70年代に起きた南米の軍事政権による反対勢力弾圧と米国のかかわりを明らかにするため、キッシンジャー元米国務長官から聴取するよう求めたスペインとフランスの裁判官の要請が22日、英政府により却下された。チリのピノチェト元大統領が英国で逮捕されて以来、欧州では冷戦時代の政治犯罪を追及する流れが続いている。米国の責任を問う動きもあり、ニクソン時代に権勢を振るった元長官には頭痛の種になりそうだ。
キッシンジャー氏を証人として呼び出すよう求めたのは、スペイン全国管区裁判所のガルソン予審判事ら。同判事は国際刑事警察機構を通じてピノチェト氏の逮捕状を出し、98年に英当局による拘束を実現させた。キッシンジャー氏は今週、経済団体の会合で講演するため、ロンドン入りする予定だ。
チリ、アルゼンチン、ブラジルやパラグアイの軍政指導者は70年代を中心に、協力して反体制派を抑圧、多数の行方不明者を出した。ガルソン判事らはこの「コンドル作戦」を捜査する過程で、キッシンジャー氏から証言を求める必要が生じたと説明している。当時の公文書などから、ニクソン、フォード政権が弾圧を知りつつ、ピノチェト氏らを支持した事実が明らかになっている。
また、英国の人権活動家が22日、60年代末から70年代にかけ、ベトナム、カンボジア、ラオス3国で戦争犯罪にかかわったとして、米外交の責任者だったキッシンジャー氏に対する逮捕状を交付するようロンドンの裁判所に求め、却下された。同氏の英国滞在中、市民団体が「米国の罪」を問う街頭行動を予定している。(23:42)