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印パ紛争の行方 〔インターネット行政新聞〕 投稿者 PBS 日時 2002 年 6 月 03 日 21:42:00:

■印パ紛争の行方


カシミールが危険な兆候を見せている。もともと紛争が継続していた地だが、パキスタンがミサイル実験を行ったことでその緊張はますます高まっている。インド、パキスタンの両国は核を保有しているだけに、もしこの地域で核戦争が起きたら、千二百万人が直接的被害を受けるだろうとの観測もある。この紛争の奥には、朝鮮半島情勢も絡んできているようだ。

■カシミール問題

 カシミール問題とは何か? それはこの地域の帰属問題である。

 インド、パキスタンの両国は、第二次大戦後の昭和二二年(一九四七年)に英国から分離独立を果たした。パキスタンはイスラム教国家となり、インドはヒンズー教中心でありながら信教の自由が認められた国となった。この独立の際、カシミールの住民の大半はムスリム(イスラム教徒)でパキスタンへの帰属を望んだのだが、当時のカシミール藩主がヒンズー教徒だったためインドへの帰属を選択した。これが元となり、両国は独立直後からカシミールの帰属を巡って戦争状態に突入した。

 昭和二四年(一九四九年)、インド・パキスタンの戦争に国連が仲裁に入り、カシミール全域の三分の二を占める南東部がインドに帰属し、残りがパキスタン領となったが、紛争はなお継続的に続行された。昭和四六年(一九七一年)には第三次印パ戦争が勃発し、その後に現在の「実効支配線」が決定された。インド側はこの実効支配線を国境としているのだが、パキスタンはなお全地域の領有を主張し、住民投票を要求している。

 一九七〇年代、八〇年代を通してイスラム原理主義が活発化すると、インドにはヒンズー至上主義が台頭、カシミール情勢は複雑化の一途を辿った。やがてインド領である「ジャムカシミール州」にパキスタン勢力下の武装ゲリラが越境し、テロ事件が多発するようになった。

 平成十年(一九九八年)にはインドが核実験を行い、すぐにパキスタンも続いて核実験を成功させ、両国は核開発、ミサイル開発競争を行うようになり、国際的な注目を集めた。平成十一年(一九九九年)五月〜七月には大規模な軍事衝突が起きたが、昨平成十二年(二〇〇〇年)に入ってやっと真剣な休戦和平への動きも見られるようになった。インド領カシミールで最大の武装勢力であるヒズブル・ムジャヒデンは、昨年夏にはインド政府当局と和平交渉に向けての会談を行ったと伝えられる。しかしその直後に、九・一一の米国中枢テロ事件が発生している。

■印パの苦悩

 独立以来紛争の絶えないカシミールだが、インド・パキスタン両国がこの紛争のために費やすカネも莫大なものである。正確な数字はもちろん不明だが、一般的な試算としてカシミール紛争に関する費用は年間で、パキスタンが一千万ドル、インドが四千万ドルをかけているとされる。

 こうした財政負担が両国の国家財政を脅かしていることは間違いない。しかもそれはパキスタンにとっては非常に厳しい負担である。

 こうした状況を正確に把握して書かれたと思われるのが米国防総省が提出した『アジア2025』の西南アジア展望である。これによるとパキスタンは「二〇二五年までに溶解する」とされる。

 昨年の九・一一米中枢同時テロは、タリバーンやアルカイダによるものではなく、パキスタンISI(軍統合情報部)が起こしたものだという説もある。流石にこの説には同調し難いが、この説はパキスタンの置かれた立場をよく物語っている。現実に今、世界中の諜報関係者たちは、九・一一米中枢同時テロの真犯人はともかく、その資金の大部分をパキスタンが負担した可能性が高いと見ている。

 かつてソ連軍がアフガンに侵攻した時には、米国はパキスタンに対する莫大な援助を行ういっぽうで、アフガンのソ連軍と対峙したものだった。だが、ソ連が撤退し東西冷戦が終結するや、パキスタンに対する米国の資金援助は停止され、米国は一気にインド寄りになっていった。米国が近未来の中国との正面対峙に向けて、戦略的にインド重視となるのは当然の話だ。

 だがインドもまたカシミール問題で苦悩している。

 インドは信教の自由が認められている国である。国民の約八割はヒンズー教徒だが、一割、数にすれば一億人のムスリム(イスラム教徒)を抱えている。一億のムスリムといえば、インドネシアに次いで世界二番目の数である。昭和二二年(一九四七年)のインド・パキスタン分離独立の折り、多くのイスラム教徒たちはインドからパキスタンへと脱出した。だが、イスラム教徒でありながらインドにいることを望んで残った人々が、今、一億人の数に達しているのである。

 インド国内のイスラム教徒たちは非常に不安定な状況に追い込まれている。一部にはカシミールのパキスタン帰属化を賛成、支援する動きもあるが、多くのイスラム教徒たちは分離独立の際に「インドを選択したこと」に誇りを感じている。だが、もし『アジア2025』の予測通り近未来にパキスタンが溶解して無くなったらどうなるか……。パキスタンの大部分はインドに呑み込まれるだろうが、それがインド国内にヒンズー対イスラムの内戦を引き起こすことは間違いない。

■日印関係改善を求めるインド

 平成十二年夏に森喜朗(当時首相)はインドを訪問し世界中の注目を集めた。当時の森は政権安定のためにASEAN諸国を歴訪すると考えられていたのだが、なぜかインドへの接近を試みた。森首相の引退は、経済不況に加えてハワイ沖でのえひめ丸沈没事故の対応を巡り、マスコミ主導の下での「辞めろ辞めろ」の国民大合唱の成果とされるが、実際はインドに接近を試みた宰相に対し、米国ブッシュ政権が嫌悪感を露にしたことが真因と考えられる。

 来るべき「米中直接対峙」の時代を予測し、米国は現在、積極的にインドに接近している。だが、インド政府は今なお、日本との関係改善こそが本筋と考えている。

 インド独立戦争にはわが国の南機関が乗り出し、現実に四千名もの戦死者を出しながらこれを戦い抜いている。そうした理由もあり、インド国民の親日ぶりは日本人が驚くほどだ。インド国民の間では戦後から一貫して今もなお、世界でいちばん好きな国は「日本」なのだ。

 カシミール紛争が緊張度を増しつつある今年五月連休明けに、四人の人物が日本を訪れ、水面下での交渉を行った。四人の内訳は、前パキスタン大使のパルタサ・ラティ氏、インド国軍中将サティシュ・ナムビア氏、リサーチ&アナリスト(インド情報機関)アトゥール・ラズラ氏、在日大使ラジャ・セガール氏である。彼らは日=印関係の強化を求めるためにやってきたのだが、それは二年前に森喜朗が行ったIT産業の交流などといった経済的な関係強化を求めたものではない。彼らはわが国に対し、軍事的・戦略的同盟関係を求めてきたのだ。

 その関係を構築することが、印パのカシミール紛争を解決に向かわせ、西南アジアの安定に寄与し得るというのだ。だが、わが国政府中枢には、こうした世界情勢を見極める能力を持った政治家が皆無なのだ。

 日印関係の強化は、わが国の対中国(支那北京政府)政策の切り札となる場合もあり得る――今回来日した四人のインド要人たちは、こうも語っていた。

 川口外相は今回のカシミール紛争を危惧して、パキスタンのムシャラフ大統領宛に親書を出したが、インドには出していない。このことは、わが国政府がインドに対して一応の親密感を持っていることを明らかにはしているが、いまだわが国がこの地域に強大な影響力を保持していることを理解していない。インドにしろパキスタンにしろ、アジア諸国はかつての宗主国英国、あるいは世界の警察を自認する米国を信用しているわけではない。大アジア主義に立ち、インド独立のために数千の血を流した日本の後ろ楯を求めているのだ。それがわが国政府首脳には見えていない。

■ムシャラフ大統領の思い

 パキスタン大統領ムシャラフは、恐らくわが国政府首脳より遥かに世界情勢を的確に把握していると思われる。その把握の中には米国防総省作成の『アジア2025』の記述(パキスタン国家の溶解)も存在していただろう。

 ムシャラフ大統領の思想はイスラム過激派とは完全に異なる。彼は穏健派イスラム教徒であり、あるいはイスラム教徒の枠を超えた理想主義者なのかもしれない。ムシャラフの理想はケマル・アタチュルク(近代トルコ共和国の祖)であり、理想の国家形態はトルコ共和国なのだろう。そのムシャラフは、アフガンのタリバーン政権打倒のために米軍を自国に招き入れ、キリスト教国家である米国軍をパキスタン国内に留まらせることによってイスラム原理主義勢力を排除させた。それはイスラム国家であるパキスタン国内のイスラム勢力から重大な批判を浴びることとなった。

 遥か離れた日本から傍観すれば、ムシャラフの動きは理解できないものではない。だが、イスラム国家パキスタンは、ムシャラフの行動で思想混乱状況に陥ってしまった。この状況打破のためにムシャラフは国民信任投票を行ったのだが、この数字が間違いなく意図的操作によるデッチ上げだろう。パキスタン庶民大衆はこんな作り事の数字に騙されるものではない。だからこそ、ムシャラフは別な手段で国内を一つに纏める必要があった。それが今回のカシミール紛争でありミサイル実験なのだ。

 カシミール紛争を通して一つに纏まる方向を見いだしたパキスタン。だが、それは当然ながらインドを刺激することになってしまった。

 ムシャラフは、決してインドと戦闘を開始しようなどとは思っていない。同時にインドのバジパイ首相もまた、パキスタンとの戦闘を望んではいない。だが、ムシャラフは現在、イスラム過激派に注文をつけられる立場にはなく、バジパイも怖じ気を見せるわけには行かない背景を持っている。――インドもパキスタンも、戦争を始める気などまったくないのだが、引くに引けない国民感情も背負っているのだ。

 こうしたなか、パキスタンはミサイル実験を強行した。ガウリ2、あるいはシャヒーン、ハトラと呼ばれる短・中・長距離ミサイルの実験であり、これらはいずれも核弾頭が搭載可能なミサイルである。

■アジアの憂鬱

 カシミールを舞台にインド・パキスタン両国が対峙するなか、地対地弾道ミサイルの実験が行われたことに、インド政府当局は静観の構えを崩していない。いっぽうでパキスタンのムシャラフはミサイル実験直後に「インドとの戦争を望むものではないが、その用意はできている」と、あたかも今回のミサイル実験がカシミール紛争を考慮したかのような発言を行っている。

 カシミールにおける印パ両軍の本格的対峙、そしてパキスタンのミサイル実験は国際社会に異常な緊張をもたらした。英国はストロー外相の派遣を決定、ブッシュ米大統領とプーチン露大統領はサンクトペテルブルグで緊急会談を行い、印パ紛争解決に向けての連携を図ることを国際的に明らかにした(五月二五日)。その翌日には、ブッシュ大統領はフランスでシラク大統領と印パ問題を討議、やはり印パ紛争を速やかに収束させることで合意を表明している。

 世界が危惧しているのは、インド・パキスタンともに「核保有国」であることだ。万が一、両国の戦争が核使用に及んだらどうなるのか……。米国防総省によると、印パのカシミール紛争で核が使用された場合、最悪で両国に一千二百万人の死者が出るという。

 たしかに、印パがここまで真剣に対峙する状況になってしまった以上、国家中枢に戦争意欲がなくても突発的に大紛争が展開される恐れは十分にある。とくにイスラム過激派が住民の多数を占めているジャムカシミール州あたりでは、何が起きても不思議ではないのだ。その現実はまさに憂慮すべき事態なのだが、同時にわれわれはパキスタンのミサイル実験の本質を見極める必要がある。

 なぜ、この時期にパキスタンはミサイル実験を行ったのか?

 パキスタンの保有するミサイルとは、そもそも何なのか?

 少なくとも、インド・パキスタン両国首脳はその理由を知り抜いている。そして米国もまた、それを熟知している。――だから、下部組織の突発的激突がない限り、印パのカシミール紛争は大戦争に発展することはない。

 そうした状況を理解しているからこそ、わが国マスコミが印パの激突をどんなに煽ろうが米第七艦隊はインド洋に艦隊を展開しようとしない。旗艦キティホークは、五月末現在なお日本太平洋海域から一歩も動こうとはしていない。

 パキスタンが実験を行ったミサイル――ガウリを中心としたこのミサイルの正体はすべてノドン・ミサイルなのだ。今年(平成一四年・二〇〇二年)三月にはCIA(米中央情報局)ロバート・ワルポールがこの事実を上院政府活動委公聴会で証言している。

 ガウリ・ミサイルとは、十年以上昔に北朝鮮が旧ソ連から仕入れたスカッド・ミサイルの改良型ノドン・ミサイルである。平成十年(一九九八年)四月にパキスタンは北朝鮮から購入したガウリ・ミサイルの発射実験を行っているが、この実験に際しては、北朝鮮軍部高官、技術者たちが大挙してパキスタンを訪れ、その実験結果データを入手している。

今回のパキスタンによるミサイル実験に、北朝鮮軍関係者が立ち会ったか否かについての情報は得られていない。しかし、実験に立ち会ったか否かは問題ではなく、間違いなく今回の実験結果のデータは北朝鮮に送られているだろう。

 最も重要な点は、ここにある。

 数十年に及ぶ印パのカシミール紛争。今回、その紛争を利用して、ムシャラフ大統領は自己の地位確立、パキスタン国家の意志統一を図ろうとしている。そしてインドもまた自国内にはびこるイスラム過激派壊滅を図り、米印・日印といった国際的協調路線を押し進めようとしている。そうした間隙を縫って、北朝鮮が自国ミサイルの実験を行ったのだ。

 なぜ、この時期に北朝鮮がミサイル実験を行う必要があるのか?

 北朝鮮がミサイルを発射するとしたら、その標的はどこか?

 印パ紛争を対岸の火事だと傍観している平和ボケ日本人に、この回答が出せるだろうか。

 ちなみに、北朝鮮が韓国をミサイル攻撃することなど、百二十%あり得ない。そしてまた、北朝鮮が先手を打って他国を攻撃することもまた、あり得ない。あり得るのは米国による北朝鮮攻撃が始まったときである。その米国はいま、北朝鮮・金正日王朝が崩壊(自壊)することを待っている状況にある。だがいつまでも待っているわけではない。その期限はいったい何時なのか? 答えは現在の国際情勢のなかに隠されている。

 

http://www.gyouseinews.com/foreign_prospect/jun2002/001.html

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