【エルサレム井上卓弥】
イスラエル軍の過激派掃討作戦に関連し、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムの聖誕教会でパレスチナ人武装集団ら約200人が半月以上にわたり立てこもっている問題で、ローマ・カトリック教会のサバ・エルサレム総大司教(69)は18日、エルサレム旧市街で毎日新聞と会見した。総大司教は「武装集団のガザ地区への移送か、外国亡命以外に解決策はない」と提言、イスラエル側に身柄の安全を保証するよう求めた。
サバ氏は、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世に任命されたパレスチナ人初のエルサレム総大司教で、キリスト教聖地が集中するイスラエル・パレスチナ全域で同法王庁(バチカン)の立場を代弁する。
会見でサバ氏は、立てこもり事件の解決策について「我々が望むのは、教会にいるパレスチナ人が殺されない保証を得ることだ」と述べ、武装集団の「ガザ移送か、第3国亡命」案を訴えた。
武装集団の外国亡命か投降を求めるイスラエル側は、パレスチナ自治区ガザへの移送を拒否しており、現段階での現実的な解決策としては外国亡命が有力とみられる。
打開策を求めたイスラエル、パレスチナ双方の初の交渉が18日開かれる見通しだったが、米中央情報局(CIA)関係者が仲介しようとしたことをめぐり、パレスチナ側が国連や欧州連合(EU)関係者を含めるよう要請、これをイスラエル側が拒否し、直前に流れたという。
亡命案についてはパレスチナ自治政府側が拒否しているが、サバ氏は「アラファト自治政府議長以外に決断できる人物はいない」と指摘した。サバ氏はまた、イスラエル軍が教会周辺に侵攻した今月2日、シャロン・イスラエル首相に面会を求め、拒絶されたことを明らかにし、「(占領からの)解放を求めるパレスチナ人に対し、イスラエルは暴力で応えた」と聖誕教会包囲などイスラエル軍の大規模な軍事侵攻を強く非難した。
教会内にいるベツレヘムの住民代表は18日、「交渉の仲介者は他にあり得ない」と法王のベツレヘム訪問を要請したが、サバ氏は「バチカンから公式な反応はない」と述べた。一方、サバ氏はパウエル米国務長官の仲介について「明らかに失敗だった。パレスチナと米国はシャロン(首相)に敗北した」と述べ、深い失望感を示した。