(回答先: パレスチナ問題へのサウジとエジプトの関与を求めよ(フォーリンアフェアーズ2002年4月11日) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 4 月 19 日 23:15:28)
パレスチナ問題について認識すべき不変の真実
Unchangeable Middle Eastern Verities
ヘンリー・シーグマン
米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー
1. イスラエルが一九六七年に起きた第三次中東戦争以前の国境線まで完全撤退しない限り、イスラエル・パレスチナ紛争は終わらない。イスラエルの安全保障上の懸念を考慮し、国境を見直すとしても、それが一方的ではなく、パレスチナが同意するものでなければならない。
2. パレスチナ側が、難民の「帰還権」に執着している限り、パレスチナ国家の樹立はありえない。一九四七年に国連で採択されたパレスチナ分割決議は二つの国家の建設を認めているが、それは一つのユダヤ国家と一つのアラブ国家である。パレスチナ難民の帰還を認めると、結果として二つのアラブ国家が誕生することになる。二つのアラブ国家の建設には正統性がない。
3. パレスチナ自治政府のヤセル・アラファト議長にはテロリズムをやめさせる力はない。ハマスやイスラム教徒ジハード団だけでなく、アラファト自身が率いるファタハのパレスチナ武装グループもアラファトの停戦命令を無視するだろう。アラファトが治安維持部隊にハマスやジハード団、ファタハ関連組織であるタンジームの解体を命じない限り、テロリズムが終わることはない。
4. 一方で、パレスチナ国家が速やかに建設される確実な保証がない限り、アラファトは同胞を取り締まることはあり得ない。そのような保証もなく同胞を弾圧すれば、パレスチナは泥沼の内戦状態に陥り、アラファト自身の命も狙われる。パレスチナ人の穏健派といえども、イスラエルの占領を終わらせる明確な指針もなくパレスチナ人に流血を強いること賛成するはずはない。
5. 罪のない民衆を狙うテロリストの攻撃はいかなる価値観から見ても正当化できない。パレスチナを取り巻く状況がどんなに悲惨でも、テロの目的がどんなに崇高でも、テロを正当化することは出来ない。また、三五〇万人の自由と民族自決の原則を踏みにじり、二世代にわたってパレスチナ人をテロしか道がないと信じ込ませている軍事的占領も絶対悪である。外部勢力による支配から逃れようとあがき、侵すことの出来ない権利を主張することは本能的なものであり、否定することは出来ない。実際、それは人間性の証であり、個人と集団の尊厳の証でもある。人間性と尊厳を否定し、子供たちから未来を奪うと、人々は、いかなる手段を使っても圧制者を苦しめ、抑圧をやめさせようとする。もちろん、テロリズムを肯定するつもりも、テロリズムが効果を挙げるというつもりもない。たが、人間は希望を持てず、絶望しかない状況に置かれると、テロリズムに訴えがちになることを認識する必要がある。
6. いかなる政府も、パレスチナ人がイスラエル市民に対して行っている卑劣なテロリズムを認めることはない。だが、テロに対してはより残酷な暴力をもって弾圧し、民衆が自由を求める方法を封じ込めるとすれば、それはテロリズムの火に油を注いでいるのと同じである。これは現実離れしている平和愛好家たちの机上の空論ではない。イスラエルの情報機関の調査が示す事実である。イスラエル軍が難民キャンプを攻撃した後、軍事情報機関は次のように報告している。「報復攻撃はテロリストの基盤に対して打撃を与えず、パレスチナ人の憎悪を煽るだけで、結局、さらにテロリストによる攻撃の危険にさらされることになる」(イディオト・アハロノト三月二五日付)。イスラエル情報機関は政府に対して、「政治的な解決策なしでは、停戦を実現させることはできない」と報告している。(ニューヨーク・タイムズ三月三一日付)。
7. イスラエルは、パレスチナが暴力路線を止め、キャンプデービッドで示されたイスラエルの提案を真剣に議論するために交渉の場に戻るように要求できる。しかし、イスラエルは、パレスチナ人が権利を放棄し、隔離された居住地区に住むように要求することはできない。
8. シャロンが明確にしたのは、イスラエルが一九六七年以前の国境まで撤退し、東エルサレムのアラブ区域をパレスチナ国家の首都とすることは、パレスチナ人の見果てぬ夢に過ぎないということだ。このような条件では、どのように試みても、ジニ中東和平担当米大統領特使やシャロン自身による停戦を目指した努力は無駄に終わる。
9. シャロン政権が、西岸地区とガザ地区での入植地に固執する限り、暴力路線が終わることはない。あまりに長期にわたってこのような事態が続けば、「パレスチナ人とアラブ世界の目的はイスラエルによる占領を終わらせることではなく、イスラエルを消滅させることだ」というイスラエル右翼勢力の主張を勢いづかせてしまう。
10. パレスチナ紛争に終止符を打てるのはアメリカだけである。しかし、アメリカがそうできるとすれば、イスラエルが一九六七年以前の国境まで撤退し、東エルサレムのアラブ区域をパレスチナ国家の首都とすることを明確に盛り込んだ和平案を支持した場合だけである。今までアメリカがそのような和平案を明確に支持しなかった理由の一つは、国内の親イスラエル勢力を政治的に離反させることを恐れたからである。しかし、アメリカ政府が何も行動を起こさず、現在の混乱が悲劇的な事態に陥った場合に、国内親イスラエル勢力がワシントンを賞賛することもありえないことを認識しておくべきである。●
■Henry Siegman 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー。