パウエル米国務長官は15日、レバノンとシリアを急きょ相次いで訪問、両国首脳との会談で、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとイスラエル軍の交戦が続いていることに重大な懸念を表明、ヒズボラの攻撃を停止させるよう要請した。
長官は、ベイルートではラフード・レバノン大統領らと会談、ヒズボラの戦闘行為を停止させるよう要請した。長官は大統領との会談後、声明を発表し、「国境線で起きている事態が周辺地域の戦闘に拡大する恐れがある」と述べ、ヒズボラに影響力のあるシリアやレバノンなど周辺国に対して、停戦の即時実現に取り組むよう呼び掛けた。
レバノンのハムド外相は「イスラエルからの圧力に左右されることなく、客観的かつ現実的に事態を見てほしい」と記者団に語り、ブッシュ政権が中立的な中東政策を進めるよう求めた。
国務長官はレバノン訪問後、シリアに立ち寄り、アサド大統領と会談。イスラエル軍に対するヒズボラの戦闘を止めさせるようアサド大統領に要請した。
レバノンにはシリア軍3万人が駐留し、シリアの強い政治的な影響下にある。シリアは、レバノン南部で活動するヒズボラにも大きな影響力を持っているとみられている。
国務長官は12日にヘリコプターを使ってイスラエル北部のレバノン国境を視察。パレスチナでの衝突が他の中東地域へ波及することに重大な懸念を表明し、レバノン、シリアを急きょ訪問することを決めた。
今年3月末以降、レバノン南部の国境付近でヒズボラによるイスラエル側への越境攻撃が続いている。4月10日にはイスラエル軍が2000年5月にレバノン南部から撤退後、最大規模の衝突が起きた。(共同)