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ビルダーバーグさま
ご丁寧なレスポンスほんとうにありがとうございます。
まず、68年パリ五月革命に端を発しながらも米国東海岸アイビーリーグの最も優秀だった学生に運動が飛び火し、新左翼運動が世界化した契機はアメリカにあると理解しています。したがって新左翼運動の概念装置は日米含め世界的に共通の枠組みがある一方、あわせて当然日本は日本の独自の概念も発達したもの、と考えられます。アメリカ大都市圏には必ず、一つは左翼系’進歩派系の本屋さんがあって、棚にはトロツキー本訳書解説書などをふくめ左側のものがなんでもずらりと並んでいます。南米の反政府活動をモニターしている人びともすくなくないため、こうした本は需要がそれなりにきっちりあるようです。また新左翼系の流れを組む比較的小型の大学院などもあります。
さて、日本独自で育ち、アメリカには存在していない新左翼用語や概念がこの本に散見されるとしたら、おっしゃるとおりこの本は日本人が書いた可能性、あるいは一部執筆に参加した可能性も否定できなくなってきます。で、わたしもこわいですから、慎重を期すべく、今一度それらしい言葉や用語が本当にこの本に埋め込まれているのかいないのか、なめるようにチェックしてみました。
しかし、結論を申せば、率直にいって一つもみあたらないのですよ、わたしとしては。日本的に込み入った概念がみあたりません。ごくごく一般的な平たい用語で、英語に訳出するのに何の苦労もいらない概念ばかりです。
これ以上お手を煩わせるわけにはまいりません。したがって、この本をいつか再入手された段階でかまいませんので、今一度虚心坦懐に御検討の上、どれが日本独特の新左翼系概念にあたるのか御指摘願えればまことに幸いです。私にとって、歴史を知るかたからの御教示はたいへん勉強になるのです。
また、やはり、この著者の提示している情報ソースの問題ですが、これは厄介です。ビルダ−バ−グさんも首をかしげていらっしゃるとおりで、やはり日本国内の情報空間から入手できないものがあまりに多いといわざるをえません。また著者はアフガン=イスラム通信からの情報である、と明示しているところが一ケ所は少なくともありますが、何度もくり返し明示しているのは、やはりアルジャジーラなのです。この衛星放送、私も幾度も直接みたことがあり、スタイルはCNNそのもので、その洗練された映像におどろいています。アラビア語を母国語とする聴視者にうかがうと、CNNで流れている情報とは80%異質なのだそうですが、ともかく膨大な情報がそこから流されています。ただ、とにかく、アラビア語だけなのです。
この本をかくにはフルタイムで執筆にあたらなければならないですが(アラブ諸国に住んでいるならまだしも)日本での新左翼運動経験があるが、現在アメリカかカナダに長期滞在している日本人でアラビア語を高度に解し、アルジャジ−ラを観ながら一次情報をとり、アメリカ人キリスト教徒になり切った上で、しかし正義はイスラム側にありと熱い論理を展開する。いったいこの人は普段アメリカやカナダでなにやっているひとなんでしょう?コレ何者?動機も不明、何をやっているのかも想像すらできない。とにかく著者が日本国内にはすんでいない、ことは賛成していただけるようですが、だからといってアメリカ、カナダに住む日本人といっても、人物像としては、理解に苦しみ、想像をこえるものがあり、わたしとしてはその方向での推測はお手上げという感じです。わたしは像を結べません。
ただ、私の詳しくない日本の新左翼運動の思潮のスケッチを御丁寧にしていただき、まことに恐縮です、大変勉強になります。心よりおん礼申し上げます。今後ともご教示ご指導願えれば幸いです。
追)
アメリカ独立宣言を書いたのはジェファーソンですが、実はこれ、植民地独立気運を決定的にしたパンフレットであるコモンセンスを書いたトマス=ペインの万民平等、富の公平な配分、自然権、男女平等論、奴隷解放論(後の「人間の諸権利」という本に詳しい)などをうたったradical思想が反映されています。西洋近代の左翼思想の源流はペインにあります(例えばイギリス労働党はペインの思想を原点としています)。マルクス/エンゲルスではありません。そしてマルクス、エンゲルス、ペインとも、その思想を、アメリカ先住民(北米、とくに北東部)の洗練された政治カルチャーを徹底研究して範をとっています(エンゲルスなどはっきりそれをいっていますし、マルクスも晩年、もっと先住民政治文化を研究したかった残念、とかいています)。小室直樹氏の先日でたばかりの日本国憲法の解説本などはジェファーソンがロックの思想をとり入れたなどと平気でかいてありますが、全くの間違いです。ジェフーソンは基本的には欧州の政治モデルと政治思想を心底唾棄していた人物で、彼もペインとならび、アメリカ先住民の政治経済モデルに魅せられてアメリカの政治システムのデザインを試みました。いわゆる西洋近代政治思想(自由/平等/民主主義)と左翼思想は、北米先住民の政治経済、政治思想をコピーすることをスタート地点においています(アメリカフェミニズム理論も先住民コミュニティーの女性の高い地位を研究することが原点で、女性研究者が彼等のコミュニティーに住み込み、フィールドワークしました)。日本を含め左翼思想を論じるものたちはこの地点からの思想分析をしていないため、隘路に陥りいびつ化し窒息してしまいました。独立宣言や日本国憲法にみえるいわゆる幸福追求権なども、先住民の憲法規範を淵源とした概念なのです。マルクス主義もふくめ西洋近代政治思想、近代憲法の基礎理念の源流は北米先住民です。つまり、日本国憲法の起源はマッカーサー憲法ではないのです。マッカーサー憲法は媒介しただけです。