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森沢典子さんのメールより転載致しました。
要請書
日本国外務大臣川口 様
はじめまして。
私は現在イスラエルにおいて身柄を拘束されている日比野真と言います。私は川口さんに外務大臣として公式にイスラエル政府に対して抗議を行っていただきたいと思い、お手紙を差し上げました。
私は6月1日の朝からパレスチナ自治地域であるナブルスの難民キャンプ・バラタで国際連帯のための活動を行っていました。具体的には難民キャンプは、イスラエル自衛隊(イスラエル軍)によって軍事的に制圧・占領されており、パレスチナ住民は 道に出ることができず、家の中に閉じ込められています。そのため怪我や病気のパレスチナ住民は病院に行くことすらできません。また救急車ですら自由に道を通ることができません。私は志を同じくする他の外国人と共にケガや病気のパレスチナ住民近くのクリニックに行く時にイスラエル兵に撃たれないように同伴してきました。怪我人に同伴するというただそれだけの事を活動と呼ばなければいけない状況に私は本当にぞっとします。また、占領下の難民キャンプではイスラエル兵が一戸ずつ家宅捜査を行っていま
す。しかし家宅捜査といってもパレスチナ住民に銃を突きつけ、家族を一部屋に監禁し、家財道具を破壊し、家の壁を壊し、14才から45才のすべての男性を強制連行するというようなことがその実体です。私はそういった現場に出向き、もちろん本来は違
法であるこういった行為をしないようにイスラエル兵士に話しかけ、またイスラエル兵士の行う行為の目撃者となってきました。ひどい話ですが、外国人である私たちの目撃がある場所では家財を破壊する行為が公然と行われる確率が低くなるのです。
さらに、私たちは道を歩く時には両手を挙げ、敵意のないことと非暴力の意志を示し、兵士に対して挨拶をし、対話的に話しかけてきました。兵士一人ひとりに対しても尊厳を尊重し、誠意を持って接してきました。人が攻撃的になり易い軍事的な現場において兵士を含むすべての人が他者への敬意と理性とを少しでも取り戻せるようにとのことことからです。
こういった活動を行っていた私を含め8人が6月1日の夕方に身柄を拘束されました。私は身柄拘束と連行の過程もそれ自体も違法なものであると考えています。しかしここではその事には触れません。
しかし、イスラエル兵が私たちを拘束し難民キャンプから強制退去させたのは、その本当の理由は難民キャンプでイスラエル軍がしている事を私たちに目撃されると困るからだ、ということに留意して下さい。イスラエル軍は国際社会に知られては困るようなことをしているからこそ私たちを拘束したのです。イスラエルによる難民キャンプの軍事的占領と占領下でのパレスチナ住民にす
る扱いは非人道的な行為であるのはもちろん、他者の尊厳への敬意を欠いたまったく間違ったものです。しかもそれだけではなく、パレスチナ自治地域への侵略行為や占領はイスラエル政府自身が同意したオスロ合意にすら反する違法な行為です。こうした
パレスチナ住民に対する尊厳を侵す不当で違法なイスラエルの行為こそが状況をさらに悪化させています。
私は川口外務大臣に対してたった今もイスラエル政府とその軍隊によって行われている占領・侵略行為に対して日本政府として公式かつ明確に抗議することを強く求めます。暴力(それがいかなる理由によるもであっても)によってではなく、対話によってパレスチナで起きている問題の解決をはかる可能性を広げるためには国際社会の介入が不可欠です。私は私個人でできることを試みようとしましたが、それもかないませんでした。パレスチナ人の尊厳を侵し、オスロ合意にすら公然と反するイスラエル政府のパレスチナへの侵略と占領を止めさせるために、日本政府として積極的に行動されることを川口さんに対して重ねてお願い申し上げます。
私は日本国政府の方針の多くに反対の立場ですが、在テルアビブ日本大使館(領事館?)の領事のエハラさんには他者としての敬意を持って接していただき、誠実かつ丁寧に仕事をする姿を見せていただきました。末尾になりますがお礼と共にご報告させていただきます。と同時にそういった他者への敬意を持った態度はたまたま日本国籍を持っていた私だけが得られるべきではないということ、パレスチナに生まれ育ったパレスチナ人たちがその生活の中でも得られるべきものであることにすべての人が思いを馳せ、行動されることを願ってやみません。
西暦2002年6月4日
日比野真