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「阿修羅」サイト書評担当のビルダーバーグです。10日ぶりのお目もじです。新刊書をご紹介できることをうれしく思います(笑)。
1冊目は、日本放送出版協会から出た「アフガン戦争の真実」(金成浩著)です。著者は在日韓国人の学者で、琉球大学助教授です。
旧ソ連が1979年の年末にアフガンに正規軍を動員、第2次アフガン戦争が始まったわけですが、なぜソ連がアフガン侵攻に踏み切ったか、について、最近、公開された秘密文書から、派兵決定のプロセスと背景を分析しています。ブレジネフ、スースロフ、キリレンコ、グロムイコ、ウスチノフ、アンドロポフ、コスイギンら今となってはなつかしい名前が並びます。いずれも故人(キリレンコは生きているのかな)で、ソ連の指導部がいかに高齢だったか、にもビックリします。タラキ政権時代から、アフガン側からの派兵要求が何度もあり、検討を続けていたようですが、結局、タラキを殺して権力を握ったアミンが米ソをてんびんにかけた外交戦略を展開したことが、派兵の引き金を引いた、ということのようです。
68年のチェコの民主化運動(ソ連軍が介入)、70年代後半のポーランドの「連帯」の動き(ソ連軍は不介入)との比較も行われています。ソ連政治局の議論がほぼ正確に分かり、また、ブレジネフ以下の署名もついた政治局決定の文書も公表されるなど、やはり、ペレストロイカ以降の情報公開はすごいものですね。でも、ビザンチン帝国風の神秘感がひとつの”不気味な魅力”でもあった旧ソ連も、ホワイトハウス並に情報がリークする権力体制になってしまったのは、陰謀話の好きな小生としては、いささか、寂しい気もします。
2冊目は文春から出た「陰謀の世界史」という本で著者は海野弘さん。都市論や米国の大衆文化(ポップカルチャー)、パリの研究などで実績があり、著作も多数、出している人ですが、まさか、陰謀論や「トンデモ本」の世界にまで、手を伸ばして来るとは、ちょっと予想外でした。60年代の米国の大衆文化の研究からケネディ暗殺やウオーターゲート事件に関心を持ち、米国の歴史を通底している「陰謀」に興味を持ったようです。
陰謀話を30のアイテムに分類し、紹介しています。ネットからの情報でなく、雑誌、新聞。本の情報がベースですので、そう目新しい話は披露されていませんが、英語に堪能な海野氏だけに、未訳の文献もかなり引用されています。オサマとアルカイダ、ダブヤパパとジュニアにも1項目を割いています。
こういう本来は、非政治的な分野、事象を得意とする博識家も「陰謀論」に取り組むあたりにも21世紀の不気味さ、不透明さ
が浮き彫りにされている、と言えそうです。どちらもそう高価な本ではないので、夏休みにでも一読されては如何。