【ジュネーブ大木俊治】
国連人権委員会(53カ国)は15日、昨年9月の米同時多発テロ後、世界的に反イスラム気運が広がっているとして、「宗教への中傷と闘う」決議案を採択した。「イスラム差別」を批判する内容だったことから、「特定の宗教を強調すべきではない」とする欧州諸国や日本など15カ国が反対し、スイスやインドなど8カ国が棄権したが、アラブ、イスラム諸国を中心に過半数の30カ国が賛成した。
決議は、米同時多発テロ後の「メディアによるイスラム的価値観への否定的な描写、アラブ人やイスラム教徒を標的にした差別的な法の施行」など、「テロと関連づけたイスラム教徒への中傷キャンペーンの強まり」に「深い懸念」を表明。各国に、すべての宗教への寛容とその価値観の尊重のための手段を講じるよう勧告している。また、国連人権高等弁務官に対し、この決議の履行状況を調査し、来年の人権委員会で報告することも求めている。
決議に拘束力はないものの、同日朝にはパレスチナ情勢をめぐるイスラエル非難決議が採択されるなど、今年の人権委員会では例年以上にアラブ・イスラム諸国の意向が強く反映されている。