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ロシアン・メジャーの野望
ロシア石油企業の新グローバル戦略 −「世界週報」8月1日−
http://book.jiji.com/sekaishuho/
大阪商業大学総合経営学部教授
中津 孝司(なかつ・こうじ)
ロシアの産油量は、今やサウジアラビアを上回ってしまった。ロシアはOPEC(石油輸出国機構)には加盟していない。元来、OPECの盟主であるサウジとは対立軸にある。サウジは1バレル25ドルの水準を死守しようと躍起になっている。しかし、それでも25ドルという水準は高い。だから、OPEC非加盟産油国はどうしても増産へと走ってしまう。石油消費国は代替エネルギー(特に天然ガス)への転換を図る。当然、これは石油価格の低下要因となる。そこでまた、OPECが減産する。OPECは今、この悪循環に陥っている。
一方、ロシアの石油企業は20ドルの水準でも十分に利益を確保できる。無論、消費国にとっては安いに越したことはない。この点において、ロシアと石油消費国の思惑が一致する。
ロシアは6月のカナナスキス・サミットで正会員入りを果たした。その約1カ月前、ロシアとアメリカは新エネルギー・パートナーシップを宣言した。これまで外交面で譲歩を繰り返してきたロシアであるが、石油という重要なカードを握ることになった。今のところ、ロシア産石油の輸出市場は欧州に限られている。だが、ロシア産の石油がアメリカに安定供給されるようになれば、アメリカとしては輸入先をサウジからロシアにシフトできる。
昨年のテロ以降、アメリカとサウジとの関係は正常化していない。アメリカ国内にはイスラム過激派の温床はサウジだとの見解がある。ペルシャ湾岸産油国は今もって外資の対油田参入を拒んでいる。結果、欧米メジャーの投資はロシアやカスピ海に向かう。ロシアとアメリカの利害がここで一致する。欧米系メジャーによる本格的な対ロシア投資に今後拍車が掛かる。ロシアの石油企業もそれを期待している。両者は共存共栄の関係にある。
ただ、アメリカとしては、ロシア産の石油が中国に輸出されるのを阻止したいところであろう。だが、ロシアは市場拡大を狙う。中期的には米ロ中の3カ国が石油を巡って複雑な関係に陥ってしまうかもしれない。
あるいは今後、ロシア、カスピ海産石油を巡って、米中によるグレートゲームが展開されていくかもしれない。中国では石油消費量が確実に伸びていく。ロシアはアメリカ市場と中国市場とを同時に掌握することになる。これがまさしくロシアン・メジャーの野望であり、21世紀のグローバル戦略なのである。
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