【ヨルダン川渓谷(イスラエル北部)森忠彦】
エルサレムから北に約150キロ。レバノン国境に近いヨルダン川渓谷のほとりに、鉄柵で囲われた小さな軍施設がある。
草原の斜面にはシュンギクとポピーが鮮やかな黄色と真紅の花を開き、背丈ほどもあるアザミが風にゆれていた。「立ち入り禁止」の看板以外には人影もなく、軍との関係はうかがえない。しかし、地元の人によると、ここは「テロリストたちの墓」だ。レバノンのシーア派民兵組織「ヒズボラ」による攻撃が激化した80年代後半以降、国内で命を落としたユダヤ教徒以外の兵士の遺体の一部の埋葬が続いているらしく、パレスチナ過激派の戦闘員や自爆テロの犯人たちもこの無縁墓地に眠っている可能性がある。草原の一部には、最近、人が踏み入った跡が残っていた。
16日はイスラエルの戦没者記念日。式典に出席したシャロン首相は、独立後のテロで命を落としたユダヤ人に弔意を示し「尊い血によって我々に自由が訪れることを願う」と語った。