つの世界大戦の苦い教訓から、もめ事を話し合いで解決しようというのが、人類が築き上げたルール。それを真っ向から踏みにじるもので、弱肉強食がまかり通る」と非難した。
佐世保地区労のメンバーら約200人が参加した「迎え撃ち集会」でも米国の姿勢や核兵器使用への懸念の声が出た。今川正美衆院議員は「リンカーンはテロ報復作戦に参加し、イラクにもほこ先を向けるかもしれない」と指摘。中崎幸夫・長崎県平和運動センター議長は「ブッシュ大統領は核兵器の使用を辞さずと言っている。アメリカの戦争と日本の戦争協力を阻止しよう」と話した。
また同日、博多港に入ったイージス巡洋艦の寄港に反対する福岡市の市民グループ「平和・人権・環境福岡県フォーラム」の前海満広事務局長(47)は、核兵器使用も辞さないという内容に不安を隠せない。「ぞっとしますね。冷戦時代は核が抑止力になっていたが、それが崩れた今、米国にはもう歯止めが効かないのでは。日本は唯一の被爆国として、言うべきことはたくさんあるが、小泉首相がどこまで強く米国に言えるか……」
一方、被爆者団体、長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄(すみてる)副会長(73)=長崎市大鳥町=も米国を強く批判した。「テロを口実に“暴力”で自国の考え方を押し付けようとしている。こうしたやり方こそがテロであり、国際社会の中で決して許されないことだ。ましてや核兵器の使用は地球を破滅させるものであり、絶対に許せない。日本政府は被爆国として米国に強硬に反対を主張すべきだ」
国際医療NGO、ペシャワール会の福元満治・広報担当理事は「国家がやるべき最低限のことは、戦闘状態をつくらないことと民衆を飢えさせないこと。米国がやろうとしていることは全く逆で、世界に戦闘と飢餓をばらまこうとしている。ブッシュ大統領は一度アフガンの地に立ち、自分たちが何をしてきたのかを知るべきだ。悪の帝国は米国の方ではないかと思えてしまう」と話した。(毎日新聞)
[8月16日12時50分更新]