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ワシントン中島哲夫】中東和平の道を探る米国、ロシア、欧州連合(EU)、国連の4者協議が2日、ワシントンで開かれ、イスラエルとパレスチナ、アラブ諸国などを招く中東和平国際会議を、今夏の早い時期に開催することで合意した。パレスチナ衝突の解決だけにとどまらず、包括的な和平協議の場にしようとの狙い。ただ、先のシャロン・イスラエル首相の提案を受けた側面もあり、パレスチナやアラブ諸国の反発を招く可能性もある。
4者協議にはパウエル米国務長官とイワノフ・ロシア外相、EUからソラナ共通外交・安保上級代表と議長国スペインのピケ外相、さらにアナン国連事務総長が参加した。
協議後の会見で、パウエル長官は衝突が続くパレスチナの現状打開には(1)治安の回復(2)緊急人道支援と、将来のパレスチナ国家建設の基盤となる経済構築(3)政治交渉への取り組み――が必要だと強調。新たな国際会議はこれらを統合する形で扱うと述べた。
長官はまた、会議の開催日時や場所、参加者などは未定としたが、3日付ワシントン・ポスト紙などは米当局者の証言を引用し「欧州で、閣僚レベル」の会議になる可能性が高いと報じている。中東和平を目指す国際会議は先に、シャロン首相が「アラファト・パレスチナ自治政府議長を除外する」という条件で米国に提案した。
パウエル長官は一方、4月25日のブッシュ大統領との会談で8項目の和平構想を示したアブドラ・サウジアラビア皇太子の姿勢を高く評価。また、ジニ特使を近く中東に再派遣する方針も示した。米政府は当面、パレスチナやアラブ諸国に強い影響力を持つサウジアラビアと連携しつつ、停戦仲介を続け、国際会議の準備も進める意向だ。
イスラエル・パレスチナ衝突にからみ、パウエル米国務長官が2日発表した中東和平国際会議構想は、米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)の4者による共同提案の形をとっただけに国際的な重みがある。だが、イスラエル寄りとの批判が絶えない米政府の立場を深読みすれば「苦肉の策」という側面も否めなず、現状打開に向け楽観はしにくいところだ。
共同記者会見では、パウエル長官だけが雄弁だった。国際会議開催を発表しても記者団から質問が出ないと見るや、自ら進んで補足説明をした。その積極姿勢の裏には、パレスチナでの流血の事態に際しても、今秋の中間選挙でのユダヤ票を意識し、なかなか仲介に動かず、「イスラエル寄りの傾向が甚だしい」と批判を浴びてきた経過がある。
米連邦議会は2日、上下両院ともにイスラエル支持決議案を圧倒的多数の賛成で可決した。だが、政権側は実は、決議の自制を要請していた。停戦仲介を進める国の議会が「圧倒的」に片方を支持するのでは具合が悪いとの判断からだった。
国際会議も閣僚レベルで開くなら、アラファト・パレスチナ自治政府議長の参加を封じるという意味では、シャロン・イスラエル首相の主張通りになる。だが、4者による共同提案なら、対米批判は薄まると踏んだとの見方が有力だ。
米国は現大統領の父であるブッシュ元大統領が在職中の91年、マドリードで、それまで対立してきたイスラエルとアラブ諸国の首脳らが紛争史上初めて一堂に会する「中東和平国際会議」開催に尽力し、これが93年のオスロ合意(パレスチナ暫定自治合意)に道を開いたとされる。
現政権がこの先例を意識し、手詰まりの打開策の一つに選んだ可能性も十分にある。だが、アラファト議長の参加にイスラエルが強硬に反対していることや衝突自体が依然、続いていることなどから、関係者の間にはまだ懐疑的な見方が根強い。
来週に予定されるシャロン首相とアブドラ・ヨルダン国王の訪米などを通じ、新たな中東和平国際会議の輪郭が次第に明らかになれば、各当事者の賛否の動向が大きな焦点として浮上してくるだろう。
[毎日新聞5月3日] ( 2002-05-03-20:54 )