ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ジェニンの難民キャンプでの虐殺疑惑を調べる国連の現地調査団(団長・アハティサーリ元フィンランド大統領)について、イスラエル政府は28日の閣議で、調査対象とする軍人の選定をイスラエルが行うこと、証言内容を公表しないことの2条件を国連が認めない限り、受け入れないことを決めた。首相府報道官は朝日新聞に対し、国連との協議は続けると述べた。
イスラエルはジェニンでのパレスチナ武装勢力の掃討作戦で民間人が巻き込まれたことは認めており、そこに焦点があたることで、証言した指揮官や兵士が戦争犯罪で訴追されることをおそれていると見られる。
ジュネーブで待機中の調査団は、閣議決定を受けて同日夕にもイスラエル入りの予定だったが、出発を遅らせることを決めた。イスラエルはこれまでに2度、受け入れを延期しており、国連側の不信感はさらに強まりそうだ。
イスラエル軍放送によると、閣議では、証言者の氏名を明かさないことや、証言を犯罪法廷などほかの目的に使用しないことなどイスラエル側の要求について、国連側が基本的に同意したことが報告された。
しかし、モファズ参謀長らは「軍人のだれが証言するかはイスラエル側が決めるべきだ」などとして、国連が条件をのむまでの受け入れ拒否を主張。シャロン首相は国連との協議のため24時間の受け入れ延期を提案したが、多くの閣僚が参謀長に同調した。
調査団をめぐっては、軍事専門家が含まれていないことや、調査団の権限が不明確であるなどとしてイスラエル政府が延期を要求。国連が譲歩したうえで、27日に派遣すると発表した。しかし、イスラエル側が、受け入れ決定に必要な閣議が安息日明けの28日でなければ開けないとしたため再度日程を延ばしていた。
ジェニン難民キャンプでの大規模な軍事行動をめぐっては、パレスチナ側が女性や子どもを含む500人が死亡した「虐殺」だと主張。イスラエル側は、死者は多くて80人で大半が武装テロリストだと反論している。(01:06)