【エルサレム17日=久保健一】パレスチナ危機の調停努力を続けていたパウエル米国務長官は17日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマッラでアラファト自治政府議長と2度目の会談を行った後、エルサレムで記者会見し、いったん調停を中断し帰国することを明らかにした。
長官は、米政府高官による調停を当面続け、自らも再訪する意向を示したが、「現段階では停戦とは呼べない」と述べ、最大課題だったイスラエル軍のパレスチナ自治区侵攻停止とパレスチナ側によるテロ抑止を実現できなかったことを認めた。今月8日以来10日間に及ぶ中東・欧州歴訪で目に見える成果を生み出せず調停が不調に終わったことに失望感が広がっている。
長官は、調停の目標はイスラエル・パレスチナ相互の治安確保、政治プロセスの再始動、パレスチナ人への人道・経済援助の3点にあったと指摘。治安問題についてまず、アラファト議長がこれまでに発表したテロ非難声明は「いずれも不十分だった」と不満を表明、「テロ終結を決断し行動しなければならない」と、テロ抑止に取り組むよう改めて強く求めた。
一方、イスラエル軍の撤退については、シャロン首相から撤退日程を提示されたことを明らかにしたが、期限については「1週間程度で実現するだろう」と述べるにとどまった。
政治プロセス再開については、中東包括和平に向けた国際会議の開催構想に「多くの指導者が関心を示している」とし、帰国後、ブッシュ米大統領と具体策を協議する考えを示した。
長官は調停継続のため、バーンズ国務次官補を現地に残すほか、近くテネット米中央情報局(CIA)長官、ジニ米特使を派遣する意向を表明した。
長官は17日午後、カイロでエジプト、ヨルダン両外相と会談した後、帰国の途についた。